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47ライバル出現!?

フェリシエルがミイシャを抱いて、朝食のために食堂へ下りていくと出仕前の兄がいた。


「フェリシエル、喜べ! 厩にセイカイテイオーが来てるぞ」

「まあ、それは本当ですの」


「今朝飼い主が挨拶に来て、ここが気に入っているのでしばらく預かってもらえないかと言ってきたんだ」

「それは素晴らしいですわ!」


兄妹は揃って厩に走る。そこには凛々しい青毛の馬がいた。


「セイカイテイオー!」


フェリシエルが馬の首に抱きつくと馬は嬉しそうにブルルッと鼻を鳴らす。


「あら、お兄様、これは何かしら?」

「ん?どうしたのだ。フェリシエル?」


馬の背に乗る茶色のもふもふ。二本の耳がピンとたっている。


「これは、穴ウサギですわ。お兄様、穴ウサギがセイカイテイオーの背に乗っています!」 


フェリシエルがウサギを抱き上げる。もふもふの毛が気持ちいい。ミイシャが小首をかしげ「みゃあ」と鳴く。早くもウサギと遊びたがっているようだ。


「ん? アナウサギにしては毛足が長くないか? いったい、どこから入ってきたんだ」


シャルルが厩を見回す。ウサギが入り込めそうな穴はない。


「お兄様、そんなことどうでもいいではありませんか。この家に入ってきた時点でうちの子です!」


フェリシエルが断言する。


「まあ、そういうことになるよな」


シャルルがあっさりと納得した。


 それにしても、ウサギのもふもふの毛に顔をうめると前世の記憶が蘇る。あれは小学4年生の春、昼休みにウサギ小屋の掃除をした。中年男性教師が勝手に命名した、あのかわいいもふもふウサギはなんといったけ。


「ウサギン・ボルト! そうです。足が速いから、ウサギンです」

「ボルトか、カッコいい名だ」

「お兄様なぜラストネームで呼ぶのです? ここは親しみを込めてファーストネームのウサギンで」

「いやしかし、フェリシエル、ウサギンってなんだか呼ぶ方も恥ずかし……」


「お坊っちゃま、出発のお時間でございます」


 執事がシャルルの話を途中でぶった切る。


「テイラー、坊っちゃまはやめてよ」


 ぶつくさ言いながら、執事に促され兄が出ていった。


「ウサギン、よく来てくれたわね。大歓迎よ。それにしてもどこから入ってきたのかしら?」


ミイシャがウサギに興味を示し、先ほどからフェリシエルの足をとんとん叩くので下ろした。早速二匹がじゃれ始める。


(でんちゃんも仲良くできるかしら?)


フェリシエルはしゃがみ込んでウサギに話しかける。


「ウサギン、めちゃめちゃ可愛くてわんぱくでわがままなハムスターがときどき遊びにくるけどよろしくね」




 その日の夕方、王子人化verがやってきた。なんでもジークが逃げ出したから、ファンネル家の警備を強化するらしい。いくらもふもふでもあいつはお断りだとフェリシエルは思った。


 王子に挨拶がすむと、ミイシャと一緒に早速厩に引っ込んだ。馬丁と協力して、ウサギのベッドを作る事にした。家飼いにしようかと思ったのだが、どうしてもセイカイテイオーのそばをはなれない。彼らはセットのようだ。引き離すのもかわいそうなので厩で飼うことにした。


 試行錯誤の末、ウサギのベッドが完成した頃、王子が厩にやってきた。


「殿下、セイカイテイオーが帰ってきたんですよ!」


 フェリシエルの笑顔が輝く。


「それはよかったな」


 シャルルがそばにいるので王子はよそ行きの笑顔だ。腹黒さは鳴りを潜めている。


「それと、この子は新しい仲間です。ウサギン・ボルトです!」

「へえ、アンゴラウサギか」


 王子はフェリシエルの残念な名付けセンスをスルーした。気の毒なウサギだ。


「え? アナウサギではないのですか?」

「それはアンゴラだよ。毛足が長いだろう。厩で飼うつもり?」

「はい、この子、もともとセイカイテイオーの上に乗っていたのです。頭のよい子なのですが、セイカイテイオーのそばを離れなくて」


フェリシエルのその言葉に王子が固まる。

アルクが恩義を感じているからとファンネル家を守りに行ったのは知っている。そういえばアルフォンソの姿も見ない。

王子は馬の背にちょこんと乗るウサギの耳をつかんでぶらさげる。しげしげと見た。茶色のつぶらな瞳が王子を見つめる。


 アルフォンソか? まさかね。彼は大人だし、そんな非常識なことしないよね? 人の家の厩に侵入して住み着くとか犯罪だし、ばれたら外交問題だ。


 すると馬が怒って首を振り、それが王子の顎にヒットした。のけぞる王子。

「殿下、大丈夫ですか!」

 シャルルが慌て駆け寄る。

「こいつ、いつもは大人しいのにどうしたんだ」

「問題ない」


 繊細な美貌のわりに無駄に頑丈な王子はノーダメージで微笑んだ。彼はウサギを優しく抱き直す。油断した。二発目は食らわない。


(やはりこれ、アルフォンソか。よし、ここは気づかない振りをしよう。私は知らない。しかしこのウサギ手触りがやばい)



 その後、ウサギをひとしきり撫でた王子は満足したのか、城へ帰って行った。




 その夜、でんちゃんはファンネル家へ続く秘密の地下通路をひた走る。


「わはははっ! アンゴラウサギごときに負けてはおられんな!」


 アンゴラウサギにライバル意識をメラメラと燃やす王子であった。



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