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38ヒロイン~2~(2)

 

 ベネット家では、幾人か王宮使用人の弱みを握っている。ミランダに早速紹介した。茶会で薬を仕込む前に、ミランダが試しでうっかり薬を飲んでしまっても、いいけれどね。その時はほかの人間を使って別の手段を考えればいい。数を打てばどれか当たるでしょう。





 いつものように王宮へ行くと、王族に近しい者たちが、なぜか騒然としていた。

 何があったのか聞く。城の使用人達は口が堅く誰も教えてくれない。いくら王妃に可愛がられているといっても伯爵令嬢だとバカにされる。



 ミランダが上手くやったのだろうか。うちの息のかかった使用人に詳しく聞きたいが見当たらない。城内はバタバタとしていた。とりあえず王妃に面会を求める。

 待たされていらいらしているとやっと王妃の部屋へ通された。彼女が人払いをする。珍しい、いったい何の話があるのだろう。


「メリベル大変よ。リュカが毒をもられたわ。いま緘口令かんこうれいがしかれているの」

「は?」


 そんな馬鹿な。王子は試行錯誤して苦労しながら、攻略を進めてきたキャラなのに。逆ハーエンドが台無しじゃない。どうしてくれるのよ。ミランダがしくじったのか、それともメイドがしくじったのか? いえ、両方ね。メインヒーローの王子が死んだ。ゲームはどうなる? 逆ハーエンドはなさそうだ。悔しいが、これで隠しキャラは出てこない。誰エンドにしようか?リュカ以外で、得なのは……第二王子のエルウィンあたりか。



王妃は私にお茶も出さずに、なおも言い募る。


「みな私がリュカを憎んでいるのを知っている。疑いがかかるかもしれないわ。なんとかフェリシエルの仕業で落ち着いてくれないかしら」


 王妃が王子を煙たく思っているのは知っている。しかし憎んでいたとは思わなかった。この王妃は要注意だ。ゲームにはなかった事項。現実はこんなものか。

 しかし、意外にいい展開になっているかも。愛する王子を毒殺した罪で、フェリシエルが斬首される。冤罪で裁かれるとはなかなか面白い趣向。


 それにしてもミランダは使えない。王子の隣に寄り添いながら、あいつの処刑を見たかったのに。その件に関しては本当に腹が立つ。そのうえ楽しみにしていた断罪すらない。


 

 なんといってもフェリシエルは悪役令嬢だ。公開処刑だろうから、見に行くか。ランダムで変わる隠しキャラ、今回は誰だったのかな。顔の良さから言えば、シャルル? それともまだ見ぬ他国の王子。いずれにしても、うちの執事はありえない。



 そうだ、早く王宮のメイドを始末しないと。バクスター商会に引き渡せば、跡形もなく処分してくれるはずだ。あいつ本当に使えない。しかし、万が一、メイドがつかまったとしても、彼女の口から出るのはミランダの名前だけで、私にはつながらない。だが念には念を入れる必要がある。


 そういえば、これってエンドから巻き戻ってやり直せるのよね?ちやほやされるのは好きだけれど顔もスペックもメインヒーローの王子が一番。彼は絶対にはずせない。今回は残念。間抜けで愚かなミランダには、罰として、ぜひとも自滅してもらおう。



「まったく、リュカは油断も隙も無いわね。隠れるようにしてあの生意気な小娘と二人きりでお茶を飲むなんて」


「え?」


いまこの女、何を言った。私何か聞き間違えたか。


「フェリシエルを執務室に呼んで、いまは使われていない古い客間に連れ込んだのよ。いまいましい」


 嘘でしょ。なんで? 私のプライドはズタズタだった。王子の攻略に失敗していたの? いや、それはない。きっとフェリシエルが強引に王子の執務室に乗り込んだのだ。あれはそういう女。腹立たしい。役に立たないミランダと高慢で強欲なフェリシエル。両方いらない。


 こうなったらなるべくフェリシエルが残酷に処刑される方法を考えよう。あっさり首をはねられるだけだなんて納得がいかない。



 王妃にいとまを告げる。そこで信じられないものを目にした。王族居住区の回廊に王子がいる。生きていた。

そしてフェリシエルと仲睦まじく寄り添い、何か話している。


 あれは遅効性の毒、気付いたときには全身にまわっている。解毒剤はない。あの毒を口にして生きていられるわけがない。


 どういう事?



 


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