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37ヒロイン~2~(1)

 育ちの良い娘は馬鹿で扱いやすい。ちょっと嫉妬心を煽ってやればすぐに操れる。フェリシエルが社交に来ない間に噂は広め下地は作った。


 それにしてもジークには腹が立つ。あれだけ私に夢中だったのに、なぜフェリシエルに?いきなり彼の言動はゲームかられ始めた。きっかけは何?そういえば、父親と一個中隊を引きつれてライカンスロープ狩りに行ってから、彼は変わった。何かあったのだろうか。

 

 加えて王子の攻略がなかなか進まない。のらりくらりと躱されている。なぜか彼には私の前世の知識が通用しない。実の母とは早く死に別れ、今の王妃は自分の産んだ息子たちしか可愛いがらない。その上煙たがられている。愛に飢えていないわけがない。それなのに私の言葉に靡かないのはどうして?


 王子のキャラクターはゲームそのままで、温厚誠実な紳士。ダンスが得意で優しい。いつも穏やかな笑みをうかべているとびきりの美男子。ここまでは一緒だ。

 実際の王子は勤勉で仕事がすきだ。忙しくて恋愛をする暇もなさそう。その点、ゲームの方では勉強も仕事も遊びもほどほどにこなしていてバランスが良かった。まあ、誤差の範囲内だと思う。

  

 そして自制心の強い彼は攻略が一番難しい。しかし、攻略に成功すると温厚さは一変して深く激しい愛を注いでくれる。それこそ命まで差し出すほどに……。断罪までまだ間がある。失敗というわけではないはずだ。



 しかし、ジークの心が離れてしまった。このままでは逆ハーエンドの隠しキャラが私の前に現れない。とりあえずフェリシエルを早急に陥れなくてはならない。傲慢で陰湿なミランダを使おう。彼女がどう動くか楽しみだ。

 

 フェリシエルに裏切られたと思い込んだ彼女はいまやメリベルの言いなりだ。本人がそれに気付いていないのが愉快。そして今日はアストリア侯爵家でお茶会がある。メリベルはそれに呼ばれた。うまく懐に入り込めたようだ。


 もちろんゲームではミランダは敵役だからヒロインと仲良くなるという設定はないけれど、ゲームのシナリオは所詮現実を抜粋したものだし、問題はない。


「メリベル、よく来たわね」


この女は特権意識の塊だ。呼び捨ては腹が立つが仕方がない。


「まあ、ミランダ様、お疲れのようで。どうなさったのですか?何かご心労でもおありですか。よく眠れていますか?」


優しい言葉に飢えているはずだ。


「悔しくて眠れるわけがないじゃないの。私も見かけたの。王宮でジーク様と楽しそうに話しているのを。それに何なのよ。陛下から褒美まで貰って。あの程度誰にだって出来るわよ。たまたまそのチャンスが私にはなかっただけ」


延々とミランダの愚痴を聞いてやる。


「フェリシエル様は才色兼備な上に殿方に人気で羨ましいですわ。でも……最近、リュカ殿下のお茶会で、フェリシエル様がなんというか、王妃陛下をないがしろにする勢いで……。ジーク様と仲良くしながら、リュカ殿下に媚びるだなんて。お茶会の間もまるで私たちがいないかのように振舞いますの」


 相手の嫉妬を煽りつつフェリシエルを貶める。ミランダの顔が嫉妬と怒りで土気色に染まる。



「そういえば、不眠に効く良い薬があるのですけれどいかがですか?私もねむれない夜に使うのです」

「眠り薬?」


 ミランダは急に変わった話題にとまどったようだ。しかし、ここからが、正念場。


「ええ、無味無臭なので紅茶に入れて飲みますの」


 現物を取り出して見せる。小さなガラス瓶に入ったさらさらの白い粉。


「先日、ついうっかりお砂糖と間違えてお茶に入れてしまって、昼間から前後不覚になってしまい、思わぬ恥をかいてしまいましたわ。ふふふ」

 

 そんな間抜けはいないと思うが、嫉妬に目が曇ったミランダは疑う様子もない。


「前後不覚? ふーん、そうなの。間抜けな話ね。でも確かにそれ砂糖に似ているかも。すこし分けてくださらない? 私も最近眠れないのよ」


「ええ、お役に立てて嬉しいですわ」


もちろん、これはそのために準備した小瓶だ。


「それと、あなた、王宮にコネがあるとか……。そうね。お金に困っているメイドとか侍女とかしらない。ああ、変な勘ぐりは不要よ。ただ、貴族の勤めとして、困っている者に手を差し伸べるべきじゃない」


 かかった。やはりミランダは自分の手は汚さない。しかし、王宮の茶会を狙うとは大胆というか愚かというか。バレたとき自分が打ち首になると想像できないのだろうか? でも、おもしろそう。まあ、彼女はこれを眠り薬と信じているようだし。今度の茶会では念のために何も口にしないでおこう。



ヒロイン~1~ 一部修正入れました。

ヒロイン~2~長くなったので分割しました。今日の16時に投稿予定です。


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