第4指令 指揮官と情報
「それではハイル二等兵。今から訓練の時間です。従魔と一緒に今から従軍クエストをこなしてください」
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従軍クエスト
素材収集ランクE【ビギナー】
ウェアラビットの皮(0/10)
薬草(0/5)
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入隊1日目にして早くも従軍クエストを受けることになった。内容は結構簡単めな感じなのでこれなら早く終わりそうだ。
「貴方に出す依頼ですが今回はあくまでお試し的なものです。ですから後でもう1つ受けてもらいますよ。それとこれを渡しておきます」
シグラさんは俺にナイフと2種類の紙を渡す。どちらも丸められてアルミティア王国の国章が印字された封蝋で封がしてある。
「片方はワーチの図書館への紹介状です。私からの紹介ですので図書館を利用する異来人よりも1つ上の情報を手に入れることが出来ます。
もう片方は【敵察知】と【識別】の複合スキルスクロールです。それがないとモンスターの種類までは分かりませんからね。
そして最後が軍専用のアーミーナイフです。それがあれば一部施設に無料で入ることができます。ですが悪用しないように。それと装備品であると同時に身分証明書の代わりになるので無くさないようにしてください。破損等が生じた場合は言って貰えば換えますので。
ここからは自由行動を認めます。ただし、従軍クエストは必ずこなす事。それと私のオススメは図書館で情報を得てから従軍クエストを行うことです。情報は時に力よりも貴重なものですよ」
そう俺に言ってシグラさんは部屋を出て仕事に戻っていく。
俺は一旦預かってもらっていたシノブ達を引き連れて従魔ギルドに戻ってくる。従魔ギルドではテイムモンスターを街中で待機させておける従魔珠をシノブ達3人分用意してもらった。
図書館ではシノブはセーフとしてガルやイージスなどの獣やそこそこ大型のモンスターはテイム、サモン関わらず一緒に入れない。しかし預けておくわけにもいかないので従魔珠はテイマーにとって必須のアイテムだ。
従魔珠は初回登録時は無料で3つまで貰うことができ、その後は従魔ギルドのカウンターで一律300Sで入手できる。1Sが10円というのが公式設定なので1つ3000円。序盤では結構高額な代物だ。俺の場合は軍人故に序盤の装備関係諸々の費用は必要ない為、痛い出費ではあるものの後々響いてくるというわけではない。
「それじゃあ、しばらく従魔珠に入ってくれるか?」
従魔珠を見せながらシノブ達に問いかける。
「ガウッ!」
「......」ガシャッ
「......」プルプル
ガルとイージスは入ってくれたがシノブは入ってくれなかった。仕方なしにシノブは肩に乗せて移動する。図書館では静かにしてくれればいいしな。
道中は結構目立った。まず目を引くのがこの軍服。プレイヤーにはNPCと見分ける為にプレイヤーマーカーというものがあるので誰がプレイヤーかは一目で分かる。それに加えて肩に薄黒いスライムを乗せているので視線が物凄かった。
ワーチ領立図書館は辺境にある割にかなりしっかりした造りの建物だった。俺は受付に行って紹介状と身分証明書代わりのアーミーナイフを見せて中に入る。
ワーチ領立図書館では見ることのできる情報が身分や所属によって異なる。一般公開されているのは1階部分だけで、2階と地下1階は見ることのできないようになっている。見ることができるのは軍か教会に所属している人間だけ。それも所属によって異なり、軍所属は地下1階、協会所属は2階となっている。
俺は先ず、一般公開されている1階で情報を集めることにした。
大前提として必要になるのは薬草や毒草などの情報だ。【鑑定】はレベルが高くなければ上手く機能しない。薬草1つ見つけるのにかなりのレベル上げが必要になる。
だがここで俺は考えた。【鑑定】というスキルにおけるレベルとは何なのかと。このゲームはVRMMOであり、そこそこ現実と同じようなスキルを要求する事もある。それに沿って考えると現実におけるレベルの高い鑑定とは如何にその分野に対して知識を持つかという事になる。
その為、多少の時間を犠牲にしても知識を貯める事が必要だと思った。
図書館の冒険者用に作られたであろうコーナーから植物図鑑と鉱物図鑑の2つを引っこ抜く。それぞれ何巻もあり、読むのに苦労しそうだ。
目的の通り、先ずは植物図鑑から読み進めていく。
植物図鑑は大まかに分けて4つに分けられている。
1つ目は薬草などのポーションの材料となるもの。
2つ目は主に毒や麻痺毒と言った所謂口にしてはいけない系のもの。
3つ目は植物型モンスターから取れる植物素材の数々。こちらは的確な採取方法や保存法がしっかりと載っている。
4つ目はここ10年以内で発見されたり研究の進んだもの。こちらは情報が得られた分から次々追加しているため、情報も飛び飛びであり、先の3つについてしっかり読み込んでないと訳の分からないものになっている。
この図鑑を読み込むという作業はかなり地味な行為だが非常にタメになった。
先ず予想通り鑑定が強化された。これは鑑定のスキルに【植物鑑定】が追加された事からうかがえる。
次に新スキルの取得。【植物知識】という項目がスキル取得可能欄に追加された。必要なSPが1だったので初期にもらえる30SPから使って取った。
更に順番的にはスキル取得からの鑑定強化という事から、鑑定スキルの派生には知識スキルが非常に重要であることがうかがえる。
これは大きな発見だ。βテストでの情報には載ってなかった事から、この情報は秘匿されているかそもそも見つかってないのだろう。
同じようにして鉱物図鑑からも【鉱物知識】を得ることができた。【鉱物鑑定】も【鑑定】のスキルに追加されている。更に図鑑以外でも、神話に関係するであろう絵本を何冊か読み込んだ結果、【神話知識】をゲットできた。しかし【鑑定】スキルの方には追加はなかった。だがこれはもう確定と言っていいだろう。
図書館にある本からはどのような本であれ、知識系スキルが手に入る。
自分の考えの証明の為に取った【神話知識】は兎も角として、【鉱物知識】、【植物知識】の2つは確実に使える。これがあれば事前情報で言われていた【鑑定】レベルのレベル上げをせずにフィールドで薬草や魔力草を手に入れることができる。
シグラさんのアドバイスに従ってよかった。あとはモンスター図鑑を読みたい所だが、これはかなりの数があるので地下一階に移動する事にした。
NAME:ハイル
Lv.1
男
JOB:軍人/テイマー
HP:110
MP:100
STR:12
VIT:10
INT:12
MND:7
AGI:7
DEX:5
アタックスキル
【格闘術】
【水魔法】
【短剣術】
サポートスキル
【鑑定】
→【植物鑑定】new!!
→【鉱物鑑定】new!!
【識別】new!!
【応急手当】
【指示】
【植物知識】new!!
【鉱物知識】new!!
【神話知識】new!!
モーションスキル
【料理】
【解体】
【調合】
【敵察知】new!!