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ぼっち姫、地雷を踏む。

「だから、何かあればこっちから連絡入れるって……はい。だから急に通信してくるの辞めて下さいよ。いつも言ってるじゃないですか!」


 二日目の夜、俺が大変な事になった後、ナーリアが自ら見張りを志願したので、俺は馬車の中でゆっくり休む事が出来た。


 ライゴスはぬいぐるみだし、俺とめりにゃんはそんなに大きくないし、邪魔なのはデュクシくらいなのだが、デュクシときたら無駄に寝相がいいのだ。


 まるで棺にでも入っているかのようなポーズでピクリとも動かずに眠り続ける。


 コンパクトでとてもよろしい。先生的に高評価よ♪ ってなんだそりゃ。


 最近たまに自分の考えている事がよく分からなくなる事がある。

 普段なら絶対に考えないような事、考えないような発想が出てくる。


 俺が女になっていくというより他の女に俺が浸食されていく感覚。


 でも、記憶もきちんと共有していて、すべきこと、したい事が一貫している以上あれもちゃんと俺なのだ。


 要するに、俺が女に生まれていたらあんなのになっていた可能性が高い、と……。こわっ。


「もう、いい加減にしてください。姫に気付かれたらどうするんですか!?」


 さっきからうるせぇなぁ。

 馬車の外でナーリアがまた家族と通信しているようだが、今俺の事話してたのか?


 気付かれたらってどういう意味だよ。


「はい。はい。分かりましたから! ちゃんと連絡入れますって。分かりましたー! もう切りますからね! ……ふぅ」


「なんか俺の事話してたのか?」


「ひゃいっ!?」


 馬車の荷台から顔を出してナーリアに問いかけると、彼女は余程びっくりしたのかその場で飛び上がって妙な悲鳴をあげた。


「ひ、ひひ、姫? 随分お早いんですね?」


「んー。もともとそんなに長時間寝るタイプじゃないからな。それに誰かさんが外でうるせぇから起きちまったよ」


「申し訳ありません。相変わらず家族が定期的に連絡しろとうるさくて……」


 ふーん。別にそれは構わないんだけど、なぁ~んか怪しいんだよなぁ。


「家族に俺の事も話してるのか?」


「あ、はい! いつもお世話になっている姫の事は勿論話してあります♪ だからこんな早い時間に通信入れてこられたら姫を起こしてしまうのではないかと……」


 なるほどね。それで相手に怒っていたわけか。

 しかし、確かにこんな朝早くに通信してくるとは余程の暇人か、あるいは余程ナーリアの事が心配なのか。


 向こうから定期的に通信を入れてきているって事は心配故に、なのかもしれないな。


 俺は目が覚めてしまったのでそのまま馬車から出て、ナーリアの隣に座る。


「見張りなら俺がやるから馬車の中で寝てていいぞ」


「い、いえ! 今回はご迷惑をおかけしたお詫びですので私が!」


 まだ気にしてんのかこいつは。

 あれは見事だったって言ってるのになぁ。


「まぁそういうならいいけど。じゃあ暇つぶしに俺も見張りに付き合ってやろう」


「付きっ!? 私とお付き合いを」


「ちげーよぼけ」


「す、すいません。早とちりをしました……」


 何故か普段は頭の回る賢い女なのに、俺の事が絡むと急激な馬鹿になるのなんでなのだろうか。

 もともとナーリアは【セスティ】に憧れていたらしき事を初対面の時に言っていたが、その辺も関係あるのかねぇ。


 悪い気はしないのだが、俺のせいであまりにポンコツになられるのもちょっと困る。


 少しは俺に耐性を付けてもらわないとだよなぁ。


「まぁ気にするな。昨日は本当によくやったよ。デュクシもそうだが、お前はもっともっと強くなれる。俺が保証してやるよ」


 そう言って頭を撫でてやろうとしたのだが、座っているにも関わらず如何せん身長差がひどく、頭の側面をぽんぽんっとしてやる程度が限界だった。わざわざ立つのめんどいし。



「ひっ……姫ぇ……」


 また顔がぐにゃぐにゃになって目に涙があふれてくる。


「お前のそういう所をもう少しどうにかしてほしいんだけどなぁ。俺に耐性をつけろ耐性を」


「あっ、はい……でも、その、耐性を付ける為にはそれだけ姫にも協力して頂かないと……」


 わがままな奴だなぁと思ったが、確かに俺への耐性を付けるのに俺と距離を保ったままじゃ進展がないのも分らんではない。


「そうか。出来る範囲でなら協力してやろう。ほれ、どうすりゃいい?」


「あ、あぁぁぁあの! じゃあハグしてください!!」


 目が血走ってる。怖い。


「お前さ、俺が男なの忘れてねぇか?」


「どうでもいいです!!」


 ……やっぱり俺に慣れさせる計画は止めようかな……。


「一応俺は心は男なんでよ、それは流石に倫理的にやめておくわ。だから、そのかわりこのくらいならいつでもしてやるからそれで我慢しろ」


 面倒だが一度立ち上がり、ナーリアの後ろに回って頭をもう一度ちゃんと撫でてやった。


「……あり、がとうございます……」


 おや、もっと騒ぐかと思ったが意外と大人しいな。


 ってかこいつもしかして泣いてるのか?


「おいおい、ハグじゃなくなったからって泣く程の事かよ」


「違うんです。……嬉しくて。私、昔こうやって母親に撫でてもらうのが大好きでした」


「通信の相手はその母親……じゃ、ねぇな。……すまん。確か姉ちゃんだったか?」


 まずったな……ナーリアの両親は既に他界しているんだった。

 自分の軽率さを悔いるが、一度口に出してしまったものを回収できるような特殊スキルは持ってない。


 メディファスなら出来るだろうが、デュクシの時とは違って今回は完全に俺の不注意なのだから諦めよう。

 それにあれは軽々しく使っていいもんじゃない。


 ナーリアは俺の質問に一瞬、とても暗い顔をして続きを口にする。


「はい。いつも通信してくるのは姉です。母は……私が幼い頃に殺されてしまいました」


 ナーリアは顔を両掌で覆い、泣き崩れてしまう。



 あー、やばい。


 地雷踏んだ。


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