魔王様とガーゴゴイル攻防戦。
「「ガハハ! 貴様らの攻撃など俺達には通用せん!」」
「うっぜ」
ショコラが大分イライラしている。
俺にもなんとなくその理由は分かる気がするが……。
攻撃をしようとするとその部分の身体が欠けて剣が通り抜ける。……という事はだ。
「こういうのはどうなんだ?」
俺はガーゴゴイルに範囲が広めの雷魔法をぶち込んだ。
「「効かぬ効かぬ」」
俺の魔法が当たる直前、奴の身体が妙な変化を起こし、全体的にぬめっとした質感に変わる。
電気がその表面を滑るように駆け抜けてそのまま通り過ぎ、霧散した。
「はー、なるほどな。じゃあこいつは?」
今度は同じように全体を包み込むサイズの炎を繰り出す。
すると奴の体表面が凍り付いて行き、炎が直に身体に届かなくなる。
おそらく他の属性魔法を使ったところで同じことだろう。
「面倒な耐性だなぁ」
初めて遺跡のガーディアンと戦った時の事を思い出すぜ。
そこでふいに、ガチィィン! と妙な音がしたかと思うとガーゴゴイルの身体が吹き飛んだ。
どこからか岩石が飛んできたのだ。
おそらく他のサポートをしながら、めりにゃんが土系の魔法で攻撃したのだろうが……明らかに攻撃が直撃していた。
「「くそっ! どこから攻撃してきやがった!?」」
「あー、なるほどね。そういう事かー」
ショコラは本能で何かに気付いたらしい。
俺もなんとなくその耐性の対処法みたいなのは思いついた。
「ちょっと試してみよっと」
ショコラが懐から小さな黒い玉を出してガーゴゴイルに投げつける。
勿論本体には届かないが、ショコラ自身が空中でその玉にクナイを投げつけると、爆発を起こしあたりに煙幕が広がった。
「よいしょーっ!」
「「うわっあぶねぇっ!!」」
……俺とショコラの考えは一応正解らしいな。今の反応だけで分かる。
こいつは一通り攻撃を無効化できるが、それは自分が認識している攻撃に限る。
現に今ショコラが煙幕を張ってから切りかかるとガーゴゴイルは慌てて避けていた。
自動発動ならば気にせず受けていた筈だ。
そうと分かればこちらも動きようがある。
要するにこいつは見えてればすり抜ける。見えなければ当たる。そういう事だろう?
「とりゃぁっ!!」
転移で敵の背後に回り込み即座に切りつけるっ!
「……おにぃちゃん、何してるの……?」
『だーりん、誰にでも不得意な事はあるべさ』
『主、気を落とさないで下さい』
……慰めてくれるのが逆にとっても情けない。
俺はガーゴゴイルの後方三メートルくらいの場所に現れ剣を振り回していた。
ガーゴゴイルすら俺を変な目で見てくる。やめろぶっ殺すぞ!
最近俺いいところが全然ない気がする。
この前、リンシャオの時だって巨大魔導兵装倒したのはメアだったし……。
よし、こうなったら数うちゃ当たる作戦を決行しよう。
見えなきゃいいんだ。猛スピードで切りつけまくってれば目視が追い付かずにそのうちザクっと行くだろ!
「行くぜぇぇぇっ!!」
何も考えずにガーゴゴイルの目前まで突進し、切る!
切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る切る!!
「ぜぇ……ぜぇ……」
「「ふはははっ! 気が済んだかよっ!!」」
どれだけ高スピードで八つ裂きにしてもそれらを全てかわされてしまう。あの身体をすり抜けていく。
息を切らしていると脇腹を思いっきり蹴り飛ばされた。
別にぜんぜんちっともまったくほんとにこれっぽちも痛くは無いんだけど腹立つ!
「おにぃちゃん、交代ね」
そう言ってショコラが再び奴にクナイを投げつけた。
「「ふざけているのか? そんな物が俺に当たるわけ……いってえ!!」」
……あれっ? 今回は煙幕とかじゃなくて普通にクナイ投げてるのに思いっきりぶっ刺さってる。
ガーゴゴイルなんて余裕かましてたのに突然刺さって苦しみだしたけど何だったんだ?
「ていっ、ていていていていていっ!!」
「「いでっ、いでっ、いでででででっ!! なんなんだお前ぇぇぇぇぇっ!!」」
ショコラがどこから取り出したのかクナイを連投して、その統べてがガーゴゴイルにザクザク刺さっていく。
しかし、いくら攻撃が通ると言えどほとんどダメージは無いようで、ザクザク刺さってはすぐ修復されていく。
「「うっとうしいわ! 何がどうなってる!?」」
うん、まぁ、あれだけザクザク刺されてたらイライラするよな。
俺なりに今の現象を考えてみたが、恐らくショコラの認識阻害だろう。
ただ、以前は武器を石のように見せて油断させていたが、何かと誤解させるのではなく飛んで来るタイミングの認識をずらしたんじゃないかと。
それなら見えてる物が本当じゃなくて、何も無い時に急に刺さってくる訳だから、そりゃもうイライラマックスだわ。
俺でも怒ると思う。
でもこんなダメージが通らないような事をちまちまやってもなぁ。
修復能力を超えるダメージを与えないといけないっていうのに……。
俺はこの時少し誤解していた。
ショコラは嫌がらせでガーゴゴイルを怒らせる為にやってるのかと思ったんだが、ショコラの中でいろんな実験をしていてそれがはっきりした、という感じ。
チラリとショコラの顔を見たら完全に悪役の顔をしていた。
あまりに恐ろしい満面の笑みだったので、俺はそっと目を逸らして見なかった事にした。
ややこしい対策が必要になればなるほどセスティさんの脳みそが筋肉寄りなのが露呈していきますね(^_^;)
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