魔王様も驚く彼の真実。
「で、俺達を集めた理由はなんなんだ? 大事な話があるっぽい事言ってたけど」
「それなんだけど……私とクワッカーで例の玉っころを調べてたんだ」
例の玉っころというワードに俺以外の奴等はピンとこなかったようなので、アシュリーに代わって俺が簡単に説明した。
「古都の民のアジトでデュクシと会った時、あいつが別れ際ヒールニントに渡した玉があるんだ。それをアシュリーに解析してもらってたんだよ」
「だったらヒールニントも呼んで来た方がいいんじゃないの?」
メアが不思議そうにそんな事を言う。確かにこれには俺も賛成で、ヒールニントこそこの場に居るべきなのでは?
「……私は先に、軽く中身を見たんだけれど……あの子は見ない方がいいわよ多分」
「なるほどね。それで私がここに来たのを警戒したのね? 別に言うべきじゃないと思えば言わないわよ。それがあの子の為になるならね」
「……そう。それならいい」
アシュリーはあの玉から何かしらの情報を手に入れる事ができたようだが、それをヒールニントには見せたくなかったらしい。
ヒールニントの仲のいいメアを呼んでしまうと後で話してしまうんじゃないかと不安だったんだろうけど……。そんなにもまずい内容だったのか?
例えば他の女とデキてるとか。あの狐の子とかな。それはヒールニントにとってはきついだろうけど……そんな事を伝えないようにする為にここまで気を使うか?
おそらく違うんだろう。もっと、問題のある事が分かったに違いない。
アシュリーの声に不安になったのか、めりにゃんが俺の手をぎゅっと握った。
我が妻はとても可愛らしい。
「まぁ……どっちみちこれを見たら誰もあの子に真実を伝えようなんて気はおきなくなるわよ……」
そう言ってアシュリーはあの小さな玉を妙な機械にセットした。
クワッカーが彼女の助手のように動き、ラボの明かりを落とす。
「これはザラの協力で作ったんだが、この球体自体が情報記憶装置らしくてな……この装置でそれを読み取って外に映し出す事が出来るって訳だ」
半円型の妙な形をした機械の天辺だけが少し窪んでいて、そこに球体がはめ込まれている。
下から光が立ち上り、球体を通って真っ白な壁に映し出される仕組みらしい。
ザラをここに連れてきていたのがこんな形で役に立つとは思わなかった。
奴はクワッカーに引っ付いて離れず、クワッカーもなんだか嬉しそうなのでそれについては触れないでおこう。
「……これは、ヒールニント……?」
壁に映し出された映像の中にはヒールニントと、どこかで見た事があるような男二人。
「あいつらどこかで見た事がある気がするのである……」
ライゴスが俺と同じような感想を口にした。
どこかで会った事があっただろうか……?
驚くべき事にその映像にはちゃんと音声がついていた。
「これってもしかしてあの馬鹿の記憶……なんでしょうか?」
ナーリアの言うように、おそらくこれはデュクシの見てきた物。あいつの記憶……その認識で間違ってはいないだろう。
その中でデュクシは、ヒールニントを含め三人に対しかなりそっけなく対応していた。
この時点で俺達の知っているデュクシとはかけ離れている。
映像はダイジェストのように切り替わっていき、デュクシ達は各地を旅しながら魔族狩りをしていく。
途中ローゼリアで俺達とニアミスだったりした事もあったようだ。
メリーとシリルが見たと言っていた魔族を倒した男というのがデュクシだった。
俺達はその映像を無言で見続けた。
誰も言葉が出てこない。
デュクシの魔族に対する殺意、執着はまさに常軌を逸していた。
三人と共に旅をする中で次第にデュクシの心境にも変化が現れたのか態度が柔らかくなっていき、ヒールニントとの距離が縮まり出す。
そして、俺は初めて見るがリザードと呼ばれる種族との共闘などを経て更に二人の仲は進展していく。
この頃になると雰囲気が少し柔らかくなったせいか、見ているこちらにも発言する余裕が出て来た。
「私達は一体何を見せられてるのかしら……ヒールニントの恋愛事情については気になるけれど盗み見てるみたいで申し訳ないわね……」
まさに人間じみた事をメアが言い出したり、ライゴスやナーリアなどはデュクシの戦い方にひやひやしながらも、強くなったと感心していた。
そして、ロンザとコーべニアという二人から語られるヒールニントの過去。
……ちょっと待て。何か、何かがひっかかる。
俺はいつか、どこかで聖女という言葉を聞いた事がある……?
そうか、こいつらリャナの町でライゴスと一芝居打った時に出て来た奴等だ!
……でも違う。それよりもっと前、もっともっと昔に、ヒールニント……聖女……どこかで……。
「姫、この先に……あの馬鹿があんな事になってしまった理由があるのでしょうか……?」
「……かもな。ヒールニントも知らないみたいだからこっからが重要なんだろうぜ」
どこで聞いたのかもやもやしたが、今はこの先に何が起きたのかを見届けよう。
デュクシ達はナランから街道を外れ、高原を進む。
何やら楽しそうな会話が繰り広げられ、ヒールニントがデュクシの腕にしがみ付いた。
そして……。
その時が訪れる。
「……迷惑ですか?」
ここにきてやっと、デュクシの苦労を皆が知る事になります。
それを踏まえた上で次に遭遇した時、セスティはどんな反応をするんでしょう?(;´∀`)





