魔王様は相棒に期待してる。
「ふむふむ。つまり、この世界は昔あった世界のごく一部が切り取られた世界で、外ででっかい戦争があってその時作られた兵器が外の世界滅ぼしてここに隠れ住んだのが荒神、ここにいたエンシェントドラゴンと仲良くやってたけど神様がやってきてニポポンとかロンシャンに押し込まれて、気が付いたら人間がわらわら増えてたって流れ?」
「適当な割に意外と理解してるんだなお前……」
勿論細かい所は説明してないしショコラも聞く気がないだろうから割愛するとして、大体の所は把握してくれたようだ。
「でさ、アルプトラウムってのが今の神様……星降りの民の生き残りなわけだけど、お前はどうする?」
『無論、星降りの民を滅ぼすまでよ』
オロチは低く響く声で即答した。
「しかしその巨体ともなるといざって時まではここで待機してもらう感じになるかなぁ」
『なんだと? 我をまだここに押し込めておくつもりか? やっとあの剣の呪縛から解き放たれたというのに……』
「あー、そうだ忘れるところだった。結局この剣……だった物はどうしたもんかな」
『おい聞け』
「ちょっと待ってろよ。今それどころじゃねぇんだわ」
強い封印の力を持つ魔剣クサナギ……このままガラクタにしておくには勿体ないだろう。
すぐに吐き出させたからマリスも完全に力を食い尽くした訳じゃないと思うし……多分。
『主、我とその魔剣を接続し、能力を吸い出すというのはいかがでしょう?』
「おい待て、お前そんな事出来たのか?」
『同じアーティファクト同士ですから可能かもしれないという話です。出来るとは言っておりません』
提案はするけど出来るとは言ってない。
やっぱり安心して任せられないところがメディファスなんだよなぁ。
『主、それは試してダメだった時に言って下さい』
「はいはい。ほらよ……でもこのボロボロの塊みたいな物をどうする気だ?」
『とりあえず我と接触させて下さい』
俺は言われた通り、ぐにゃぐにゃの金属片みたいになってる魔剣にメディファスを押し付けた。
『ふむ……まだ機能のほとんどは失われておりませんね』
『なんだと? その剣はまだ我を封じる力があると言うのか?』
「いや、オロチを封じる程の力は残ってないんじゃないか?」
かなり適当な事を言った。
これを有効活用できるかどうかの瀬戸際で邪魔されたくないし、自分が封じられる可能性を残すのは嫌がるだろうから。
『しかし、なるほどそうかで見過ごせるような事では……』
『主、申し上げにくいのですが……この剣は特別な代物のようです。我とは造りが違いすぎる』
「あっそ。つまり無理って事だろ? そんな事だろうと思ったぜ」
『我の評価を不当に下げないで下さい』
「不当ではない」
オロチも少し安心したように『ふん』と鼻息を噴き出した。
ただ、俺にはこんな事もあろうかと最後の手段がある。
これもうまくいくかどうかは分からないし無理ならそれこそ諦めるしかない事だが……。
『待って下さい! 主!! それだけは! なにとぞそれだけはご容赦を!!』
俺の考えを読んだメディファスが騒ぎ出したけれどそれもこれもお前がサクっと仕事を完了できなかったからだぞ。仕方ないだろ。
『あ、主! 考え直して下さい! 我はもう二度とあんな……』
「マリス。この二つ混ぜちゃえ」
『ぎゃーっ!!』
メディファスも本当に人間味が出て来たように思う。
マリスに魔剣もろとも飲み込まれて悲鳴をあげるとは。
ごっきゅごっきゅばきべきごきゃり。
……ちょっと心配になって来た。
あと今皆には背を向けてるけど前半分だけ裸になってるのは秘密。誰も気付くなよ……?
「マリス? うまくいったか? 無理そうだったらそのままでいいから吐き出しとけよ?」
……がががごごごばぎばぎごぎゃぎゃぎゃ!!
「マリス!? おい、メディファスは無事なんだろうな? さすがにちょっと……」
ぺっ。
マリスがメディファスを吐き出し、がらんがらん、という音を立てて転がる。
きゅーっ♪ という機嫌のよさそうな声をあげながらマリスは服へと戻っていった。
「……おい、メディファス?」
『……』
「メディファス!! 無事か? 無事なら返事しろ!」
『……ひどい』
「なんだよ無事じゃねぇか……心配させやがって」
『心配してくれるのならばこんな酷い仕打ちをしないで頂きたい……』
「とにかく結果オーライならいいさ。よし、そんで次の話にいこう。オロチの問題だな」
『主……もう少し、その……』
俺はメディファスを無視してオロチに向き合う。
「その身体で外に出たら大混乱だろうが。小さくなれたりしないのか?」
『……我が言うのもなんだがな、もう少し自分の剣は大事にしてやれ』
オロチはメディファスの事が憐れになったらしく、そんな事を言い出した。
もしかしたら昔自分が生み出されて道具のように扱われた事などを思い出しているのかもしれない。
「大丈夫だよ。俺はこいつを信じてるし、俺の相棒がこんな簡単にへこたれる訳ないからな」
『主……まさかとは思うのですが……相棒、と言っておけば納得すると思っているのでは……?』
……おっとぉ? ますます人間味が出てきてめんどくさいぞ??
『泣いてよろしいか?』
悪かったって。でもこれからはより一層活躍してもらうからな。頼りにしてるぜ?
『主は……ずるいです』
ここまで人間らしくなって来たなら、確かにそろそろきちんと扱ってやらないとかもしれないな。
『やはり今までは適当だったのですね』
「勝手に心読むんじゃねぇよ。大事なのは過去じゃねぇ、未来だ!」
『……分かりました。それなら、期待以上の活躍により主を見返して差し上げましょう』
おう、期待してるぜ。
『あの……話、終わった?』
オロチが俺達のやり取りに待たされて少しげんなりしていた。





