隠者はあまり関わりたくない。
「あれは……難しいな。見た目からすると魔族な気もするが。そもそも魔物はほとんどその辺をうろつく事も無くなったしな」
「なるほどなぁ。で、あの銀色が魔族だとしたらアレが喋るのか……」
おいアレはどう思う?
『魔族……では無いね。かといって魔物かと言われると疑問が残る。あのような姿の魔物は少なくとも私は知らない』
そうなんだよなぁ、あれなんだろう?
「とりあえず近くまで行ってみようぜ。魔物だったら私達の事襲ってこないんだろう? 喋るか襲ってきたら魔族って事だよな?」
「あぁ。だいたいその認識であってるが……こんな所にいる時点で、ハグレの魔物か魔族だろう」
そのどちらでもない可能性も捨てきれないが……。
それに、あの化け物はただ直立したままで動く気配がない。
あれはもしかすると……。
「おっ、こっちに気付いたみだいだ。ってかなんだあれ! 身体がぐにゃぐにゃしてやがる」
にゃんこの言う通り、敵さんはこっちに気付いて駆けだしたけれど、向かってくる最中に身体がぐにゃぐにゃとよく分からない形に変わっていく。
「言っておくが俺は……」
「良いよ、ちゃんと見てなって!」
そう言ってにゃんこも背中の大剣を引き抜き迎え撃つ。
「遅い遅い遅いぃぃぃ!!」
身体に見合わぬ大剣を振り回しているというのににゃんこはなかなかのスピードで駆け、敵の身体を一刀両断した。
「なんだこいつ全然手ごたえねぇな……」
いや、恐らくそれじゃ倒せない。
敵はぶじゅぶじゅと音を立てて元の身体に戻っていく。
「修復だと!? 畜生、だったら細切れにしてやんよ!」
「シンニュウシャ……ハイジョ」
にゃんこは強い。
現に敵に何もさせず、一方的に切りつけては八つ裂きにしていく。
しかし、若干……いや、かなり頭の方が残念のようだ。
「くそくそくそぉっ! なんなんだこいついくら攻撃したってすぐ元通りになりやがる!」
元通り、とは言うものの、最初の人型とはまるで違う形状に変わっていた。
四本足の獣になったり、ゴーレムのような形になったり……相手は相手でにゃんこに対してどのような形状が一番適しているのかを探っているようだった。
意思がある……とはちょっと違うな。
ただひたすら命令に従い学習し、最適解を求めていくだけの自動人形。
そんな感じだろうか。
「おいにゃんこ、お前魔法は使えないのか?」
「くっ、このぉっ!! 私がっ! 魔法使えるようにっ! 見えるっていうのかよっ!!」
……はぁ。聞くだけ無駄だったかな。
これじゃ俺が何もせず見ていたとして、いつか体力が尽きてこいつに殺されるぞ。
『ふむ……彼女には何かがあると思ったのだが……それとも』
隠している、か……あるいは自覚がないか、そのどちらかかもしれないな。
「くっそーっ! こんな奴に手こずってる場合じゃないっていうのに……」
そういえば目的地はここじゃないんだった。
冒険者や素材を取りに来た奴等が道中でこいつにやられたって可能性もあるけれど、ゴルダイの丘に違う奴がいるって事もあるからな。
それに、俺の勘が正しければこいつだけって事はないと思うんだが。
「仕方ない……アレをやるかっ!」
『おや、彼女が何かするらしいぞ』
彼女の持つ大剣の束のあたりにはめ込まれている小さな球体が発光し、剣の形が変わっていく。
変形する剣……? そんなもの見た事がないし、いったいどうやって作られたものなんだ?
「よーしよしよしっ! 今日はなかなかご機嫌じゃないか!」
剣の刀身の部分がバカリと頂点から割れ、中からギザギザした別の刀身が現れる。
そして、それが高速で回転し始めた。
ギュィィィィィン!!
けたたましい騒音をまき散らしながら、細かい刃が高速回転し、その周りには魔力反応がある。
『あれは……ふむ。なるほど。なかなか考えた物だね』
俺の記憶の中にもあった。あの剣の動力は間違いなくはめ込まれている球体……あれはアーティファクトの出来損ないだ。
『いやいや。出来損ないと言っても明確なこれ、という使用法がある訳ではないからそういう位置づけなだけで、ここまで見事に利用するのであれば立派なアーティファクトと言えよう』
回りくどい説明ありがとうよ。
あの球体は、その中に各属性の魔力を込められているだけの物体でしかない。
それを動力源にしてあんなものを作り上げるだけの技術を持った人間がいるのか?
『しかもあれはそれだけではないよ。その時に応じて各種魔法の力を纏わせる事が出来るようになっている』
へぇ……それで本人が魔法使えないのを補っているっていうのか?
『おそらくそうだろうね。なかなか理に適った武器だよ。実に面白い』
「おりゃおりゃおりゃおりゃぁぁぁっ!!」
にゃんこが今回選んだのは雷系魔法のようだ。
高速回転する刃にジャギジャギと光り輝く来光が付与され、敵を切り刻む。
先程までとは違い、細かい刃でガリガリと削られた傷口はその場で雷により爆散。
再び修復される事は無かった。
雷に弱い、というよりは魔法攻撃に弱かったのかもしれないな。
『外皮はきっちりと対魔法防壁を施されているよ。あの刃で切られた事で普通の剣で切られたのとは違い破損個所が複雑になっているだろう? そこに魔法で一気に内側から……結果的にその合わせ技が打ち勝ったという所だろうね』
いちいち理屈くさいんだよ。
でも……にゃんこが妙な自信に溢れていたのはこいつがあるからだったのか。
「ひひっ! くひひひっ!! 死ね死ね死ねぇぇぇっ!!」
『おい、そろそろ止めた方がよいのではないか?』
「……出来れば関わりたくないんだが」
「ひひひっ!! くたばれっ! 死ねぇぇっ!! ひゃあっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
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