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【300万PV感謝記念SS追加!】ぼっち姫は目立ちたくない! ~心まで女になる前に俺の体を取り戻す!!~【完結済】  作者: monaka
第八章:悪という存在。

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迷いと乙女。

 

「……おい、頼むもう一回言ってくれ。俺の聞き間違いかもしれん」


「だから私にも好きな人が出来たのよ」


 魔王メアが誰かを好きになった……だと?

 何の冗談だ?

 いや、ちょっと待て。それは有る意味朗報なのか?

 人間とくっついちまえばこいつも再び人間の敵になろうとは思わない……か。


「……そ、そうか。で? その相手は誰なんだ?」


「あなた……」


 えっ。


「の、お母さんよ」


「あーびっくりした。一瞬俺の事だと思って心臓が止まるかとおもっ……えぇぇぇぇぇっ!?」


「何ようるさいわね」


「なんで俺の母親がそこで出てくるんだよ! お前そういう、ナーリアやショコラと同じ人種だったのか!?」


 まさか魔王メアまでもがそっちの道に落ちてしまうとは恐ろしい。

 いやそれよりも相手が俺の母親ってどういう事だよ!!


「馬鹿なの……? 貴女のお母さん、キャンディママはね……こんな私を自分の子供だって言ってくれたの」


 ……ん? あ、あぁ好きってそういう好き?

 いや分ってたよさすがにそりゃねぇってさ。

 うんうん分ってた分ってた。


「なに一人で頷いてるの? 気持ち悪い。……勿論ね、私は結局プリンじゃなかった。だからキャンディママの子供ではなかったけれど、それでもあの時私をぎゅって抱きしめてくれたのよ。私は、あの人を悲しませたくない」


 マジかよ。

 何がどうなってうちの母親とそんな事になったのか知らねぇけど、うちの母はある意味世界を救ったかもしれねぇな。


「そっか。お前も人間に触れていろいろ思う所があったって事だな。じゃあ今後は共闘って事でいいのか?」


「勘違いしないで。勝手に私に触れるセクハラ親父だっていたんだから。あんたの父親とかね」


 ……ん?

 なんでうちの親父まで出てくるんだよ……。


 いや、待て。

 魔王だった時の記憶の中に見知った顔が居るじゃないか。


「……まさかあのおじさん、親父だったのか……言われてみりゃ確かにあれは親父だな……」


 という事は、俺は親父にセクハラを受けていたことになるのか。

 後で教えてがっかりさせてやろう。


「そういえばなんで親父だけこんなところに……」


「キャンディママは女癖悪いあの男を家から追い出したんだって。だけど借金が残って家を売って、今はライデンで娼館の女将やってるわ」


「ちょっと待ってくれ。頭痛くなってきた……。どうしてお前がうちの事情をそんなに知ってるんだよ」


 俺はガキの頃に家を飛び出してそれっきりだったから両親が今どこで何してるかなんてまったく知らなかったし、変わらずあの家に住んでるんだろうと思っていた。


「私がプリンだったから、記憶を失っていたから。説明はこれで十分かしら?」


 ああ、自分の記憶を取り戻す為に家族を頼ったって事か。


「まぁ、キャンディママにもセクハラおやじにも偶然出会ったんだけれどね。とにかく、私は人間を好きになったわけじゃなくて、あくまでも好きになった人間が居るから、敵にはならないであげるわ。それだけよ」


「そうか。うん、それで充分だよ。それとな、なんていうかうちの親父がすまん」


 ちょっとお仕置きが必要かもしれない。

 城に帰ったら考えておこう。


「とりあえず一度俺達も城に帰ろう。これからみんなに説明しなきゃならん事が山ほどあるんだ。今から気が重いぜ」


 俺の仲間だった奴等はまだいい。

 だけどこの国の連中はそういう訳にもいかない。

 今までついてきた相手がただの人間だったと分かっただけじゃなく、人が変わっちまってるわけだからなぁ。


「それなんだけれど……その、私は……」


「まさか行かないなんて言わないだろうな?」


 メアは……ロザリアは、俯いて黙り込んでしまう。


 おいおい、本当にこれがあの魔王メアリー・ルーナだってのかよ。

 前に会った時はあんなに狂気じみた女だったのに。


 俺もこいつと一時的に同化し、こいつの闇を垣間見た。

 それにメアの怒りや怨み、この世界その物に復讐をするという強い執念がこの身体にも染みついている。

 この体内にある、俺が引き出しと呼んでいるアーティファクトにはそれらの記憶がびっしりと詰め込まれていて、下手に除けば簡単に闇に飲まれてしまいそうなくらいだ。


 それだけ深く強い感情を抱えていた奴が、ほんの一年にも満たない期間でこんなふうになっちまうとは……分からないものだ。


「でも……合わせる顔がないじゃない」


「お前はさ、確かに非道な事ばかりして生きてきたのかもしれないよ。だけどプリンとして生きてきた時間は嘘じゃないんだろ?」


「……うん」


「だったら胸を張れ。人は変われる。お前だって変われる……いや、俺から見たら十分変わってるよ」


 ロザリアはそれでも迷うように眉間に皺を寄せたり目を泳がせたりしていた。


「でも……プリンの私を知ってるのなんてカエルさんとサクラコさんくらいだし……」


「それしかいねぇなら逆に問題ないじゃないか」


「でもその二人からも、こいつなんか思ってたのと違うなって思われちゃうかもしれないじゃない」


 はぁ……なんだこいつ。

 乙女かよ。下らねぇ事で悩みやがって……。


「過去は消えない。だけどプリンだった間の事だって消えてないんだ。お前はお前らしく自分がどうありたいか考えてなりたい自分になりゃいいじゃねぇか。それを認めないやつもいるだろう。嫌がるやつもいるだろう。だとしても、それを否定する権利は誰にもねぇよ。……勿論、元の魔王のような生き方するって言うなら俺は権利も糞もなく否定するけどな」


「なにそれ。結局否定する時はするんじゃない」


「物事には限度ってもんがあんだよ。だけどな、俺が見て問題無い範囲なのにお前を否定するような奴がいたらぶん殴ってやるから安心しろ」


「……馬鹿じゃないの?」


 そう悪態をつく彼女は、ほんの少しだけど綺麗な笑顔を見せた。


 やりゃ出来るじゃねぇか。



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