魔王様と芸術的ギルガディなんとかさん。
「ギルガディアだぁっ!!」
驚くべき事に、でっかいドラゴンは頭だけになっても生きてた。
「この程度で俺は死なんぞ!」
ビカッとその目が光り、私に向かってビームみたいなのが飛んできた。
ちょっとぼけっとしてたからかわせず、おでこに直撃してしまう。
「いでっ!!」
「ぐはははっ!! 敵の親玉を打ち取ったとなればこの命をかけた価値が……って、え? いでっ?」
「いってぇなこんにゃろーっ!」
なんかじゅっとした! おでこの所じゅってなって軽く火傷した!
もう治ったし痛くないけどさっきはめっちゃ痛かったんだぞ許さん!
メラメラと怒りの炎に身を任せながら頭だけのぎるなんとかに近付く。
「ば、ばかな……しかし、俺様を甘く見たのが運の尽きよ!」
がぱっと大口を開けたそいつが、今度は炎のブレスを吐いた。
頭だけの癖にどうやってそんなものを吐き出しているんだろう。
疑問だったけど、そんな事より私くろこげ。
「が、がははっ……敵将、うちとったり!」
「けほっ」
「……はっ?」
「げほっげほっ! うえぇ……けむたい。服焦げたじゃんぜってーゆるさねぇからな!」
「ば、ばけも……」
私はギルなんとかの頭を抱えて、転がっている体の方まで行くと、切断面を押し当てて回復魔法を唱えた。
「……な、なんのつもりだ……? まさか俺に情けをかけようって言うんじゃ」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
思い切り、渾身の力を込めたボディーブロー。
どぱんっといい音を立ててギルガなんとかいう奴のはらわたが飛び散る。
「ごべぇっ! ……い、いったい、何……を」
もう一度回復魔法をかけつつ、修復しきれない部分はクリエイトで新たなパーツを作ってあげた。
「よしっ! だいたい元に戻ったかな? じゃあ……」
「お、おい! 話を聞けっ! お前は何がしたいんだぼべぁっ!!」
今度は魔力を足に込めて後ろ回し蹴り。
私のかかとは光り輝きながらギルガなんとかの鱗を切り裂き再び内臓をみちみちと押し潰す。
そして更に回復かけつつ失われた部分を補っていく。
「……た、たの、む……ご、ごろじ、で……」
「殺してっていう奴簡単に殺すほど優しくないんだわ」
「お、鬼……あぐまぁっ!!」
失礼しちゃうわね。
「私は鬼でも悪魔でもなく、ただの……魔王よ」
魔物の群れ達がギリギリの所まで迫ってくるまでの間、それを繰り返した。
「ゆるじて……ごべんなさい……生まれてきて、ごめんなざい……」
「え、やだ」
今度は趣向を変えて鱗を一枚一枚はがしてたんだけど、魔物達が迫ってきてるからもうあまり時間がないなぁ……。
「そうだ、後でまたストレス解消に使わせてもらうからさ、それまでここに居てよ」
「ま、まだ……つづく、の?」
「YESYESYESYESYESYES!!」
私はクリエイトでボロボロになったギルガディなんとかの身体を補修し、大きな木に変えた。
木からドラゴンの頭が生えてる感じ。
だけどそれだけだとレーザーとか炎とか危なそうなのに気付いて、頭も作り替えてやった。
ライゴスっぽいぬいぐるみに。
木から生えるぬいぐるみ……アートだ……。
「貴方……少々、本当に少々ではありますが、同情します」
ナーリアちゃんがなんとも形容しがたい表情でそう木になったドラゴンに告げると、ギルガディなんとかさんはボタンの瞳からだらだらと涙を流した。
お、それはちょっと可愛いかもしれない。
「さーて、準備運動も終わったし本番行こうか! ナーリアちゃんもちゃんと手伝ってよ?」
「あ……はい。私……本当に居る意味あるんでしょうか?」
「あるある! よろしくね!」
ナーリアちゃんはそうやってすぐにやさぐれるのが玉に瑕だなぁ。
もっと自分に自信もって明るく楽しくぶっころさなきゃ。
だって相手が殺しに来るんだから殺してやらなきゃ本気のぶつかり合いじゃないもんね。
「よーっし戦闘開始っ!」
私は魔物の群れの中に飛び込んでかたっぱしからぶん殴った。
土壌にダメージを与えないように立ち回る為にどうしたらいいのか全然アイディアが浮かばなかったから。
だけど、こいつら弱いくせに数はほんと多くって、殺しても殺しても減らない。
ナーリアちゃんも遠距離からかなりの数を倒してくれてるけど……。
あ、そうだ!
「ねぇナーリアちゃん」
「うわっ! 急に現れないで下さいびっくりしました」
目の前に転移したから驚かせてしまったみたいだ。こういうのは自重しないとだね。
「あのさ、私がナーリアちゃんの弓矢に魔法をかけるから、それを放ってもらえる? クリスタルツリーの弓だったら出来ると思うんだよね」
「よ、よく分かりませんが私に出来る事なら!」
そう言ってナーリアが矢を構える。
私はその矢に魔法を込めた。大事なのは貫通力。
爆発力は要らない。魔物達を突き抜けて地面を荒らしてしまうから。
とにかく貫通力と拡散力。
私にはこれしか思いつかなかった。
「おっけー! やっちゃって!」
「行きますっ!」
ナーリアちゃんが矢を放ち、それが遥か上空でぴかっ! と光る。
もともと込められている風の魔法に乗って、私が上乗せしておいた拡散魔法が発動する。
矢は本当に細かい木片まで分解され、それが全てとんでもない貫通力を持った破片として魔物の群れに降り注ぐ。
私ってば頭いいじゃん!





