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【300万PV感謝記念SS追加!】ぼっち姫は目立ちたくない! ~心まで女になる前に俺の体を取り戻す!!~【完結済】  作者: monaka
第七章:己の証明。

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絶望戦士は愛したい。


「ねぇねぇハーミット様♪」


「ん、どうした?」


「最近は勇者ハーミットって名前知らない人居ないくらいになったと思いませんか? 物凄いスピードで新しい勇者の誕生を祝う声が広まってますよ♪」


 あれから俺達は、王都の騎士団達がなかなか手が回らない小さな村や集落などを中心にあちこち回っては魔族を殺し続けてきた。


 俺にはそれしか無かった。

 なかったはず、なのだが……。


「昨日行った所もハーミット様の名前出したら、勇者様が来てくださったー! って大喜びでしたしね♪」


「あまりに感謝されすぎて若干心苦しいくらいだがな。俺は魔族を殺しに来ただけであいつらを守るために来たわけじゃないんだから」


「またまたそんな事言って……困ってる人いたら助けずにいられないのもう私達知ってるんですからね?」


 ほんとにやり辛い事この上ない。

 こいつらと一緒にいる時間が長くなればなるほど、自分の中で何かが変わっていく気がしてそれが妙に安堵する時もあれば、恐ろしい時もある。


 こいつらといつまでも一緒にいて、本当に俺はずっとブレずに生きていられるだろうか?


 悩む事も増えた。

 戦いの最中に迷う事も増えた。


 それでもなんとかなっているのはこいつらのおかげだったりもする。


 一長一短。難しい話だ。


 仲間が出来れば自分の心が弱くなる。

 仲間が出来れば強くもなれる。


 足枷になったり救いになったり、それはその時々で変化していくものだ。


 だから俺は否定し、拒否し、遠ざけて自分だけで戦ってるつもりできたのにこいつらときたらズケズケと人の心に無断で入り込もうとしてくる。


 特にこの女、ヒールニント。

 こいつは何を考えているのか分からないがどうやら俺の事を慕ってくれているらしい。


 勿論他の二人もそうなのだが、こいつの場合少し様子が違う。

 ただ力に対しての憧れとは違った何か別の感情が混ざっているようだった。


 それを俺は分かっているような、だけど気付きたくないような微妙なラインでかわし続けている訳で……。


 本来まっすぐ向き合ってやらない事は彼女に対する侮辱だろう。


 呆れられて見放されてもいい筈なのだ。


 それなのに一向に態度が改まる気配が無い。


 毎日毎日、ぐいぐいと俺の心を踏み荒らしていく。


 まるでもとからそういう物であったかのように整地されていく。


 こうやって自己分析の真似事なんかをしているのも変わっていく自分を誰かのせいにして責任逃れしているだけなのは分かっているのだが、それでも人のせいにでもしないと理解が追い付かない事だってあるのだ。


 俺は、いつの間にかこいつらを

 そしてこいつを。


 ヒールニントを自分の人生の一部として感じるようになってしまっていた。


 守る物が増えたと思えば聞こえはいいが、それは単純に失う訳にいかない物が増えてしまった事を意味する。


 これは由々しき事態だった。


 俺はもうあの時のような思いはしたくない。

 だから大切な物など増やしたくないのだ。

 増やしたくないのに、増えてしまうのだから人間とはなんとも愚かな生き物である。


 いや、人間が愚かな訳じゃない。

 愚かなのは俺だ。


 こういう事になるのが嫌ならば最初からこいつらを切り捨てて一人で生きれば良かった。


 多分俺だけの力では勝てない相手も多く、どこかでのたれ死んでいただろう。


 だけど俺にはそれがお似合いだった筈なのだ。



 一人で生きて、人知れず死んでいくのが俺の末路として相応しい筈だった。


 だけど俺は弱かった。

 力も、心も。


 だから何かを、支えを求めてしまった。


 それが仲間であり、パーティであり、ヒールニントだった。


 まったく救えない。


「また難しい顔してますねぇ~? そんな考え事ばかりしてると眉間の皺がとれなくなっちゃいますよ?」


 相変わらず屈んで俺の顔を下から覗き込んでくる。俺の心を覗き込んでくる。


 もう、全て委ねてしまおうか?

 そうすれば楽になれるのだろうか?


「ロンザとコーべニアは?」


「あの二人ならまだ買い出しから帰ってきてませんよ♪ 次の目的地に行くまでに少し時間がかかるから食料買ってこいって言ったのハーミット様じゃないですか♪」


 あぁ、それからまだ少ししか時間が経っていなかったようだ。


「そうだったな。今お前しかいないなら丁度いい。聞いておきたい事がある」


「えっ……私に、ですか?」


 そんな顔するな。顔を赤くしやがって何を期待してやがる。

 そして、それを見て喜んでる自分も馬鹿らしい。


「お前にとって俺はいったい何なんだ? どうしてそこまで構おうとする?」


「ハーミット様が、私にとって……なんなのか、ですか? そりゃ勿論勇者様ですよ♪」


 私の勇者様、ってやつか。そういえば前も言ってたな。


「勇者ってのはなんだ?」


「えー? もしかして禅問答です?」


「答えろよ」


 彼女は俺の言葉に少しだけ表情を硬くして、声のトーンを落とす。


「勇者とは人々の救いであり、希望の星です」


 ……人々の、ね。

 俺は何をがっかりしてるんだろうな。アホらしい。


「というのは建前です」


「……?」


「私は……ただ、ハーミット様が、その……す、す……」


「す?」


 心臓が破裂しそうなくらい音を立てている。気付かれてはいないだろうか。いっそ俺を今すぐ殺してくれ。こういうのには慣れてないんだよ。


「私はっ! ハーミット様の事が……す、」


「ハーミット様! 今日はいい肉が手に入りましたよ!!」


「……す、す、すっこんでろぉぉぉぉっ!!」


 物凄い速さで、綺麗に捻りの聞いた彼女の拳が、ロンザの顔面に吸い込まれていった。


 ああ、今ばかりは俺もヒールニントと同じ気分だよ。


 愚かな事だがな。

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