魔王様と不安の種。
「娘は!? 娘はどうなったんです!?」
「無事に終わったであるか?」
二人ともリナリーの事を凄く心配してるみたいだ。
私はその答えの代わりに、優しく微笑んだ。
「パパー♪ らいごす君♪」
「「リナリー!」」
「あのね、このおねーちゃんとあしゅりーちゃんがね、私の事治してくれたんだよ♪ すっごく身体が軽いの!」
「あぁ……リナリー。……リナリー!!」
パパさんは私の後ろから顔をだしたリナリーをきつく抱きしめた。
抱きしめて、大声で泣いた。
「リナリーは、本当に大丈夫なのであるか?」
「うん。正直聞いてたより悪い所沢山あったよ。ボロボロだった……でも、もう大丈夫だよ。完璧に健康な体にしてあげたからね♪」
「かたじけない……。感謝するのである!」
まぁ、これは約束だったしね。
「おい、次はあんたの解剖だからな」
アシュリーが恐ろしい事を言い出した。
せっかく感動の瞬間で良い雰囲気だったのに……。
それに、私の中にはいないってわかったのになんで??
「不思議か? 姫はあんたの身体にはいない。だけど記憶を失っている可能性が高いんだ。それはもしかしたらお前の中に忘れものがあるから……かもしれないだろう?」
私の中に、まだ姫って人の一部が残っているかもしれないって事?
それが原因で記憶が欠けている……そんな可能性本当にあるのかな?
いや、無いとはいえないんだけどさ。
もしそうなら私の中からそれを抽出して、あの人に渡す事で、本当の意味で姫って人が帰ってくる。
だから私の身体はやっぱり調査しなきゃいけないんだろう。
それも約束してた事だからいいんだけどさぁ……免除されたと思ってたから地味に凹む。
「あれ、らいごす君? もしかして……」
「うむ。我はもう行くのである。達者でな」
「……どうしても行かなきゃだめ? 一緒に居てほしいな」
「それは出来ぬ。我にもやらねばならぬ事があるのである」
「やだよ。一緒にいようよ!」
「これからリナリーは、その元気になった体でやりたい事を、探すのである」
その言葉に、ぐずぐずと泣いていたリナリーが、ライゴスさんを見つめた。
「やりたい……こと?」
「そうである。我にはやる事がある。だから、リナリーもやりたい事を見つけるのである」
「やりたい事……私に、出来るかな? やりたい事探しても、いいのかな?」
ライゴスさんはその小さな身体で必死にリナリーの身体を這い上がった。
肩の上までよじ登り、立ち上がって……その頭を撫でながらこう言うのだ。
「もちろんである。きっと何でもできる。今まで空想、妄想するだけだった事だろうと……今のリナリーなら、きっと出来るのである」
「……うん! 私、頑張るよ!」
別れ際、それでもリナリーは涙を止めるのが大変そうで、そしてパパさんも顔をぐしゃぐしゃにして感謝し続けた。
「これからもリナリーの事をパパ殿が守ってやるのであるぞ」
「勿論です……この度は、本当になんとお礼を言っていいか……でも本当にお代は要らないのですか? この時の為に溜めたお金が……」
「いらぬいらぬ! そんな物の為に動いた訳ではないのである金があるというのなら、それは二人の生活と、リナリーがやりたい事を見つけた時の為に取っておくのである」
ライゴスさんのその言葉にパパさんは再び深く頭を下げた。
「また……会えるよね?」
「勿論である。。何と言っても我はリナリーの……」
「友達なのであるからな」
そんな感動なシーンをぶち壊すかのように白いもふもふが襲来しライゴスさんを咥えて振り回す。
「ぬおぉぉぉっ!! わかったわかった! お主も我の友達なのである!」
ぽいっとシロという犬がライゴスさんを上空へと投げ、背中に着地させる。
「ほほう。これはグリフォンとは比べ物にならぬ乗りごごちであるな!」
「うふふ……シロとらいごす君とっても仲良しだね♪ また……絶対会いに来てね。 もし来てくれなかったら……私から会いに行っちゃうんだから」
「ふむ。それも楽しみではあるのであるが……そうであるな、定期的に顔を出す事にしよう。だから安心するのである」
そんなこんなで私達はやるべき事を一つ終えた。
「我のわがままを聞いてもらえて感謝するのである」
「まぁたまには人助けもいいってもんよ。面白い物も見れたしな」
「ライゴスさんと幼女のほのぼのストーリーはなかなか見ごたえがあったよ♪」
「ぐぬぬ……からかいおって……」
私達はそんな話をしながら二人に見送られ、リナリーの家を後にする。
目の前でさっと消えてしまうのもあまりに風情が無いので来た時と同じくらいの位置までは歩いた。
そして私はアレの話を。
「ところで、あの子の身体の中にこんなものが癒着してたんだけど……」
それは内臓に溶け込むように一体化していて、ひたすら毒素を吐き出す寄生虫だった。
「ん……おい、これは!?」
さすが大賢者様。
ちらっと見ただけでこれがなんなのかを見抜いた。
「どうやら……このまま王国へって訳にはいかなそうだな」





