妹的に褒められると照れる。
「ねぇおじさん。ここの魔物なんか変じゃない?」
「ええ、それは私も……少々感じておりました」
ナーリアも的確に魔物の脳天をずびずび矢で貫いて倒しまくってるし、おじさんは本当にすっごく強くて近寄ってくる魔物はすぐに細切れになっちゃう。
私も勿論既に十二体くらい倒してるんだけど、まだまだ沢山いるんだよなぁ。
数が多いのもそうなんだけど、ここの魔物めっちゃ弱い。
弱いし、もう一つおかしな事があって、いい加減ちょっと気分が悪くなってきた。
「これは……やはりそういう事なのでしょうね。ローゼリアで一体何がおきたというのでしょうか……?」
おじさんは私と同じ疑問を感じてるみたいだけど、その二刀を振るう手には一切の迷いが無い。
「ふれーっ♪ ふれーっ♪ がんばれーっ☆」
そしてメリーの気の抜けた応援が私の苛立ちを加速させる。
ほんとにあの子は何しにここにいるんだ……。
戦うか大人しくしてるかどっちかにしてほしい。
ここの魔物って数が多いだけで、全然強くないし、それに……みんなボロボロの服を着てる。
何も着てないのも沢山いるんだけど、結構な確率で服を着てる。
人型が多い。
そして、たまに鎧を着てるのとか混じってる。
「これさ、本当に魔物なの?」
「わかりかねますが……少なくとも、私の私見を申し上げるのならば……」
「アレクさん! ショコラ! なにかおかしいですよ!! あぁっ! そっち行きました気を付けて下さい!!」
ナーリアもおかしいと気付いたみたいだけどそんな事よりさぁっ!!
「ちょっと何やってんの!?」
急に私の頭目掛けてナーリアの弓矢が飛んできてめちゃくちゃ焦った。
アレクおじさんがそれを打ち落としてくれたから平気だったけど、完全に油断してた。
まさか身内から攻撃されるとは思わないじゃん!
「すいません! 私のスキルは百発九十中と言ってたまに変な方向に飛んでっちゃうんです!!」
「弓使いなんか辞めちまえ!!」
「ご、ごめんなさい!!」
つい感情的に怒鳴ってしまった。
そういうキャラじゃないんだけどなぁ。
てか、そんな事より大事な事だよ。
「やっぱりこの魔物達って……」
「ええ、元人間……でしょう……ね!」
アレクおじさんがまた二体バラバラにしながら疑問の答えを口にした。
やっぱりそうだよなぁ。
なんていうか、意思が無い。
本能で人間に襲い掛かってるって感じでもないんだよ。
ただ、呻きながら徘徊してるだけって感じ。
「やっぱりこれ人間なんですか!? 私、結構倒しちゃってるんですけど……」
ナーリアは分かりやすく顔を青くしながら急に動きが悪くなる。
気持ちはわかるけどさ……。
「ナーリアさん。今は悩むべき時ではありません。この者達が元人間だろうと、魔物だろうと……我々にこうして攻撃をしてくる以上降りかかる火の粉は払わなければ」
「そういう事。殺されるのが嫌なら殺すしかないよ」
「そうだそうだー♪ やれやれーっ♪」
「ちょっとお前は黙ってろ」
「ひーっ! マスターみたいな事言う人ですねこわいですーっ!」
うぜーっ!!
「とにかく、逃げるのは嫌だしやられる前にやるよ」
「了解致しました!」
「分かりました!」
「やれやれーっ!」
「……ふぅ。面倒だなぁ。あれこれ考えながら戦うのは苦手なんだよね」
三人で戦えばまず負けはしないし、気が付けば辺り一面魔物の死骸だらけになっていた。
「それにしてもこれだけの量どこにいたんでしょう?」
「おそらく人家の中に潜んでいたんでしょう。それにしても数が多いので、どこかこの近くに広い空間があるのかもしれません」
ナーリアとアレクおじさんはいろいろ考えてくれてる。
そういうのは二人に任せておくとして、私はちょっと気になった事を試す事にした。
ラージュの短剣を懐から取り出し、その刀身を見てみる。
そこには相変わらず私の姿が映っていたが、地面に倒れている鎧を着てる魔物の顔の前に持っていくと……。
「アレクおじさん、これちょっと見て」
「……? どうしましたか? ……これは……この短剣、いったい何なのです?」
「よくわかんない。神様が作った真実を映し出す短剣だってさ」
「その短剣についてはよく分かりませんが……それが本当だとすれば、これは……」
私の短剣には若い男の顔が映っていた。
これがこの魔物の本来の姿だったって事?
やっぱり元々は人間だったんだ。
「ショコラ? どうしましたか?」
ナーリアがこちらの様子に気付いて近寄ってきたけれど、私は見られる前に短剣を懐に戻した。
この人は多分気にしてしまうから。
元人間かも、じゃなくて元人間でした。ってなったらやっぱり後味悪いからね。
しかも、これって間違いなくローゼリアの姫だったロザリア? とかいう人が関わってる筈だし、だったら同じ顔してるメアが関係してる可能性が高い。
自分の友達がこんな事に関わってるとか知りたくないでしょ。
だから教えてあげない。
「おじさん。とりあえず黙ってて」
「……分かりました。やはり貴女は聡明な方だ」
やめてよ恥ずかしいな。





