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【300万PV感謝記念SS追加!】ぼっち姫は目立ちたくない! ~心まで女になる前に俺の体を取り戻す!!~【完結済】  作者: monaka
第五章:廃都ローゼリア。

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魔王様のせめてもの贖罪。


「……いや、あれは魔族ではないな。むしろ……魔物ですらない」


「どういう事? どっちでもないって……」


 せいちゃんが顎に手を当て、難しい顔をしながら呟く。


「あれは……人間だ」


 ……人間? 嘘でしょ??


「ちょっと待ってよ。アレのどこが人間なの? どう見たって……」


「ぐるるごぁぁぁぁぁっ!!」


「うわぁっ!」


 紫の肉塊が思ったよりも素早く突進してきたので慌ててかわす。

 これ、攻撃していいのかな……。


「どうするのじゃ!? 残念じゃが儂は今何も力が出せんのでお主らに任せるしかないのじゃ……」


「……」


 どうしよう。この人が人間っていうのは本当なのかな……?


「何を迷っている。大方何者かに身体を弄られて化け物になってしまったのだろう。こうなってしまってはどうする事もできん。殺すしかないと思うが?」


 ……分るよ。

 せいちゃんの言いたい事は分かる。

 きっとそれが正しい行動だし、楽にしてあげるべきなのだろうけれど……。


 何者かに身体を弄られて化け物になった?


 それは、それは本当は……。


 この人を私が化け物にしてしまったんじゃないのか?


 だとしたら私には殺せない。

 勿論私がやったかどうかは分からないけれど、この国がこんな事になってる理由がもし私ならば、元凶が私である可能性はかなり高い。


 仮定、仮定ばっかりだけど……その可能性がある以上私は……。


 この人がどんな人だったのかも知らないけど、私の勝手でこの人をこんな身体にしたのなら私の勝手で殺してしまう事なんて……。


「ふぅ……やれやれ。仕方のない奴だ。貴様それでも魔王か? 魔王ならば魔王らしく自らの行動には責任が伴い、かつ自らの決断を押し通すくらいの気概を見せるべきだろう」


 だとしても……。


 私の胸の奥がうずくんだ。

 この人は、何も悪い事をしていない。

 私が、この世界を恨んで……その犠牲者に……。


 記憶が戻った訳じゃない。

 だけど、この人がこうなったのが私のせいだという自覚が、確信が今の私にはあった。


 理屈じゃない。

 そう感じてしまったのだから仕方ないじゃないか。


「ごめんなさい。私はこの人を殺す事が出来ない。だけど……殺されてあげる事も出来ないの」


「しかし、あちらが襲ってきている以上このままという訳にもいかんじゃろ! どうするんじゃ!?」


 私は、突進してくるその人を両手を広げて受け止める。

 私に出来る事は少ない。


 この体を作り替えて人間にする事は出来るだろうか?

 それもただの身勝手だろうか?

 分からない。

 どうするのが正解なのか、何も分からないけれど……。


 せめて、会話が出来るようにするくらいなら……。


 この人はおそらく女性だろう。

 長いブロンドがとても美しく、髪には綺麗な髪留めが一つ。

 その髪の毛と髪留めはそのままで……。


 その身体を作り替えた。

 元の姿がどうだったのかは分からない。

 だけど、私にはなんとなく、こうだったんじゃないかというほのかな感触が残っている。


「……なんと! 身体の組織その物を変質させているのか?」


「そうやって自分の身体を改造したのかのう?」


 せいちゃんとヒルダさんが私の背後でそんな会話を繰り広げている。多分私は手に入れた男の身体が嫌で今の外見に自分で作り替えたんだろう。


 それと同じように……彼女も……。


 全身を作り替えるのはなかなかに大変な作業だったけど、なんとか人間らしく整える事ができた。

 それに、多分だけどこの人はこの外見であっているような気がする。


「……あ゛あ゛ぁ……」


「……どうかな? 話せる……?」


 自分の掌を見つめ、呆然としている彼女に、出来る限り優しく声をかける。


 だけど……。現実はそんなに優しくはなかった。


「ご……ろず……! お゛まえは……わだしが……ご……ろす!」


 新しい身体になったばかりでバランスが取れないのか、フラフラしながらも私にその手を振りかざす。


 バランスを崩してその場に倒れ、彼女の手が私に当たる事は無かった。


「……これで、何かが解決したとは思えないな」


 せいちゃんが痛い所を突いてくる。私もそれは分かってるよ。

 だって、彼女があんな姿になったのは私のせいだって、確定したような物だから。


「ごろずぅぅ!!」


「おそらく、身体は人として整っても破壊されてしまった脳は……治らぬのであろうな」


 ヒルダさんはとても悲しそうな目で彼女を、そして私を見つめた。


「ごめんなさい……。本当に、ごめんなさい」


 彼女をぎゅっと抱きしめる。

 何故だか、とても暖かい。懐かしい感覚が身体中を包み込んだ。


「貴女が誰だか私にはわかりません。……だけど、私のせいで貴女が苦しんだ事だけは分かります……謝っても無意味なのは分かってます。だけど……それでも、本当に……ごめんなさい」


「……うぅ……うぁぁ……ろ、ろざ……りぁ……」


 彼女は私の身体を振りほどき、フラフラとどこかへ歩いて行ってしまう。


「……止めなくていいのか?」


 せいちゃんはほんとヒルダちゃん以外に厳しいなぁ。


「止められるわけ……ないじゃんか」


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