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【300万PV感謝記念SS追加!】ぼっち姫は目立ちたくない! ~心まで女になる前に俺の体を取り戻す!!~【完結済】  作者: monaka
第四章:収束点。

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変態弓士は震えが止まらない。


「あ、貴方がステラを助けて下さったのですか!? ありがとう……ありがとうございます!」


 私は涙目になりながら立ち上がり、ステラに駆け寄って抱きしめた。


「わわっ、私は大丈夫ですよー。勝手な事をしてごめんなさい。でも、この人が助けてくれました」


 やはり、この男性がステラを助けてくれたようだ。

 この人がいなかったら今頃……。


 私は再びあの鋭い鈎爪がステラを引き裂く所を想像して胸が苦しくなる。


「どなたかは存じませんが本当にありがとうございます……!」


「気に、するな」


 たどたどしく男性はそれだけ呟くと、少し離れた所に居た女性を近くへ呼び寄せ、


「リルル。君もこの子と一緒に、避難していてくれ」


 そう囁き、リルルと呼ばれた女性を一度優しく抱きしめた。


「分かりましたわあなた。信じています。必ず生きて迎えに来てくださいね」


「任せろ」


 夫婦なのだろうか? 魔物の国に人間の夫婦が居るという事も少々驚いたが、そんな事よりもこの男性のあの力は一体?


 私はその瞬間を見逃してしまったが、おそらく一撃、とてつもない攻撃力で一撃のもとに打ち倒したのだろう。


「さぁ、貴女もこちらに。一緒に避難していましょう」


 リルルと呼ばれた少しぽっちゃりした女性はステラの手を取り、食堂の中へと入っていった。


 ドアを閉める直前、ステラが一度申し訳なさそうにお辞儀をしてから無言でこちらを見つめ、にっこりと笑った。


 その笑顔の為なら、私は頑張れる。


「早く、行かないと……彼が危ない」


 男性のその言葉に、テロアを一人で放置してきた事を思い出し慌ててそちらを見ると、ちょうど障壁を破られ吹き飛ばされているところだった。


 私達のすぐ近くまでごろごろと転がって、なんとか立ち上がる。


「テロアさん大丈夫ですか!? ステラは無事です。この方が助けてくれました!」


 ふらつくテロアの身体を支えながらステラの無事を伝えると、短く一言「良かった……」とだけ呟き、再び魔族をキッと睨む。


 だが、私達と魔族の間に、大きな背中が割って入った。


「ナーリアさん、この方は……?」


「分かりません。恐らくこの魔物の国に協力している人間の方なのでしょうが……」


 ちらりと男性がこちらを一瞥し、「任せておけ」と言い放つ。


「今度の相手はお前か。お前はそいつらよりは強いんだろうな? もっともっと激しい戦いをしようぜ」


「……よく喋る」


「なんだお前ビビッてるのか? 喋れなくなるくらいブルってんのか? 傑作だなぁおい」



「……もういいか?」


 彼は挑発を繰り返す魔族を気にする事もなく、ただ拳を前に、姿勢を少し低くして戦いの準備をする。


「……いい度胸じゃねぇか。俺の名前はゴルギャンディ。覚えとけ」


 そう言って魔族も構える。


「……俺の名前は覚えなくていい。どうせすぐ死ぬ」


「ひひっ、言ってくれるぜ。すぐ死ぬのはお前の方だから確かに覚える必要はねぇかもな!」



 ゴルギャンディが全身の力をこめ、ひねりを加えた拳を男に放つ。


 が、彼はその拳に正面から拳をぶつける。


「ぐおっ、てめぇ……やるじゃねぇか」


 魔族の拳はぐしゃりと潰れていた。


「引くなら見逃す。再び打つなら次は無い」


「……お前、強いな。いいぜ、真剣勝負の勝ち負けにはお互い恨みっこ無しだぜ!」


 ゴルギャンディは何故かとても楽しそうに口をカパッと大きく開き、笑った。


「ジービル」


「あん?」


「俺の名前。覚えておけ」


 そう言って彼も笑う。


 二人の間で何か、通じ合う物があったのか、一瞬見つめあいフッと笑ったあと、すぐ真剣な表情に変わる。


 私達は、この二人の緊迫した、それでいてお互いを認め合うような戦いに横やりを入れる事なんてできずに、ただその行く末を見守った。


 ゴルギャンディが少しだけ後ろに飛びのき、その場で三回程高速回転したかと思うと、ジービルに向かって飛び、遠心力を利用した素早い回し蹴りを繰り出す。


「ぐっ……!」


 ジービルはそれを腕でもろに受け止め、その足元は地面が抉れる程だった。


 彼が反撃しようとするタイミングでゴルギャンディが更に、今度は縦の回転で踵落としをジービルの頭へ振り下ろす。


 ジービルはそれを静かに見つめ、重心を落とし力を溜めて……踵落としをそのまま頭に受けた。


「なっ!?」


 ジービルの頭から血がだらりと垂れ、その一滴が地面に落ちた瞬間、限界まで溜め込んだ力が爆発し、ゴルギャンディに襲い掛かる。


 ゴルギャンディは体制を崩しながらも、腕をクロスしてそれを受ける……が、彼の一撃はそもそも受けてはいけない類の物だった。


 ゴルギャンディの右肩から胸の下あたりまでの肉が、受け止めた腕と共に吹き飛び、その身は地面に崩れ落ちる。


「ぐはぁっ……! ……はっ、ははは。なんだそりゃぁ……たまんねぇなぁ。ずっと……ずっと待った甲斐が、あった……ぜ」


「お前が足に武器を装備していたなら、やられていたのはこちらだっただろう」


「……ふふっ。生身でやるから、楽しい……んだろう、が……。いい、戦い、だ……った。待ってるからよ、地獄で……もう一回、やろう……ぜ」



 ゴルギャンディはそれを最後に、動かなくなった。


「悪いがまだ行く訳にはいかない……だけど、いつか、また」


 ジービルは……少し寂しそうに魔族の亡骸を見つめ、手を合わせ軽く礼をする。



 目の前で起きた事、そして彼の正体、実力……私はいろいろな意味で震えが止まらない。



 周りを見渡せば、残りの魔族は残り二匹にまで駆逐されていた。


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