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ぼっち姫、身バレする。


 その後は特に魔物に襲われる事なく無事にニーラクの村へ到着する事ができた。


 正直言えば、ここは村な訳で、つまり狭い。


 情報収集という意味で人員が必要な場所ではなかったのだがこいつらとの最初の旅という意味でこれほど初級者向けの目的地は無かった。


 それともう一つ理由はある。

 ここはリュミアと初めて会った場所で、あの時あいつはここにしばらく滞在していた。

 なら、逃げ場所として候補にあがるかもしれないのだ。


 その辺の理由も加味して、一度様子を見に来るべきだと判断した。


 ここの村人はとても社交的で良心的。

 普段外の世界と交流が無い割にいい奴らばかりで、ふらっと訪れた冒険者にもとてもよくしてくれた。


 あの時も丁寧に村を案内してくれたし、宿なんてない村だからと村長が家の一室を貸してくれたのだ。

 おかげでその時村長の家にやっかいになっていたリュミアと知り合う事が出来た訳だが……。


 どうも、様子がおかしい。


 村の入り口まで来ると、以前は子供の騒ぎ声が響き渡っていたのに随分と静かだ。

 門番が一人立っていて、こちらを訝しげに眺めている。


「旅のものだが、ちょっと聞きたい。以前ここに来た事があるんだがその時にくらべて随分静かだが…何かあったのか?」


「こんな辺鄙な所にわざわざ来るなんて……悪い事は言わない。帰った方がいい。この村はもうすぐ滅ぶ」


 どういう事だろうか。

 間違いなく何かがあったようだ。


「ちょっとそりゃないんじゃないすか?こっちはもうへとへとなんすよ……何か食べれる所とか休める所を……」


「悪いが、今村はそれどころじゃないんだ。女子供は全員大きな街まで避難している。ここに残っているのは……村と運命を共にしようとしている馬鹿と身動きの取れない老人ばかりさ」


 魔王軍が活発に活動している頃はこういう事がよくあった。

 まずは大きな街の近くにある村や小さな町を占領する。……占領という名の虐殺行為なのだが、そうやって拠点を作り準備を整え目的の大都市へ総攻撃をかける。


 しかし、最近は魔王軍も目立った活動をしていないし、王都を攻めるにはかなりの準備が必要だろう。そうなると……。


 魔物たちがここを拠点にする理由があるとしたら王都ではなく、さらにここから半日ほど歩いた場所にあるリャナの町か。


 あそこは王都とその他の都市への仲介点。物流の拠点とも言える。魔王軍が攻め込む価値はあるだろう。


 流通が途切れればそれぞれの都市は自給自足をせざるを得ない。そうなればいくら王都といえども緩やかに衰退していく。


「この村に魔物がきたのか?」


 俺の言葉に門番の男はとても嫌そうな顔をして、数日前の出来事を語った。


「数日前言葉を話す魔物がここに来たんだよ。そいつが、五日間間時間をやるからここを明け渡せと言う。もし次に来る時までにここに人が残っていれば容赦なく皆殺しにするからさっさと逃げろ。って言ってきたんだ」


 おかしいな。

 わざわざそんな警告をする意味があるだろうか?

 それほど知性のある魔物ならば幹部クラスかもしれないし、その場でここの村人くらい皆殺しにできただろう。

 それをしなかったのは何故だ?


「村長に会わせてもらえないだろうか?」

「今客が来てるが……まぁいいさ。もうどうなったって……」


 門番は死んだ目をして投げやりにそう言った。



「あの人は逃げないんでしょうか?」


 村へ入り、人気のない広場を抜け村長の家を目指しているとナーリアが先程の門番の事を聞いてきた。

 確かにあいつは身動きが取れないようには見えなかったな。


「おそらく身動きが取れない身内がいるか、この村と一緒に滅ぶ覚悟ができるくらい郷土愛に満ちてるんだろうぜ」


 適当な事を言いながら村長の家の前まできた。


 来客中と言っていたが、それがリュミアかもしれない。


 私は少し胸が高鳴っていた。

 こんなにすぐに見つかるなんて思ってもみなかったから、心の準備ができていない。


 心の準備ってなんだよしっかりしろ俺。

 これじゃまるで恋する乙女か何かみたいだ。


「姫ちゃん、なんか顔赤いっすけど具合悪いんすか? もしかして寝てないから……」


「ばっ、ばか!顔赤くなんてなってないもん! ……じゃ、なくてーっ!別に具合なんて悪くねぇよ。行くぞ!」


 俺は、もし中にリュミアが居た時に、まずどう声をかけるかとか、もし逃げようとしたらどう対処するかなんて事を考えながらドアを開けると……。


「おや、美しいお嬢さん。……もしかして旅人か冒険者ですか? 今村長に話を聞いていたのですがこの村は危ない。すぐに避難した方がいいでしょう」



 誰だてめぇ。


 俺の期待した人物はそこに居なかった。

 その代わりに現れたのは、背の高い白銀の鎧を纏った騎士だった。年は四十代だろうか。厳つい体格、四角い顔、ツンツンの短髪黒髪、髭。美しくない。


「あんたは? その鎧見る限り王都の騎士団員みたいだが」


 俺の言葉に一瞬眉間にシワを寄せた男は、しかしすぐに笑顔になって自己紹介を始めた。


「失礼。私は王国騎士団の第三部隊副隊長のテロアと申します。この村はもうすぐ魔物の集団に襲われるでしょう。今のうちに逃げた方がいい。特に貴女のような人は」


「あ? 人を見た目で判断するなって親に教わんなかったのか?」


「気を悪くしたなら申し訳ない。ですが、貴女のような立場の人に何かあってはこちらも責任問題等いろいろ発生してきてしまいますので、速やかに避難して頂きたい所存です」


 そこで男は目を細め、声をワントーン落として呟く。


「ローゼリアの姫」


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