ぼっち姫、社会科勉強する。
「ちなみに、だ。自慢じゃないがあたしは男が大嫌いで女が大好きだ」
「いきなり何を言ってるんだこの人」
「つまり、君が男ならばあたしは本能で拒絶反応が出るのさ。しかしそれは一切ないからおそらく君はちゃんと女だと思うよ」
どういう判断基準なんだ……。
「私にはそれがどれだけ優秀な判断能力なのか分からないけど、気休め程度には安心したよ」
「君はなんというか……意外と言うね」
「言う? 何を?」
「いや、いいさ。あたしはそういう正直な子は好きだよ。君についてはいろいろまだ分からない事が多いからね。働きながら情報を集めたらいい」
確かにそれは結果的にいい案だと思う。
万事屋って言ってたし、いろんな情報も集まってくるかもしれない。
それと住まいと仕事がついてくる。
私の名前が分かって、私の事を知ってるっぽい人の事もわかったけどその人達とどこに行けば会えるかわかんないしね。
「まぁ君がまず目指す場所は王都だろうね。アレクセイの野郎と知り合いなら騎士団にも知り合いがいるかもしれないし」
あれ、目的地決まっちゃった。だったらとりあえずそっち行った方が早いんじゃない?
「しかしここから王都へ行くには並大抵の方法じゃ無理だ。何せあちらからはこっちの大陸の事を認知すらされていない。……正確には認知はしているが存在しない事になってる」
ちょっと待って。ここどこなの?
王都って言ったらこの世界を統一したって言われてる世界の中心じゃないか。
……あれ、自然に考えてたけどなんでそんな事覚えてるんだろう。
てか王都の名前は出てこないや。
いろいろ考えてるとふっと記憶が蘇ったり、消えたりする。ちょっと安定しないなぁ。
やっぱり元々知ってる事や物の事を考えたりすると記憶が刺激されやすいってやつなのかな?
「えっと、存在しない事になってるってどういう事? ここから王都へはいけないの?」
「行けない事はないさ。それにそろそろ王都もこちらを正式に認めてくれる頃合いだと思うけどね」
ちょっと言ってる意味がわからない。
「不思議かい? 今の君にあれこれ言っても仕方ないかもしれないけどね。昔王都ディレクシアはあっちの大陸、ユーフォリアを統一した。魔物とも戦わなければいけないから皆で協力しようっていうご名目でね」
私はサクラコさんに導かれるまま人込みを進んでいく。
万事屋っていうのは随分端っこにあるんだなぁ。
「しかし、後になって今我々が居るここ、ニポポンと、ロンシャンが存在する事に気付く訳だ。ニポポンはその頃外交を一切していなかったし、ロンシャンはユーフォリア大陸と敵対的だったからディレクシアは取り込む事を諦めたのさ。そして、自分達に従わない連中が居たら大陸統一において支障が出る。ほら、協力してない所があるって知ったら他の連中もしり込みするかもしれないだろう?」
いろいろ説明してくれてるけどごめんさっぱりわかんないや。
どやって顔しながら気持ちよくしゃべってるから邪魔しちゃ悪いなぁ。
「でだ、王都的には不都合な存在だったんで地図上から消去しちまったって訳だ。東の果てには何もない。文明があったようだが既に滅んでいる。ってね」
「えー。それディレクシア最低じゃない?」
最後のとこだけならとても分かりやすかった。
要は邪魔だから無かった事にしたんだよね?
「まぁあちらさんにもいろいろ理由があるんだろうぜ。でもそれも大昔の話だよ。初代ディレクシア王のやった事だから。それに今はニポポンは外交に動き始めてる」
「ずっと外交してなかったのに? 今になって動き出したのはどうして?」
私が質問してしまったせいで尚更どや顔になってサクラコさんは語り出す。
「ニポポンも外交自体はすぐに解禁していたのさ。ただ、相手はロンシャンって国だけだけどな」
ロンシャン。何か聞き覚えのある名前。
「でもロンシャンが滅んじまったからさ、ニポポンだけでやっていくのは厳しいんだよ。そんで仕方ないからユーフォリア大陸、とにかくまずは王都ディレクシアとコンタクトを取ってるって状況だな」
なるほど。今私がいるのがニポポンっていう地図から消えた国で、唯一の外交相手だったロンシャンが滅びちゃって、王都と話をつけようとしてるって流れだね。
っていうかなんで滅んだし。
「ちなみにロンシャンが滅んだのには……プリン、あんたが関係してるらしいぜ」
やっぱ私悪い奴じゃん!!





