妹的にしばきたおす。
「ひ、怯むな! この人数で負けはあり得ん! かかれ! かかれーっ!!」
シャリィの号令で一斉に女の人たちが私に襲い掛かる。
でも、こういう集団の中って……私の得意分野なんだよね。
棍棒で殴り掛かって来た人の手首を極めながら捻り倒してぶん投げる。
それに周囲が驚いた隙に私は群れの中に溶け込んだ。
素早く人の合間をすり抜けながら通り過ぎる人達の身体に針を刺していく。
いつかおにいちゃんに使ったやつよりは大分弱いやつ。
少しだけ身体がマヒして動けなくなるくらいの毒だから大丈夫だろう。
後遺症が残ったらごめんね。
すぐにうめき声をあげて半数程度の女達が倒れていく。
残った人達を一人ずつ背後からの手刀で昏倒させたり、関節を外したりして行動不能に陥らせていく。
五分もしないうちに五十人くらい居た女の人たちは五人までに減っていた。
「な……何が、おこっているんだ……」
シャリィが後ずさりしながら呆然とそんな事を呟くのが聞こえた。
ふっふっふー。おそれおののけー。
「……まだ、やる?」
「くそ!! お前らはキャナル様を守れ! こいつは私がやる!」
残っていた四人はキャナルを取り囲んで守りを固めた。
別にキャナルさんには手を出さないってば。
……まだね。
「今度はおねーさんが相手? さっき水かけられた分サービスしてあげる」
「くっ……悪魔め……貴様などに後れを取る私では……えっ!?」
急に目の前から私が消えた事で取り乱したように辺りを見渡している。
局所認識阻害をかけて私を一瞬だけ見えなくする。
その一瞬があれば私は背後に回り込む事ができるし、その一瞬があれば十分だった。
背後から両足の関節を極めて地面に倒す。
呻いてるけど無視してそのまま同時に両腕の関節も決める。
「……どうする? これ以上やると、骨が折れるよ」
「ぐあぁぁぁっ! くそっ! くそっ! くそぉぉぉ……っ!! 私が、こんな小娘に……っ!」
「その小娘の方が強いんだから仕方ないよ」
「そこまで!」
キャナルがシャリィと私に向かって掌を向け、そう叫ぶ。
私はシャリィを拘束する手を解いた。足はまだだけど。
「キャナルさんああ言ってるけど負け認める? 認めたら足も解放する」
「……ひぐっ……わ……わがっだ……わだじの……まげだ」
……悪い事しちゃったかな……めちゃくちゃ泣いてる。
よっぽど悔しかったみたい……。
「なんか、ごめんね。やりすぎたかも」
「ひぐっ……えぐっ……」
手も足も解放したのにシャリィはうつ伏せに倒れたまま動かなかった。
「やめてよ……私、そういう態度取られると……」
た か ま る 。
うずうずしてきちゃうからやめてほしい。
おにいちゃんが怒るから普段は我慢してるっていうのに……。
……っていうかよく考えたらここ女性しか居ない。
パラダイスじゃない?
泣かせたい。
喚かせたい。
喘がせたい。
悶えさせたい。
いっそ今から一人ずつ虱潰しに……そうすれば私の心の渇きも少しは潤せるんじゃないかな。
「お見事です。……本当に、お強いのですね」
はぁ……はぁ……。
「どうされました? 聞いているのでしょうか?」
はぁ……はぁ……はぁ……。
「あの……そうでした。貴女、お名前は?」
はぁ……ハァ……はァ……はぁ……。
「どう、されたのですか……? もう敵意はありません。きちんと話をききましょう。それとも……今の戦いの中で怪我でも……? 皆も含めて手当をしますのでこちらにいらして下さい」
「……こちら? イって、いいの?」
「え? あ、ハイ。勿論で……きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! えっ!? ちょっとお待ちになって下さいいったい何をっ!? み、みんな早くうぁぁぁっ、……この、人……を、と、とめ……て……」
「はぁ……はぁ……残念、だけど……」
今私に組み伏せられて涙目で艶っぽい眼差しを向けてくるキャナルは、「嫌ぁ……っ」と一言だけ呟いた。
顔を真っ赤にさせて。
「残念だけど……みんな、おねんねしてるよ」
キャナルに飛び掛かった時に、護衛の四人もしばき倒した。
だけど、本当は意識のある連中だって居るし、そろそろ動けるようになる人だっている筈だ。
その人達が何故動かないのか?
私に恐れをなして?
それもあるとは思う。
でも、それだけじゃない。
みんな、みんなそうだよね? わかるよ。
わたし、わかってるよ。
今からここで、起ころうとしている事が、
気になって仕方ないんでしょう??
「ほら、みんなが見てるよ。叫んでも誰も助けてくれない。なんでか分かる? みんな、みんなキャナルの○●×が○◆◎▽で○▲×なところが○■▽●なんだよ? そんな皆にサービスしてあげないとね。わたし、がんばるよ」
「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ブライとかいう集落に、麗しい声が響き渡る。
その周囲には、沢山の女性たちが……プルプルと小刻みに震えながら気絶したフリを続けていた。





