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ぼっち姫、きゃんぷあんどぴくにっく!


 賑わう街を後にして、俺達はまず街道沿いに目的地の方角へと歩いていった。



「やっぱり大通り沿いって魔物はそんなにいないもんなんすかねぇ? この辺くらいならよく来るんすけど魔物に襲われた事がないんすよ」



 デュクシがそう言うのも分かる。


 ここ最近は魔王軍もおとなしくしているので大規模の侵攻もないし、この辺りはもともと魔物が少ない。



 もしかしたら初代の王様がこの辺りの魔物を殲滅したという話も嘘ではないのかもしれない。


 少し外れた森林地帯などに行けば勿論魔物はまだまだ沢山居るだろうが、野良の魔物も街道沿いまであまり出てこないのだ。



 主に街道沿いまで魔物が出てくるなんて状況は、自分の住処で食料を確保できなくなった時くらいのものだし、王都近辺は非常に豊かな土地だからそこまで食い物に困る事もないのだろう。



 その上、駆け出し冒険者達は実践を求めて魔物を探しては殺し探しては殺しを繰り返すのだからわざわざこんな所に出てくる馬鹿は居ないのだろう。



 そう考えるとひっそり暮らしている魔物には申し訳無さすら感じる。


 駆け出しの頃や、少し実力をつけてきた奴等というのはとにかく戦闘を求める。自分の力を高めたい、確かめたい。そういう欲にとらわれているからわざわざ魔物の住処を探して乗り込んで殲滅しようとする。



 逆に大量の魔物に取り囲まれてご臨終という場合も多々あるのだが、それはそれ。ただの自業自得というやつだ。



「心配しなくてもニーラクに向かうには大通りから逸れるから魔物だって居るさ。とりあえずなんか出てきたらお前らで対処しろよ?」



「了解であります! しっかりと姫をお守りしますから安心して下さいね!」



 ナーリアはそう意気込むが、別に安心もクソも俺は大丈夫なんだってば。


 どっちかっていうとお前らが心配だから実践経験を積ませておきたいんだよ。



 ……まぁそのくらいこいつらも理解しているだろう。



「ぷっきゅっきゅー♪ぷっきゅっきゅー♪ぷぷっきゅきゅーぷっきゅきゅー♪」



 俺の頭の上でリボンが不自然に左右にピコピコ揺れながら妙な歌を歌いだす。


 ふわふわ毛玉であるマリスに歌という概念がある事に驚いたが、そんな事どうでもいい。めちゃくちゃ可愛い。



「しっかしマリスが歌いだしたくなる気持ちも分かるぜ。今日は本当にいい天気だ」



「そうっすね! なんだかみんなでピクニックでもしてるような気分っすよ」



「そんな呑気な事言ってられるのも今のうちだけだぞ。俺らはピクニックに来たんじゃねぇんだから弁当も持ってきてないしな」



「あっ、そう言えばそうでしたよね。どうしましょう? そのニーラクまでは一日かかるのでしょう?」



 そう。ナーリアが心配する通り、ニーラクまで歩いたら丸一日かかる。


 夜通し歩いて明日の朝到着、といったところだろうか。


 しかし現実的に考えてこいつらの体力もそこまで持たないだろうし俺だって腹は減る。



「だから今日はどこかで野営だ」



「マジっすか!? キャンプみたいで楽しそうっすね!」



「デュクシは本当にバカですね。それは私達で食料の確保までやらなきゃいけないって事ですよ?」



 まぁそういう事だ。


 今後野営で夜を凌ぐ事も多いだろうしこういう経験は早めにしておいた方がいい。


 こいつらが野営経験があるかどうかはわからんが、普通移動は馬車を使うし本格的な探索でもない限り野営なんてしないだろう。



 どうやら俺の推測は当たっていたらしく、「野営ってどうやればいいんんだ?」「私に聞かれても…」なんて会話が後ろから聞こえてくる。



 まぁなるようになるだろ。


 何事も経験経験。




 しばらく穏やかな道が続き、マリスの機嫌のいい歌声が響いていたが、うっすらと日が陰って来た頃になるとマリスは歌いつかれたのか寝てしまったようだ。


 変化は解かずにそのままな辺りなかなか優秀だなと思う。



「まさかこれからあの森に入るんすか?」


「夜目があっても森は気をつけないとですね……」



 少なくともこいつらよりは。




 大通りから少し分岐して、俺たちは獣道を進む。一応道として使われているが、舗装などはされておらず、まさに獣道といった感じだ。



 そしてその道はそのまま森へと続いていく。



「姫、野営は森に入る前にするんですか?」



「甘い。このまま行けるだけ行って真っ暗になったら野営だ。そこが魔物の巣窟でもそこで野営をする」



「ちょっ、なんでわざわざそんな苦行するんすか!?」



「馬鹿だな。苦行だから修行になるんだろうが。そういう場所でしか休めない事だってあるんだから今回がそうだと思い込め」



「うぅ……俺暗いの苦手なんすよねぇ……」



 さっきまでキャンプみたいで楽しそうとか騒いでたじゃねぇかよ。



「暗い場所で魔物に襲われたらナーリアが夜目でデュクシに指示を出せ。俺は本当に危なくなるまで手は出さないからな。俺は居ないものとして二人でどうにか切り抜けろ」



「わ、分かったっす」


「了解であります……」



 二人ともこれからの展開に怯えているようだ。


 だが、この森にはそこまで凶暴な魔物は居なかった筈。


 トロールを倒せたんだからなんとかなるだろ。



 ……ウェアウルフに囲まれたらめんどくせぇな。


 俺は多分もう一回魔法剣技使ったら剣が壊れそうだしなぁ。


 その時はデュクシから剣を奪ってどうにかするか一匹ずつ殴るかだな。




「さて、そろそろ森に入るよ。みんなちゃんと覚悟しとくよーに!」



 私はとりあえず高みの見物でもしてるからね。



「ちゃんと私を守りなさいよね♪」



 その言葉を聞いた二人は、物凄く嫌そうな顔をした。



 なんでだろね☆



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