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ぼっち姫、変態にお仕置きする。


 結局俺は自分の剣を諦める事にした。

 理由はいくつかある。

 一つ、ヒビが入った後だからといってまだなんとか使えそうな事だ。

 もう一つは、生半可な剣を買ったところでまたすぐにダメになってしまうだろう。それならもう少しいい物が見つかるまで保留でも構わない。


 最悪の場合はデュクシからダガーか炎の魔剣を借りるなり奪うなりすればいい。

 例の氷のやつは威力半減してしまうだろうが、だったら炎を重ねてやればいい。


 がちゃり。


「姫ちゃんそろそろ準備できたっすかー?」


「きっ、きゃぁぁぁぁっ!」


 突然デュクシのバカアホマヌケクソ野郎がノックもせずに私の部屋のドアを開けた。


 私は今着替えの真っ最中なのだ死ね!


 もうだいたい着替え終わっていたので別に被害は無いのだがそういう問題じゃないのだ。


「いっ、今の悲鳴は!? いったい何があったんですかっ! ……デュクシ?? あなた、まさか……」


 私の叫び声を聞いてナーリアが慌てて部屋に飛び込んでくる。


 間に挟まれたデュクシは顔面蒼白。


「ちっ、違うっす! いや、違わないけど違うんす!! 姫ちゃんからもナーリアになんとか言ってやって下さい!」


「ナーリア」


「はい姫」


「こいつであの弓の試し射ちだ」


「了解であります!!」

「嫌だぁぁぁぁっ!!」



 まったく。朝から騒がしいったらない。

 俺が思わず変な悲鳴をあげてしまったのが原因なので反省が必要だが……。


 というより、最近無自覚に症状が悪化しているような気がしてならない。


 このままでは本当にいつの間にかプリン・セスティではなくプリンセスになってしまう。


 かといってアシュリーからもらった薬は持続時間が短いのでここぞという時にとっておかないといけないし、普段は俺の気合いでどうにか耐えなければ。


 気が付いたら自分がどんどん違う何かになっていくというのは、冷静になればなるほど恐ろしい。

 デュクシとナーリアは姫状態の方がいいらしく、あいつらと一緒にいるせいで悪化しているのかもしれない。


 奴等との付き合いも考え直さなければいけないかもしれないが、わざわざ装備を整えてしまった手前今更野に放つのも勿体無い気がするんだよなぁ。


「姫、愚か者を粛正してきました」


 着替えを終えた頃、扉の外からナーリアの声がした。


 装備の件以来、ナーリアが少し変わった。


 まず、俺の事を姫ちゃんではなく姫と呼ぶようになった。

 それと、俺に対する態度が、まるで姫に仕える騎士か何かのようになった。


 クリスタルツリーの弓を買ってやったのが余程嬉しかったのか、それ以外の心境の変化があったのかは知らんが、今までの俺に対するベタベタ甘々な雰囲気から忠誠心みたいな物に変化している気がする。


 個人的には今の方が助かるというか安心できるのでずっとこのままでいてほしいのだが、そう上手くはいかないのがこの女なのである。


「姫っ、しっかりとあの男には天誅を下しておきましたから。だから、その……ご、ご褒美を……」


 なんだか頬を上気させて、潤んだ瞳をとろんとさせながらこちらを見つめてくる。


 うわぁ……めんどくせぇ……。


「だめ……ですか?」


「はいはい分かったからちょっとこっちこい。んでここにしゃがめ。お前背が高いから届かねぇんだわ」


 体を小刻みに震わせながらナーリアがゆっくりと俺の前までやってきて跪いた。


「よしよし。よくやったなナーリア。偉いぞ」


 頭をぽんぽんしたり撫でたりしていると、床にぽたぽたと雫が垂れる。


 おいおい冗談だろ……? 泣くほど嬉しいのか? これが?


「う、うぅ……」


「ナーリア……お前、泣いてるのか?」


「うぅぅ……うへ、うへへへへ……」


 ぼかり。


「痛いっ!姫、何するんですかっ」


 この女褒められて、嬉しくて泣きだしたかと思ったのに……よく見たら床に垂れてんの全部よだれじゃねぇか!!


「うるせぇ! とにかく、準備も出来たしそろそろ出発するぞ」


 まだしょんぼりしているナーリアを引き連れて宿の外へ出ると、なんだか身体中からもくもくと蒸気のような白い煙を出しているゴミが蹲っていた。


「おいゴミ。カス。さっさと立て。行くぞ」


「あぁたまんないっす。俺はゴミっす。もっと罵ってほし」


 ガスッ。


「おっふ! ひ、姫ちゃん……ナイスな蹴りっす……サイ、アンド……」


「エリクシールライト」


 俺はデュクシに最高レベルの治癒魔法をかける。

 もともと回復魔法なんて初級のものしか使えなかったのだが、この身体になってからというものこのくらい簡単に使いこなす事ができるようになった。

 いったいこの姫さんは何者だったんだろうな。


「あれ、すごいっす! もう全然痛くぶっふぉぉぉっ!」


 立ち上がったデュクシのみぞおちにすかさず蹴りを入れる。


「エリクシールライト」


「い、痛みが消えぶっふぉっ!」


「エリクシールライト」


「ひ、姫ちゃん?これはいったいどういうぶほぉぉぉっ!」


「エリクシールライト」


「ご、ごめんって俺がわるぐごげぁっ」


「エリクシールライト」


「ごべん、なざい……」


 デュクシが鼻水と涙を垂れ流しながら土下座してきたので許してやることにする。


 それからしばらくの間デュクシは驚くほど静かだった。


 ……何か忘れている気がする。

 静かすぎるのだ。


「……あ。毛玉、毛玉どこいった!?」


 そういえばデュクシが部屋に入ってきたあたりから見てない。

 どこに行っちゃったの!? 宿の中に居るの?


 すぐに探しに行かなきゃ。


「きゅぷぷぃ?」


 頭の上には何も居ないのに、その声が確かに聞こえた。

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