ゲームスタート
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Now sleeping......
Now sleeping......
Now sleeping......
Confirmed complete sleep.
system Dream ex machina setup.
...... Start check program.
Neurotransmitter compiler / OK
Additional sense connection / OK
Life support unit / OK
Obsession remover / OK
World simulator connection / OK
N.A.L.O.W All Green.
...... Start connection phase
Adjust the sensory time.
Connect pain sense.
Connect tactile sense
Connect taste sense.
Connect smell sense.
Connect hearing sense.
Connect vision sense.
Connect extended sense.
All connections were successfully executed.
ready to transfer your soul.
...... Start transport phase
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.......................................Welcome to the world.
―――『目が覚めた』と、そう感じた。
目覚める際の感覚なんて人それぞれだとは思う。俺の場合は蛍光灯がパッと点くような感じだと思うのだが、後輩は「旧世代のPCがゆっくりと立ち上がる感じですかね~。低血圧は辛いッス」と嘯いていたのを憶えている。
兎も角、目覚めの感覚はいつものそれで物心がついた頃から慣れ親しんだモノと同じモノであったのだ。流石に背筋がゾッとした俺は、白い大理石?で構成された広間に寝かされていた身体を起こし、事前の『基本操作説明書』にあったコマンドを思い出し、実行した。
「え~と、音声入力で反応するんだったか【開け胡麻】っと」
あらかじめ設定していたキーワードを呟くと、俺の視界内に半透明なゲームのコンソールのようなモノが表示される。確か網膜投影と同じように俺自身にしか見えない設定になっているはずだ。
距離感がつかめないくせにタッチパネル方式だから操作に少々戸惑ったが、ちゃんと『ログアウト』ボタンがアクティブ状態であることを確認した。さらにファンクションの中から自分の『現実世界の自分』の確認を行う。
コンソールに新しくウィンドウが追加され、心拍数などの雑多な情報と青年と中年の間くらいの年齢層に見える男性のバストアップ画像、いやLive中継だから動画がそこに表示されていた。表示された男性の顔は実に見慣れた、見飽きた『現実世界の俺』の顔そのままだ。
「・・・・・・ふぅ」
思わず、安堵のため息が口から漏れた。まさかリアルで胡蝶の夢的な、『現実世界のことが夢で、この世界が現実なのでは』という阿呆な思いをするとは思わなかった。
「いや、しかし」
良く出来ている、というつぶやきは口の中で消えた。
日本が誇る世界に24台、国内に16台しかない超弩級スパコン「ミハシラ」の一つを丸ごと利用して作られた仮想空間。仮想空間といっても現実世界のコピーでは無く、所謂『剣と魔法の仮想世界』だ。
なんでも、複数のゲーム会社のシナリオライター達と有名大学の教授達が侃々諤々の大論争の末、この世界のあらすじを決め、『ミハシラ』が大筋でそれに沿うように原始時代から現在までをシュミレーションした『歴史のある仮想世界』らしい。
らしい、というのはプレイヤーに前情報として渡されているゲームの世界観に対する情報がかなり制限されているからだ。恐らく自分たちで情報を集め、真偽を見極めて欲しいという<運営側>の意向なのだろう。公開されている世界観の情報としては俺たちプレイヤーの立ち位置と所属国のわずかな情報だけだ。
とりあえず所属国関係の情報は置いておいて、プレイヤーの立ち位置を説明するとこんな感じに見えるらしい。
"善神との契約により魂人という異世界から転移してきた魂のみの存在がこの世界に降り立つだろう。だが、光あれば闇もあるのが必定。魂人のなかには邪神によって選ばれし者共も含まれている。それらを見分ける方法は無い、その者の行いを見守ることで善神の御遣いか邪神の手先かを人は自らの眼で判別しなければならない。いずれにせよ魂人によって世界は変革の時を迎えるだろう。願わくばより良き世界へ至らんことを"
そんな最高神からの託宣が全世界にゲリラ放送されたらしい。
つまり、俺たちプレイヤーが『魂人』という存在で、プレイヤーによっては良い奴も悪い奴もいるけど、まぁ仕方ないよね?・・・・・・って事らしい。『異世界から入植者を入れます。おまいらの意見は聞いてない。』なんて国家元首が言い放ったら現実世界では確実に混乱と暴動が起きそうなものだが、異世界の最高神は実在していてちょこちょこ人に救いの手を差し伸べているらしく、とりあえず仮想世界で歓迎してもらえるのは間違いないらしい。
あと、設定として『魂人』というのは肉体に縛られていないので仮想世界人、通称『地人』に比べて戦闘や魔法、その他諸々の熟練速度が非常に早いという設定らしい。これはゲームの都合上の話で、『地人』と同じようにしか成長出来ないんじゃあ面白くないという切実な理由によるものだろう。仕方ないよね。誰だって出来ることなら俺tueeeeeeeeeeeeしたいもんね。
具体的には、ゲームのシステム側から熟練度に応じてサポートが得られるらしいけど、流石にこの辺は実際にやってみないとどの程度有効か判断しかねるところだ。大まかにはステータス画面から取得スキルを確認出来るらしいのであとでいろいろ検証してみよう。
ちなみに、仮想世界の時間の流れは現実世界の3倍(もちろんビックバンから良い感じの剣と魔法の世界観になるまではそうとう早送りしたとの事)に設定されているらしい。どんな技術であればそんな事が可能なのかと考えたが、普通に見る夢でも体感時間がグチャグチャなこともあるし、もしかしたらそう難しいことでは無いのかもしれない。
そう、夢、夢なのだ。
現実世界から『明晰夢を見るようにキャラクターを操作する』という特殊極まる方式でこの造られた世界に俺たちプレイヤーはログインしている。現実世界では一昔前のSFのような機械仕掛けの棺みたいな物に俺は収納されており、今現在もウィンドウの画面に出ている寝顔を晒しながら脳波を機械に読み取られ、また逆にこの世界の情報を信号として受信しているているはずだ。
もちろん、そんなハイテクという概念すらも逸脱した機器が個人の自宅に存在している筈も無い。俺たちプレイヤーはこのゲームのテスターもしくはモルモットとしてとある施設に集められ、プロのエンジニアから24時間体勢でチェックを受けつつこの世界に接続している。テスター期間は最低でも1年間、その間はできうる限りこの施設内で過ごすことが『契約』により定められている。『契約』という単語でなんとなく察してもらえたかと思うのだが、『モルモット』とというのはそういうことだ。
この一昔前のSF小説によくあるような完全体感型MMORPGを実現するにあたり、先進技術というか未来技術のオンパレードとなってしまい、実稼働時の安全性と信頼性という観点だと非常にマイナスが点いてしまったのだ。それらを払拭する為のテスターで有り、ぶっちゃけるともう言い訳のしようのないほどの人体実験なのでテスターにはそれ相応の契約金が支払われる。
今テスター募集の公告を思い出してもその内容は酷い物だった不安を煽る文字列が9割9分、残りの1分が剣と魔法の世界に関する自信を匂わせるキャッチコピー。まるで現代の『南極探検隊員の募集広告』である。
普通の人は人体実験に対する批判をする前に『この募集内容は正気なのか』と首をかしげたものだったが、もちろんその筋の人達からは熱烈な支持を集めて一次テスターの400名は定員をあっさりと超え、現在は六次テスターまで埋まっているとこのプロジェクトに参加している医療機関の人が嘆いていた。
俺は運良く一次テスターに潜り込めたクチで、仕事を辞め、親族を説得し、この壮大なゲームプロジェクトに参加することができた。仕事を辞めたことは後悔も反省もしていない。別に働くことが嫌いだったわけでは無い、むしろ働くことは生きがいだったと思う。
ではテスターの報酬に目がくらんだかというとそれも違う。ただ、幼き頃に胸の中で輝いていた『剣と魔法の世界』への憧れが現世のアレコレを引き千切ってしまっただけという大人として少々恥ずかしい衝動的な理由だ。
しかし、先に述べたとおり後悔も反省も無い。いや、こうして異世界に転移してさらにその思いは強くなったというべきだろう。
不安はある、恐怖もある、しかしそれ以上にこの幼き日の幻想が具現化した世界は俺の魂と呼ぶべきものを奮い立たせる。
今この時から、新しい剣と魔法の物語が始まる。そう、思えた。
(´・〒・`) 若い衝動に任せて投稿してしまった。後悔も反省もしていない。興奮はしている。
(´;〒;`) とりあえず、週一更新目指して頑張ってみようかな。