オタクが自重をやめました
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土煙を上げながら馬に乗った完全武装の兵士たちが町のそばに姿を見せたのは日が少し傾きかけたころ
だった。
その一団から一騎が前に歩み出ると「我らはイシュガルであるこの町住む全ての者に告げるこの地は我ら
イシュガルが神に与えられた聖地であるにもかかわらず下等な亜人達馴れ合う痴れ者たちよこの地を汚す
汝らは全て焼き尽くされなければならないせめてもの慈悲に潔く降伏すれば人らしく痛み少なく死ねるぞ
どうだ」と怒鳴ると「この町の領主として返答させていただきます寝言は寝てからどうぞ貴方たちみたい
な連中が今までこの町を襲ったことがないと思ってるんですかそのたびに私たちはそいつらを撃退してき
ましたなので逆に問います今ならまだ生きて帰れますよしかしそこから一歩でもこちらに来たら容赦しま
せん私達の力で貴方達を殲滅します」とルネが返答するとにやにやしながら「ならば全てなぎ払い焼き
払ってくれるは皆の者蹂躙せよ堕落したこの町を灰も残さず焼き尽くせそれが神のご意思だ」と叫ぶやい
なや兵士たちが待ちの四方の入り口に押し寄せその場を守る冒険者と衛兵達に斬りつけ殴りかかったこれ
には、ルネも驚いた「ちょ何この人数は明らかにこちらの偵察が確認した人数を上回っているじゃない武
装勢力なんて量じゃないあきらかにどこかの国の軍勢が混じっているとしか思えないんですけど」と言い
ながら敵から放たれたファイヤーボールをレジストする
「はっこの町を気に食わないやつなんてこの国にだっているじゃないか、気にしたって仕方ないだろ今は
ただ生き残ることだけを考えなせっかく幸明が守ってくれたんだ今度はあたしらが気張る番だよこいつら
ならあたしらでも十分対処できるんだ今襲ってる奴等で全部とは限らないんだ」
「そうじゃな冒険者たちはわしとローズにまかせろルネは衛兵達を四方に振り分けて侵入を許すな奴等に
この町の住民の恐ろしさを思い知らせてやるんじゃこの町を守るの心に人種の差などあるものかここはわ
しら全ての町なんじゃからな」
その言葉に町の中から外から声が上がる人々は口々に「この町は全ての民に開かれた町、人種の差などあ
るものか見よ子らを人種の違う子供たちがともに笑いあっている子供ができることを大人ができない道理
があるものかさあ立ち上がれ武器を取りわれらの絆を阻むやつらを打ち倒せ」と声を上げるエルフが矢を
放ちトロールとオーガの戦士たちがその屈強な体躯を生かして敵集団に突っ込んで敵を薙ぎ払って声を上
げる「俺たちを同じ仲間として扱ってくれるこの町に攻めてきてただで済むと思うなよ」
「ここに住む限り空腹にも迫害にも怯えなくていいんだそんな天国みたいな町をお前らみたいな連中の好
きにさせるか」
「行くぞ今こそ我等がこの町に恩を返すとき死を恐れるな何もできずに町の仲間が傷付けられる事こそ恐
れよ」
口々に叫びながらトロールとオーガの戦士達は敵を薙ぎ払い突き進み敵勢を押し返すその身が傷つき倒れ
る時も前のめりにその姿に鼓舞されない者など居なかった。
回復に努める幸明はその心にその姿に敬意を向けずには居られなかった傷つき仲間の手で戦線から下げら
れた戦士達に回復魔法をかけようとすると戦士はにこりと笑うと「俺達はいいそれよりも戦っている奴等
に手を貸してやってくれ俺達はこのまま笑って逝きたいんだ」
そう言って回復を断ろうとするのだが幸明は「ここで逝くのは卑怯だぜ戦士なら生きて天寿を全うしやが
れそう叫ぶとエリアヒールを発動する地面に座り込んでいた戦士達はお互い顔を見合わせるとにやりと
笑って「まったく厳しい救世主様だぜ俺達にまだ戦えとさだが助かったこれでまた戦えるこの借りは戦っ
て返すぜ野郎共行こうじゃねえかそして敵に地獄を見せてやろう」
一人が吼える様に叫ぶと戦士たちは幸明に一礼すると走り出す瞬く間に土煙を巻き上げて戦線に戻るや否
や敵を投げ飛ばして武器や盾を奪うとその盾を前に掲げ敵に押され始めた冒険者たちのために道を切り開
くそのあっという間の出来事にローズとゼクは疲労がにじむ顔を見合わせると「わしらは助かる
が・・・・」
「そうだねちょっとはおとなしく休んでろって言いたいねあいつらが死んでいこうとするのを見ていられ
なかったんだろうけどね自分だって疲れていないわけではないんだから」といってため息を吐くと顔を上
げると「棺桶に入りかけた連中が戻ってきてくれたんだぼやぼやしてたら冒険者の名折れだよ頭を上げな
連中の作ってくれた道を駆け抜けてあいつらの大将を潰すよついてこられる奴だけでいいあとはゼクに協
力して道の維持をしな」
そう言ってローズは切り開かれた道を走り出す冒険者達は後に残るものとローズについていく者に分かれ
散って行くどちらの冒険者の顔にも先ほどまでの疲れは見られないお互いにまた合おうと目を合わせると
自分の戦場に向かっていくどちらの戦場も過酷さは変わらないのであるなぜか疲労しづらい敵とまだ精兵
の敵本陣、疲労の募るこちらにとっては厳しい相手に変わりがないそれでも冒険者達は武器を手に己が役
割を果たすべく敵に向かっていくここに絶望に抗うべく始まったこの日の戦闘にも終わりが近づいてくる