暁の決戦2
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津波のように押し寄せる敵をゼクが巨大なバトルハンマーでなぎ払い叩き潰していると突然地響きと共に目の前に高い壁そびえ立ち次の瞬間巨大な炎をまとった竜巻がたちあがると壁の向こう側から凄まじいモンスター達の断末魔の叫び声が響きそれがおさまると壁も炎をまとった竜巻も押し寄せる敵勢も消えていた、幻でも見せられていたようにほうける冒険者達に「野郎共後ろの連中がきっちり仕事してくれたんだ残りはこっちでかたずけないとどやされるぞ」と発破をかけて自分も残敵を端から潰していった、冒険者達は目前迫った勝利の二文字に笑みを浮かべながら残った敵を次々に討ち果たしていくそして最後の一体がちにふした瞬間歓声があがった誰もが皆これで生きて町に戻れる町での祝杯に思いをはせ始めた瞬間だった。
絶望が顕現する誰が言ったわけではなく何かを見たわけでもなくその場にいた全ての冒険者は理解してしまった命あるものでは勝てない物が顕現すると先ほどまで覇気はうそのように消えうせ我先に町に逃げて行くゼクでさえ額からは恐怖のあまり汗が流れ落ちそのひざはガクガク小鹿のように震えだしたがその拳を叩きつけて抑えるとその気配の中心をにらみつけた。
時を少しさかのぼってここは神域創造神の間アマテラスがこの世界の創造神を捕縛しに訪れたのだがすでにいない映し出されているのは平原で対峙する冒険者達と紛い物の存在達その場に漂う神気にただならぬものを感じたアマテラスは目を閉じるとその場の残留思念を読み取った次瞬間その目をかっと見開くと「なんて事をこんなの試練ではないただの虐殺ではないかそればかりか降臨して己がいのままに世界を動かそうなど神の所業ではない力をそのままに墜ちたか我等には手を下す術は無いが侮るなよあの世界には今あの者がいるお前が絆を奪ったあの者がなきっと世界を救い貴様の邪念・野望・姦計それら全てを打ち破る」
戻って平原ゼクが睨みつける中心に周囲からどんどん黒い澱みが集まってくるゼクは澱みが集まりきる今のうちに叩き潰さないとまずい内心わかっているのだが体が拒否しているようにピクリとも動かないそれでも強引に動こうとしていると「われらでもきついのだ鍛え上げているとはいえ無理はせずに休んでおれ戦いはこの一戦だけではないのだからなドワーフの戦士よ」
そういう声と共に四神獣と四騎士が並び立つ驚くゼクに「我等は幸明の要請に従って召喚された援軍じゃよここは任せよ何が出るかはまだ解らぬが並の気配ではない世界の安定を崩されかねんのでな我等の力で抑え込むで叩き潰す幸明の隠し玉をつかってな」
そう言った次の瞬間集まった黒い澱みの塊から巨大な黒龍達が現れ威圧するように叫び声をあげた。
バハムートがくすくすと笑い出すどうしたのかと見つめるゼクに「いやすまんこいつらがあまりにも下らぬたわごとを抜かすのでおかしくて笑ってしまったのよ龍帝の名を持つ我にたいしてひれ伏せ我等は絶対なる龍帝に仕える黒龍なりなぞとぬかすのだからな」
あたりの緊張感はうそのように消えうせ釣られるように残りの四神獣も四騎士もしまいにわゼクも笑い出した。
言われてみれば確かにそうだたとえ異世界とはいえバハムートの正式な尊名は黒龍帝バハムート数多の世界を統べる大神より与えられた唯一無二の名である高だか一つの世界の龍族を統べる程度の者が名乗っていい物ではない龍帝とはそれだけの名であり神が認めた皇位の証であるそれを突然現れた龍族がその命で推参したと名乗った本来なら逆鱗に触れる行為なのだがバハムートには怒りより先にあまりもの知識の無さにあきれをとおりこして笑うしかなかったほかならぬ自分同族黒龍の者が自分達の王様に王命であるひれ伏せとのたまったのである馬鹿である龍族は人より厳しい縦社会主と同じ黒龍族と言えども例外ではない人化していたから見抜けませんでしたは通らない見抜けなかったのは自分の不出来とされ激しく罰せられるなので皆いつも研鑽を怠らないはずである本来はにもかかわらずこの目の前の黒龍達は目の前にいる自分に気づかない「気配の正体はこやつ等ではないすまんが抜けるのを許してくれちょっと躾けてくるのでな」と言うと本来の姿に戻ると一瞬にして黒龍達を張り倒すと引きずるように転移していった。
入れ違いに幸明とローズが現れるそして他者を萎縮させる気を放ちながらそれは出現した幸明以外にはただの八頭の巨大な蛇にしか見えなかった、「ただでかいだけの蛇じゃないか」誰かが言ったとたんあたりを凍りつかせるような殺気が支配し「愚か者我は神代の時代より蘇りし八岐大蛇なりこの世の全ての物は我が食料であると心得よこの地には忌々しき須佐の大神は居らぬ来られぬすべて我が望みのままにくろうてくれるは」と言い放った四騎士にもこの場に残る四神獣たちにも力の差は歴然全員がかりでも押さえ込めるかきついしかし今バハムートが抜けているこれでは勝負にならぬ誰もがそう思い己が主の思い人たちが食らわれてしまう未来を抱かずに入られなかった。
ただ一人幸明を除いて幸明は八岐大蛇の前に歩み出ると「まずは貴様から喰われたいのか?」と言い放つ八岐大蛇に開口一番「お前こそ目の前にお前の大嫌いなものがいることに気づかないのか寝すぎてぼけているかこの俺は日の本の三柱神の加護と命を受けし者須佐の大神にもらった引導を受けても改心はしなかったのか?」と怒鳴りつけた。
それに対して八岐大蛇は「何を言うか人の分際でそれに今の我はこの世界の神より我を乗り越えれなければすべて喰ってよいと許せれて居るのだ」と言い放つ幸明はにやりと笑うと「だったら貴様を倒して逆に喰ってやるよ自分が食われる恐怖を味わうんだな」と言うが早いか腰に挿していた、無間刀を抜き払うと一刀の元に八岐大蛇の頭の一つを切り落とす、そして「ひとーつあとななつだ後悔するがいい邪心にしたがい蘇ったことを」と言って無間刀を軽く一振りするとその切っ先を八岐大蛇に向けた。
ローズとゼクは自分から見ても圧倒的強者であるはずの四騎士や四神獣が呪縛されまったく身動きできないにもかかわらず幸明だけが何の制限も受けていないことに驚いたが得心がいったようにニヤリと笑みを浮かべると「なあローズうれしいじゃねえか、異世界から来てくれた英雄殿は来て三日しかたってないまだあってない者の方がおおい俺達なんかのためにきれちまったようだぞ」「ああ英雄殿はキレてるねでも驚くほどに冷静にあいつに後悔させるつもりのようださっきまでのど派手な一発のときと違って冷静に一刀確実にあいつの頭を切り落としているあの歳であそこまで極めちまったら一騎当千どころかあのもの一軍の如しっていわれるレベルだよさっきから遠くからこっちをちらちら見てる連中にしたら背筋が寒くなっているだろうお気の毒なことにね」
「かまわんさハイエナ共だそれで思いとどまればよしあくまでこの町を狙うなら相手をしてやるまでだこの町は人種差別をしないさせないすべての人種は平等あつかわれるほかなら敵対してる魔族と人間の恋人同士が愛を語らい獣人も人間も魔族もエルフもドワーフも有翼族も共に遊び共に笑い共に学ぶお互いが長所短所を認め合い酒を酌み交わす昔会ったさまよい人の言葉じゃユートピア・理想郷なんて呼ぶらしい唯一無二のユニークなこの町みたいのをな俺は嫁に先に逝かれちまって子供も得られなかったがこの町のがきどもが俺の子供であり孫だそれに手を出すならあいつらの笑顔を奪うなら容赦しねえ豪槌の名にかけて叩き潰す」
「なに辛気臭いことをっていいたいところだけれどあたしも同意見だねあたしは運よく相手との間に子供と孫も得られたけど望みながらも得られずに死んでいった仲間も多いだからこの町がどれだけ尊い物だか解っているだからこの町に害をなすならあたしも宵闇の剣姫の名にかけてこの剣で後悔させてやるよ」
「みっつあといつつだ」幸明は次々にその口に捕らえようとする八岐大蛇をひらひらと舞うようにかわすと瞬く間にもう二つの頭を切り落とした。
その斬撃は頭を切り落とすだけにおさまらず頭を支える太い胴体に無数の切り傷をあたえていく次第に八岐大蛇から余裕を奪っていくそして「ななつ覚悟しろせっかく蘇ってきたところ悪いが冥府に逆戻りしてもらおう」そう宣告する幸明に「人の身でよくここまで我を追い詰めたほめてやろうだが最後に勝つのはこの我だ」そう言うとあたりの邪気をいきよいよく吸い込み始めたするとみるみるうちにさらに巨大になっていくと姿も変わっていき闇色の巨龍に変わっていった。
それを見たローズ・ゼクは驚いたそれは若き日の自分達の仲間を喰らいつくしそして二つ名を得るきっかけとなった混沌龍正式名称ケイオスドラゴンあるいはカオスドラゴンと呼ばれしもの龍にして龍にあらざる物
そのときは聖域のレッドドラゴン達と共闘してようやく勝ちを拾った相手レッドドラゴンによれば自分達が生きている間は蘇らぬはずの悪夢自分が負けた相手が存命中は2度と現れぬはずの悪夢それが目の前に現れるその事実を認めたくない感情が絶望が支配しそうになったそのときだった。
「それが貴様の切り札か?」
「ああそうだそちらの二人はこれが何か知っておる様だな教えてやれこの愚か者にこの絶望の名を」
「ゼクさん、ローズさんこいつが何か知っているのか?」
「ああ知ってる正確には同じ個体じゃないが似た龍おね」
「そいつの名は始まりの混沌龍にして龍あらざるものケイオスあるいはカオスドラゴンとドラゴン達に呼ばれるもの一頭で唯一確認され討伐できた災厄クラスのドラゴンだその戦闘能力はレッドドラゴン数十頭をややすと相手取れるレベル若き日俺達の仲間を俺とローズを残して喰らい尽くした奴だったなぜなら俺らの因縁の相手はレッドドラゴン達と共闘することで討伐できたからな」
「そうだ我は絶望をあたえる混沌の龍ケイオスドラゴン人だけでは抗うことかなわぬものなり恐れよ絶望するがよい愚かなる人の子よははははは・・・・・なぜだ貴様なぜ絶望しない神でも呼び寄せられとでもいうのか?」
「神の力をドラゴン達の力を借りるまでも無いあの無情なこの世界の神のことだ自分望みの為ならなにかしてくるのは想定されていた故にだから異世界あの言葉を言ってやろうこんなこともあろうかと準備してあるんだよこっちもないくぞミャウ、コールゴライアスセットアップ」
「了解ですマスター巨大インテリジェンス甲冑型ゴーレムゴライアス起動緊急発進します」
大地が鳴動するそして巨大な輪郭が幸明とパートナーフェアリーミャウを包んで持ち上げていく「させるか滅びるがよい」ケイオスドラゴンは叫ぶと彼らに猛烈なブレスをはきかけるあたりに悲鳴のような声が響き戦場を絶望が支配したかにみえただが彼らは死んではいなかったいやより正確に言うならば絶望のブレスは彼らに近づくことさえできなかった。
なぜならば彼らは希望の召喚にまにあっていたからである
その巨大な人型は半透明なクリスタル様なものでできておりその姿は地球の人間であるならば八翼の大天使と鎧武者を融合させたものだと気づいただろうかくしてケイオスドラゴンのブレスをきっちり無効化したゴライアスはケイオスドラゴンに「我が名はゴライアス絶望から世界を守る為生まれしもの絶望の龍よ我が前に現れし事を後悔するがよい我が前に絶望の存在を許さずここが貴様の終焉の地じゃ」そう告げるとその拳を叩きつけたドゴンと轟音たてるとケイオスドラゴンは殴り飛ばされる「何だってたった一発の拳で殴り飛ばすなんてなんて力だい」
「こんな馬鹿な我がブレスが効かぬならばこれでもくらうがよい始原に連なる炎よいかづちよ我が敵に破滅を与えよフレアボルテージ」そう唱えるとゴライアスの周囲に炎といかづちが押し寄せてきた。
「愚かなマナ吸収」そう言ったとたんみるみるうちにゴライアスに吸い取られ消えてしまった。
「お返ししよう偉大なる太陽の女神よ月の男神よ始原の英雄神よ絶望を打ち破る破邪の一撃を今ここにうけよトライGSブレイク」そう唱えたとたんケイオスドラゴンを無数の光矢が取り囲んで貫き最後は巨大な光の槍がその身体を貫き地に落とした。
「さあ主よ彼ものに止めの一撃を」そうゴライアスは叫ぶと幸明はその身にゴライアスに似た甲冑を身に纏い飛び上がると「奥義無間一刀両断」そう言って振り下ろしたその刀の数倍の大きさの斬撃が走りその一刀のもとにケイオスドラゴンを左右に切り分けてしまった。
これにはローズも「お見事、うちらが苦戦したケイオスドラゴンを単独凌駕しそして一刀にて完全にその命を断ち切ったうちらのときはバラバラにしても蘇りやがったのに完全に死んでやがるぜ」
そう言いながら幸明に目を向けると「強すぎるよあんた」と誰に聞かせるとも無くつぶやいた。