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第1話

辺りは真っ暗でバシャバシャと空から冷たい水玉が降って来た。


雨だ。


雨が降っている。


僕はその夜空の中、黒い傘を差して歩いていた。


部活が終わって友達と離れ、家に帰っている途中だった。


その時は、ちょうど、人集りが少なく道幅が狭い、周りには、ほとんど店や住宅がない路地を通っていた。


近道をしていたからだ。


余計に暗くて下も周りも見えにくい。


下を俯きながらそのまま、前へ前へと。


そんな時、周りが暗くて気付かなかった。


こけっと躓く。


痛っ!


足の傷口になったところから赤く血が流れた。


痛っ!


何?


スマホの灯りをつける。


すると、灯りを灯したところに、段ボールの箱が置いてある。


何でこんなところに段ボール箱が…


イライラとした感じたになる。


そして、中を覗くと、そこには、子ネコがいた。


真っ暗な中にさらに黒い。


「にゃーにゃー」


小さい鳴き声だ。


その子ネコを見て、咄嗟にどうしようと考え込む。


うちは、アパートだしな…


その場から離れる。


しかし、後ろを振り返ってしまう。


「にゃーにゃー」


泣き続ける子ネコ。


小さなひとみで私を見つめている。


再び、子ネコのところに戻る。


「にゃーにゃー」


どうしよう…


再び、子ネコのところから離れた。


しかし…


やはり、子ネコのことが気になってしまい、家の前まで来たが、思わず、後ろを振り返り、走って子ネコの元に戻った。


その場に戻ると、子ネコは、尻尾の先まで身体と同化させて震えながら丸まって目を閉じている。


僕は、そんなネコの様子を見て、迷いに迷い、どうしても子ネコを無視してほっとくことが出来ず、子ネコを箱から出し、抱えて家まで歩いて帰った。


気が付いたら子ネコを抱えてついにアパートの前まで来てしまった。


あー…


どうしよう…


そこまで来て迷う。


しかし、僕は思い切って、そっと自分のアパートの部屋にひっそりと入っていった。


そして、部屋に入り、真っ暗な部屋に灯りをつけた。


それから、そっと僕は息を吐く。


「にゃーにゃー」


鳴いている子ネコ。


僕は、子ネコを風呂場に連れて行った。


しかし、シャワーのお湯を出すと、急に暴れ出す。


「にゃーにゃー、にゃーにゃー」


そして、僕の手の皮膚を強く思いっきり引っ掻く。


「痛っ!」


傷口から、赤い血が流れた。


イライラとしながらも


「すぐだから、大人しくして!」


怒りながら、子ネコを強く抑え、子ネコの顔や頭、足身体と洗っていく。


シャワーが終わり、風呂場で簡単に子ネコを拭いた。


プルルプルルと水をあっちこっちに振り回す。


「あっ!」


そして、子ネコは、トコトコと歩き始め、家の中をフラフラとしながらも歩く。


部屋に置いてある物に興味を持っているのか、色々な物を引っ掻き回す。


「あっ!」


「駄目!」


僕は子ネコを抱え、ベットの上に乗せた。


すると、足元が不安定なのか、上手く立てないようだった。


立とうとすると、こけっと転ける子ネコ。


「あっ!ご飯!」


「何、あげよう…」


僕は取り敢えず、夕飯の支度をした。


子ネコには、少しだけ、自分の夕飯を分けた。


ご飯をあげると、子ネコは匂いを嗅ぎ、パクパクと食べ始めた。


食べ終わった後と同時に、


「あー!おいしかった!」


え?


声が聞こえた気がした。


子ネコを見ると、ぺろをペロペロとしている。


気のせいかな?


寝るか…


そのまま、僕は、子ネコを側に置いて、目を閉じた。



その日の夜、僕は夢を見た。



朝、起きると、拾った子ネコが女の人になっていて僕に朝ごはんの支度をしていて、一緒に朝飯を食べ、一緒に暮らす夢を。


まるで、同棲して付き合っているかのように。


幸せな夢を。



それは、僕と子ネコの始まりだった。

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