狗の戦い、国の事実
「チュドォォォォォォォォォォォォォン!!!」
やばい!東のほうから特大の爆発音が聞こえてきた。自分の境遇についてなんかで悩んでる場合じゃない。しかもこの爆発音は、恐らくハラサルが人体実験で造りだした、マシーネ・ユマン(機械人間)によるものだろう。
殺れるか!?さっきまでの戦いではあまり怪我を負っていないが…、マシーネ・ユマンは生身の人間ひとりで立ち向かえるようなそんな軟なやつじゃない。こいつらと一手交えるときは…相当な覚悟が必要だ。
急いで小屋から飛び出る。もう2人ほどの仲間がやられている。しかも黒焦げだ。しかもそこら中 で水道管が破壊され、大量の地下水が噴き出している。なぜだ?水を必要としている敵か…。ってことは奴は!
「ビリ…ビリビリ……」という音が聞こえてくる。やはり奴は、電気系のマシーネ・ユマンだ。奴が地下水を必要としていたのは俺らの体内に電流を流しやすくするため…。かなり厄介な種類である。だが、心配はない。なぜならこの俺に倒せない敵はいないからだ。別にナルシストなわけではない。こう思って戦闘に臨まないと、精神的にやっていけないのだ。
さあ、急接近。腕に極太の導線が触れる。いや、もうこれはもはや超強力な電棒である。ちょっと触れただけなのに、すごい衝撃だ。体が一瞬電流によるしびれで麻痺し、停止すると、筋肉の塊のような腕でぶん殴られた。でもその時、俺の獲物は奴の懐に入り込み、奴も同等のダメージを負った。 奴の動きは少し鈍くなり、 俺が剣を振りかざそうとすると、奴に銃弾が突き刺さった。奴も“造られた”とはいえ“人間”だ。奴は倒れこむ。周りの仲間が奴に剣を突き刺す。俺はこの瞬間があまり好きではない。この時のマシーネ・ユマンは、“人間”よりも悲しく、苦しい表情をするのだ。そうだ。奴は、元はといえばマタントスの人間である。記憶があるのかないのかは知らないが、同種の人間が自分にとどめを刺す。そんな苦しいことはないだ ろう。
俺は今日も、この場で俺だけ、奴にとどめを刺すことができなかった…。自分の仲間を何人も殺ったやつなのだ。殺されて当然だ。俺も最後に、奴に剣を上からぶっ刺した。 その時、大量の電磁波が奴の体内から放出され、俺も、周りにいた仲間も全員体中がしびれ、体内 のすべての機能が停止し、倒れこんでしまった。
何時間寝ただろうか。目が覚めた時、俺はマタントスの国軍基地本部にいた。時計を見る。3時間 しか時計の針が動いてない。それを見てほっとしたが時計に示されている日付を見ると、俺は27時間寝ていたことがわかった。「何やってんだ俺は…。」そう思ってトイレに向かうと、‘軍会議室’が あった。また軍の上のやつらが集まって、下らない話でもしているのだろう…。そう思って通りすぎようとした俺だったが、やつらの会話から、「マシーネ・ユマン」という言葉が聞こえてきた途端、俺の肉体は反射的に動きを止めた。何か“復讐”への手がかりが掴めるかもしれない。俺は聞き耳を必死に立て、ひたすら会話を聞いた。
「ハラサルのマシーネ・ユマンは、どんなものですかね?」
「実際戦ってみたが、欠陥だらけだね。我々の力をもってすれば、やられることはない。」
「でも、奴一人を倒すのに、多くの人員を割かなければならないでしょう。」
「それは大丈夫です。私達も強力な兵器の開発が進んでいるではないですか。」
「え?それはなんですか?何を材料とするのですか。」
「それはもちろん。同じですよ、奴らと。ただし、私達は…。」 この驚愕の事実を聞いたとき、そこで黙って突っ立っていることしかできない自分に嫌気が差した。