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第四節 孤独の叫び 1-1
「いいか、チャンスは一度だけだ」
そう言うと、ダニエルとジョンは足音を消して監獄の詰め所に忍び込む。
明かり無しには歩く事すら出来ない暗闇の中、ほのかに光を放つ小さなロウソクを片手に、二人は慎重にあるものを探している。
「ダニエル、あったか?」
「あぁ、鍵束の置き場は知っている」
そう言うと、慣れた手つきで一番奥の机の引き出しを探り始める。
「これだ!」
ジャラっと小さい音を立てて取り出した鍵束にはあの扉を開く鍵がついていた。
「よし! 貸してみろ」
鍵束を受け取ると、おもむろに腰に下げた小さな鞄から何かを取り出している。
「なんですそれは?」
それは、小さな木の枠と粘土のように見える。
「おっと! 見るなよ。これは企業秘密の道具なんだから」
どうやら、合鍵を作製するための型作りの品物のようだが暗くてよく見えない。