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第二節 初めての名前 1-1
「看守長、あの塔の囚人。あれは何者なのです?」
夕食時、ダニエルは何気ない素振りで看守長に尋ねた。
「塔の……あぁ! あの仮面の奴か。俺も詳しくは知らないが、何でも生まれてすぐにここに連れてこられたらしいぜ。王国最大の禁忌らしいが……それ以上は分からん」
そう言いながら、看守長はこう付け足した。
「ダニエル、あんまりあの囚人に関わるなよ。じゃないとマール監獄長に目をつけられるぞ」
トロワ・マール監獄長は、監獄内でも恐れられた存在だった。
それは、囚人に限らず看守であろうとも規則違反は厳罰を持って処した。
「まぁ、深く関わりあわず。俺たちの仕事はそういうもんだ」