第十三節 一筋の希望 1-3
「くそ!」
徐々に迫り来る足音を背中に感じながら森の中をただ前に進んだ。
もし捕まれば、もう二度と出会う事が叶わないほど厳重な警備がなされるだろう。
これが最後のチャンスなのだ。
「逃げ切ってみせる」
松明に灯る忌々しい光の群れが、その数をどんどん増やしていく。
確実に追い込まれていく。
このまま逃げ回っても、いずれは捕まってしまうだろう。
時間がない。
無数の考えが頭の中を駆け巡る。
「水の音?」
それは、あまりにも無邪気な言葉だった。
「どこからか分からないけど、水が流れる音がする」
「水……!」
突然、思い出した。
「……そうだ!」
「どうしたの?」
「一度、王国から出よう」
水の音。
それはこの近くを流れるシリル川の音に違いない。
隣国との国境に使われるほど長大なシリル川だが、川幅はそれほど大きくない。
場所によっては歩いて渡れるまで狭くなる。
そういった場所には、たいがい国境検問所が設けられてあるのだが。
しかし、細くなったところ全てを賄いきれているわけではない。
国境さえ渡りきる事ができれば、追っ手はすぐに後を追うことはできない。
その間に身を隠す事ができるはずだ。
一筋の希望が見えた。
「行こう」
しずかに頷くアン。
「もうすぐだ。もう少しで川が見えるはずだ」
それは、もうあと僅かで手に入る。
そんな希望の光が微かに目の前に広がり始めた時だった。