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第十三節 一筋の希望 1-1
木の陰で息を潜める二人の姿。
ゆっくりと、ナイフを取り出すとダニエルは鉄仮面を固定する枷をゆっくりと叩いた。
長い間、アンの顔を覆っていた仮面はあまりにも呆気なくその呪縛を解く。
そこにはあの日、バースチ監獄の部屋で見たあの時の顔があった。
「……」
息を呑む。
目の前には、次期王位継承者と同じ顔を持つ少女が座っているのだ。
心が乱れないわけがない。
それでも先へと進むしかない。
「行こうか」
差し出したその手の先に柔らかな感触を感じながら、先の見えない道を見据えた。