24/36
第十節 失意と好機 1-3
いつぶりだろうか。
懐かしい町並みから少し離れたところにある威圧の象徴。
バースチ監獄所は変わらずにそこにあった。
その中には、幾度も上がった階段のある塔も見える。
「三日後……」
マール監獄長の退官を迎える。
マール監獄長らしく、退官の際には催し物もなく静かにバースチを去るそうだ。
その時が好機だった。
警備の人間を連れていようとも、常に道中で気を配り続けるのは難しい。
いずれは、どこかに油断が出来るだろう。
もう一度、二人で交わした約束を守るために……。