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第七節 仮面の理由 1-1
心に引っかかったものが気になって、ダニエルは三人の後を追った。
幸い、塔の中はマール監獄長が手に持つ蝋燭の明かり以外に光は無く、物音を殺して静かに様子を伺っていた。
マール監獄長の靴音が塔内に響く。
やがて、塔内の別の部屋の前で歩みを止めた。
重い扉を開く音が聞こえる。
二人の女性はその中に入っていった。
「それでは、明日一番に王宮に戻らなければなりませんので」
ダニエルの耳には、確かにそう聞こえた。
(王宮……?)
「わかっている。では、夜も遅いので私は失礼する」
マール監獄長の足音が、だんだんと遠ざかり聞こえなくなった。