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第六節 隠された素顔 1-1
「ここんとこ、毎日通ってんじゃないか」
北の館の厨房。
その日は、ジョンと二人きりだった。
「あぁ、日暮れになるとあれほど警備が手薄になるとは思っても見なかったからな」
「そりゃあな。あの塔はいわくつきで、誰も近づきたがらないからな。それに、忍び込む奴もいると思わない。だから、塔の二階の窓が壊れている事も誰も知らないんだ」
ジョンの言うとおり、塔の近くで伸びる木の枝越しに塔に侵入する事が出来た。
「しかし、あんたが何者なのか知らないが、何でこうも俺たちに協力してくれるんだ?」
今、こうしてアンと会えるのもジョンのおかげなのだが。
「気にするな。……ただのお節介者だよ」