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第五節 牢獄での再開 1-2
「合鍵はできた。しかし、どのようにして塔の中に入ればいいんだ」
その夜、ジョンから貰った鍵を見つめながら思案に耽る。
アンが囚われている塔は、四階からなる堅牢な建物だ。
入り口は、ただの一つ。
警備自体はそれほど厳しいものではないが、内部に入るには塔の中にいる看守を呼び中から鍵を開けてもらうしかない。
もちろん、その際には所属名を問われる。
もはや、看守の職から外されたダニエルには塔に入る権限はない。
「鍵はここにあるのに」
深いため息が漏れたときだった。
「何やってんだ?」
思わず、身構えるダニエル。
ここは、バースチ監獄所で働く者たちの寄宿舎の一室。
そこに存在してはいけない者が目の前に現れたのだ。
「なっ! お前、どうして」
「しっ! 声を出すなって」
ジョンは、口元に人差し指を当てると音を立てないように促した。
「今は、監獄の中にいるはずじゃあ」
「ここに、十七年もいるといろいろと分かってくる事があるんだよ」
得意そうな表情で話す。
「もう一つ、いいことを教えてやろう。あの塔は、一見すると扉以外に入り口は無いように思う。だがな……」