第四節 孤独の叫び 1-2
徐々に小窓から差し込む日の光が弱まってくる。
少女は、そうして夜が訪れた事を知る。
……夜
それは暗闇に包まれた世界。光が死に絶えたような孤独。
ただでさえ、明かりの少ないこの部屋で太陽のない時間はどれほどの恐怖か分からない。
視界に映るものなど何も無い。
外で揺れる木の葉の音が、まるですぐ傍で鳴っているように聞こえる。
遠くで獣の遠吠えが木霊している。
吹きぬける風が、まるで叫び声のように聞こえる。
それは、毎晩繰り返される事だ。
物覚えがついた頃から、少女は一人でこの暗闇の中を生きてきた。
ふと、少女は思う。
どのようにして、この恐怖を乗り越えてきたのかと。
今まで、数千回も繰り返してきた昼と夜の繰り返しの中。
少女は、無意識の内に自分の中に闇をも飲み込む孤独を作り出していたのかもしれない。
そうする事で、自分と暗闇との境界線を忘れていたのだと。
闇と同化してしまう事で、夜が生み出す暗闇を乗り越えてきたのだ。
でも、今は夜が怖い。
(……いいえ……違う)
一人が……孤独が心の底から怖いと思えた。
(なぜ?)
心の中で呟きながらうずくまる。
肩が小刻みに震えていた。
そう、それはあの時から始まった。
「ダ……ニ……エ……ル」
まるで、かみ締めるように喉の奥から振り絞り一文字ずつ口に出した。
あの看守との会話を始めてから。
そう、ダニエルとの短いけれど楽しかった時間を知ってしまったから。
「……会いたいよ」
仮面の下を、一筋の雫が零れ落ちる。
今日も、少女は涙を流しながら夢を見る。
夢の中ではダニエルに会えるかもしれないから。