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プロローグ
それは、今から遡ること数十年前になる。
その年、王妃の懐妊に国中が喜びに打ち震えた。
そして、王妃は一人の愛らしい女の赤子を産んだと記されている。
赤子は美しく育ち、後に国王に即位してその優れた手腕で国を治め、王国がもっとも輝いた時代を築いたとされている。
国民は、賞賛をこめて賢王ルイーズ十四世と呼び讃えた。
そして、賢王ルイーズ十四世は七十六年の生涯を王国に捧げ、最期は王子夫妻と孫に囲まれて穏やかなものだったと伝わっている。
しかし、賢王ルイーズ十四世が王国を統治している間、彼女の知らぬところで一人の名も無き囚人と若き看守のあまりにも悲しい物語が紡がれていた。