表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

学級会で立ち回れ

「じゃあ今から学級会を始めるぞ」


 高校生活2日目もあと一時間で終わりだ。朝から退屈なオリエンテーションが2時間続いたが、ここからは俺の大仕事だ。


 来週末に控えている球技大会。その説明とクラスの方針決定を俺と間宮は任されているのだ。


「球技大会についての基本説明は既に古城先生からさっきされてるよな。来週の金曜日、グラウンドと体育館で開催されるイベントで男子はサッカーとバスケ、女子はバスケとバレーで八クラスのトーナメントをやってもらう。午前が男子サッカーと女子バスケ、午後が男子バスケ、女子バレー。


 ここまでは良い?」


 俺が先程クラスに向けて行われた古城先生の説明を繰り返すと、まばらだが頷いて反応を返してくれるクラスメイトの姿が見えた。次に進んで良いっぽいな。


「じゃ、間宮。こっからは一旦よろしく」


「オッケー。じゃあ、みんなまず練習について聞いてください。


 ウチのクラスは隣のB組と合同で練習をすることになってて、月曜から木曜まで毎日放課後に任意で練習をします。月曜日は男子サッカーと女子バスケ、火曜日は男子バスケ、水曜日は男子サッカーと男子バスケ、木曜日は女子バレー。


 参加してくれる人は多ければ多い程良いので、できれば自分の出る種目の練習がある日は空けておいてくれると嬉しいです」


 間宮の説明が終わり、俺の方も準備が整った。ここで件のアンケートを使うとしよう。


「次は出場種目を決めるぞー。今からプロジェクターで映すQRコードを読み込んでフォームのアンケートに答えてくれ。


 種目の経験者はなるべく主力で使いたいから、練習にも尚更参加してもらいたい。このアンケは出場希望の種目とスポーツ経験の有無、経験がある場合はやってたポジション、それと自信の程を聞くものになってる。


 回答よろしく」


 そういえば今さっき先生に教えてもらったけど、回答の匿名性ってフォームの主相手には保たれないらしいから昨日の俺の作戦全部無意味だったっぽいな。


 マジで恥ずかしい。間宮が機械に詳しくなくて助かった。バレたら軽く死ねる。


「さて、そういえば俺達も回答しないとな」


「そうだね」


 フォームのQRを読み込んで、質問に一つずつ答えていく。


「間宮ってちなみにスポーツ経験とかは?」


「中学の頃は生徒会だったから、部活には入ってなかったんだ。最初は文芸部に入ってたんだけど、生徒会に入ってからはあんまり顔も出せなくなっちゃって」


 なるほど、生徒会か。確かに似合いそうだ。高校でも生徒会に入ったりするんだろうか。その場合は俺も生徒会にスカウトされたりしたいところだな。ラノベあるあるの生徒会ノリを体験できるせっかくの機会だし。


「桐野君はスポーツの経験ってあるの?」


「俺はアメリカにいた時から数えて5年バスケやってるよ。部活は中2の途中で辞めちゃったし高校ではやるつもりなかったけど、こういうイベントがあるなら一肌脱がないとね」


 そう、俺は普通にスポーツできちゃう系オタクなのだ。アメリカにいた時通っていた学校では地区大会で優勝して地元の大学に呼ばれてエキシビジョンの紅白戦をしたりもしたし、バスケの実力にはかなり自信がある。少なくとも未経験者がほとんどの球技大会において敵は少ないだろう。


 サッカーの方はそこまで得意な印象は自分に対して持っていないけど、運動神経は悪くないから本番でも悪くない活躍はするだろう。サイドバックとかやってそこそこのクロスを何回か上げれれば上出来ってくらいだ。


「経験者なんだね。ってことは皆川さんとは気が合うんじゃない?」


「確かにさっきも話してたけど、皆川とは結構話が合う感じがするな。趣味も似てるし、向こうも俺に興味持ってくれてるみたいだから話しやすいし」


 彼女は聞き上手だから、俺の方も楽しくなってどんどん話してしまうからな。それでも嫌な顔一つせずに聞いてくれるし、本当に良い子だ。


「っと、全員揃ったみたいだな。集計するか」


「そうだね。えーっと……男子はバスケ経験者が2人、サッカーが3人。ちょっと心許ないね」


「まあ、なんとかするしかない。女子の方なんてバスケもバレーも一人ずつだからな。まずは形にするところから始めないといけなそうだ」


 割合としては妥当な気もするけどな。あと普通に男女15人ずつしかいないクラスの人数がだいぶ少なめなのもある。


「希望と自信の感じを元に一旦バスケとサッカーのメンバーを今日中に決めておくから、帰ったらクラスルームを確認してくれ。あとは、月曜日の体育の授業で体力測定があるからもし各々の自己認識に齟齬がある場合はそこで調整しよう」


 さて、こんなもんかな。否定的な色の視線も特に感じないし、上手くいったんじゃないだろうか。






 その日の放課後。俺は教室に間宮と共に残ってとある2人に協力を頼んでいた。その2人というのは……


「もちろん、2人の頼みなら何でも聞くよ! 任せて!」


「えー、俺も……?」


 体育委員の皆川とその相方のタコ、乾である。この二人にはB組との合同練習のまとめ役を俺達と共にやってもらうつもりなのだ。


 これはスポーツ経験に乏しい間宮の提案で、自分には分からない経験者の視点から全体に気を回せる皆川のヘルプが欲しかったというのが理由だそうだ。タコはおまけ。


「2人とも、よろしく頼む」


「引き受けてくれてありがとうね」


「全然、お安いご用だよ!」


「俺は……」


「ね、乾!」


「……」


「ね!」


「……はい」


 皆川、あんまり圧をかけないでやってくれ。乾が可哀想になってくる。いや別に可哀想じゃないか。だって元々は皆川に体育委員を押し付けようとしてカウンター食らったタコのせいだし。


「じゃあさ、LINE交換しようよ! 昨日できなかったからさ、今日交換できないかなってさっきからずっと思ってて。はい、これ私のQR。読み込んでよ!」


 皆川のそんな提案で、この場にいる全員でLINEの交換をすることになった。


「2人とも漢字で奏助、京子なんだねー。なんか真面目、委員長! って感じだ」


「皆川はカタカナなんだな。マキ、って」


「なんかそっちの方がしっくりくるんだ。真実の希望って書いて真希、ってなんか荷が重くてそんなに自分の名前の漢字が好きじゃなくて」


 それ言うなら俺の母さんなんて真実の美で真美だぞ。別に名前負けなんて気にすることじゃないって。


「で、乾は……アルファベットか。まあ俺も一時期そうしてたからわかるけど」


 綾人、って下の名前が本人のキャラに反して無駄にカッコいいからか少しイタめなアルファベット表記が様になっているのが少し腹立つな。俺SOSUKEだから字面がダサくてアルファベット表記なんかできねぇよ。これがちょっと変わってSASUKEだったらカッコよかったのに。アメリカいた時なんて初対面の相手にソスーキーって呼ばれてたぞ俺。


「とりあえず、これからよろしく頼む。こんな俺だけど、よかったら仲良くしてくれ」


 この2人は、これからの俺の目標達成の為には不可欠な存在だ。是非とも一緒に楽しく高校生活を送っていきたい。


「これからよろしくね桐野君、間宮ちゃん!」


「ああ、よろしく!」


「よろしくね!」


 この間、タコ発言無し。


「おい乾、何か返事してくれよ……凹むぞ俺」


「あ、桐野君。コイツすぐ拗ねてエロ動画見始めるから今何言っても何も返ってこないと思うよ。だから放っておいて帰ろうよ。一緒に」


 相変わらずブレないなコイツ……


「あはは……じゃあ帰ろっか」


 全力で呆れる間宮と、もう完全に諦めているのか平然と帰り支度を始める皆川の対応の差が面白いな。このエロダコの取り扱いに関してはプロと言える。


「ほら、帰るよ乾。えいっ!」


「ぐほっ!」


 エロの世界に誘われたエロダコを現実に引き戻す皆川の空手チョップが炸裂し、聞いたことのない声を出して正気に戻った乾は背筋をピンと伸ばしてそそくさと帰り支度を始めた。皆川が怖くて背筋が張ってるんだろうけど、背筋ピンピンの状態で支度してるせいで普通に支度するより遅くなってるのが余計に面白いな。


 何ていうか、本当に見ていて飽きない。きっと今後もこんな一幕をたくさん俺に見せてくれるんだろうな。今からこの先の高校生活が楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ