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初めての共同作業

1話の文章を少し後に回して、2話以降を1話ずつ繰り下げる編集をしたので前回の話も新しい話に変わってます。昨日までに4話まで読んで頂いた方は是非前回に戻ってそこから読んでください。よろしくお願いします。


新規の読者の方はそのままの順番で大丈夫です。

「それじゃあ、これから学級委員の仕事についての説明を始めるね」


風紀委員、保健委員、体育委員をそれぞれB、C、D組に向かわせた古城先生は、俺達のいるA組にD組までの学級委員を集めてきた。


その面々は真面目そうな雰囲気の男子もいれば運動部とギャルのコンビもいたりと様々で、この高校の生徒の多様性を改めて認識することになった。


自由な校風とは聞いていたけど、思いの外ギャルとかパリピが多い。


「まず、学級委員の仕事は基本的には日直に欠席がいた時の手伝いと学級会の司会、それとイベントがある時にクラスの代表として色々とやってもらうこと、この3つがメインだよ。


初仕事は、新入生がクラス対抗で競い合う球技大会。一週間後の金曜日にあるから、明日から数えて準備にはちょうど7日間しか使えない。毎年一年生の学級委員はここが一番大変だから頑張ってね。


練習場所と時間の相談を後でここにいるみんなでしてもらうから、それが終わったら帰っていいよ」


おいおい、いきなりデカいイベントかよ。球技大会、俺の中学には無かったけど実際どんなもんなんだろうか。


「各クラスで色々と決めてもらうことがあるから、今日はこれから明日の3限目にある学級会の準備をしてもらうね。


出場種目についてのアンケートの作成を毎年、学級委員に任せることにしてるんだ。他のクラスの委員の子と協力してもいいし、内容は公序良俗に反する質問じゃなきゃ自由。君達の最初の腕試しの機会だよ。


じゃあ、今からアンケート用紙作成の原稿を配るからそこに質問の内容と選択肢を、記述の場合は記述って書いておいてね。後で先生が4クラス分をそれぞれフォームにして明日の学級会でみんなに答えてもらうから」


なるほど、さっきオリエンテーションでクラスルームのウェブサイト入ったりしたしハイテクなんだな最近の高校は。首都圏じゃこれくらい当たり前なんだろうけど俺の中学はアナログだったからな。ちょっと驚いた。機械に意外と弱い俺にはちと厳しい役回りだったかもな。


未だにパソコンの使い方わからんし。タブレットとスマホは詳しいけどフリック入力に慣れずにずっとローマ字入力を使ってる。オタクにしては機械知識が足りないのだ、俺は。


「で、種目なんだけど男子はサッカーとバスケットボール。サッカーは全員ベンチに入ってもらうし、バスケも15人の内12人はベンチ入りするよ。ポジションとか、スタメンかどうかみたいな所をアンケートをもとにして決めてもらうからその辺を聞ける質問にしてね。


女子はバレーボールとバスケットボールで、バレーは10人、バスケは12人だから両方出れるのは七人。希望者が多かったらそこは相談で決めてもらってね。


じゃあ、作業開始! しばらくしたら練習場所の相談に移るからそれまでになるべく決めておいてね」


さて、アンケート作成を始めるか。


まず、男女問わず経験者は全員炙り出しておいた方がいいよな。ポジションまで聞ければ御の字。その辺を書きやすいように心理誘導できればいいけど。


「ってことで、俺は策が無い。間宮は何かある?」


「頭脳派でしょ…? 何か無いの?」


まだ俺の頭脳派設定って生きてたんだ。そろそろ忘れてるかと思ってたぞ。


「経験者がどれだけいるのかとそいつらのポジションを聞ければいいんだろ? それなら一応策はあるんだけど。


まず、全部の質問を記述にするべきかな」


「どうして?」


「質問の回答を記述式にして、匿名性を無くすべきだ。そうすれば誰がどの種目に出場希望で、誰が経験者でどのポジションなのかがすぐわかる。はい、いいえで答えられる質問だって、記述式にして回答の最後に自分の名前を書かせればいい。


多少抵抗はあるだろうけど他全員が律儀に名前書いたら消去法で自分の無回答がバレるんだ。この高校来れる頭の奴がそれに気づかず不記載をする訳がない。同調圧力に頼る部分はあるけど、これは実質的に回答の匿名性を半強制的に消せる方法なんだよ」


まあ、結構性格の悪いやり方だけどな。


「やっぱ頭脳派じゃん、桐野君。それじゃあどういう質問文にすればいいかな?」


「最初の質問文は経験のあるスポーツについて。自分の出る可能性のある種目の経験があるかを聞く。


次の質問文も強制回答にして、やってたポジションを書いてもらう。未経験勢には未経験だって書かせればいい。


で、その次の文で聞くのは出場希望種目だ。これはシンプルに第一希望と第二希望を聞けばいいだろ?


で、最後。自信のない奴らの出場はなるべく片方にする。逆に自信のある奴らを両方に出場させる為に十段階で自信の程を聞く。最初の質問文のところに、全ての回答の後に名前を書いてください、って書いとけば問題ないだろ」


「な、なるほど…こうやって色々と考えられるの、やっぱ凄いね。じゃあそれで作ろっか。


私ここに書いておくから、練習場所のこととか聞いておいてよ」


「了解」


こうして、アンケート作りは俺のアイデアが丸々採用される形ですぐに幕を閉じた。後に俺達が結婚したら初めての共同作業はこれになる訳だが、ちょっとあまりにもショボ過ぎるから記憶を消したい。






「先生、終わったんで練習場所についての話を先に聞かせてもらうことってできます?」


「お、もう終わったの? じゃあ先に説明しとくね。


まず練習場所はグラウンドと体育館、それとグリーンコートAだよ。A組からD組の練習場所はグラウンドの片側と体育館の片側、それとグリーンコートAになるね。その3箇所を4クラスで使うから、放課後に練習できる4日間の内一日は施設が使えない日があるって覚えておいてね。今回はどのクラスが何曜日にどこを使うか、っていうのを決めてもらうよ」


8クラスの練習を6クラス分の場所で4日で終わらせろって無理難題だろどう考えても。何がしたいんだ学校側は…


これ球技大会本番の連携とか毎年酷いんじゃないか? それを笑い話にしろっていう学校からのメッセージ? だとしたら酷ぇよ。


…いや、待てよ? 良い方法を思いついた。これを使えば本番までに十分な練習ができる。後で話し合いの時に提案してみるか。


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