元女神様との同居生活(2)
「―――それで、敵は一体どこにいるんでしょうか?」
シルフィは緊迫した表情で、きょろきょろと辺りを見回すが、ここは日本だ。
当然魔王なんていないし、魔物もいない。悪役に憧れた中二病はいるかもしれないが、そんなの放っておけば羞恥心で自ずと消えていく。
「まあそう慌てるな。今日はもう遅いし、シルフィも色々あって疲れただろ。」
「そうですか………分かりました。」
あの世界に飛ばされてから結構な時間が経っていたようで、街はすっかり夜の雰囲気になっていた。
「夕食できるまで時間かかるけど、どうする?先にお風呂にするか?」
「そんな、智也さん一人にお任せするわけにはいきません!私も手伝います!」
シルフィはきっと、責任感が強い子なんだろう。
その真剣な眼差しには、役に立ちたいという一心だけがまっすぐに宿っていた。
「分かった。じゃあ、ちょっとだけ手伝ってもらおうかな。」
「任せてください!こう見えても料理の腕は凄いんですからっ!」
相当自信があるのか、シルフィは小さな胸を張って腕を組んでいる。
果たしてこれは、期待していい……のか?
◇ ◇ ◇
「ふふーん。智也さん、これでもまだ私をぽんこつ扱いしますか?」
「これを一人で……?」
実はシルフィが、「私一人でできます!」と軽く戦力外通告してきたので、俺はレシピだけを教えて、お風呂掃除をさせられていた。
「ぶっちゃけ期待はしてなかったんだが………見直したぞシルフィ。ぽんこつ女神からドジっ子にジョブチェンジだ。」
卓上には、ご飯、お味噌汁、ハンバーグと、豪華な夕食が、それぞれ二セット並べられている。
………あれ、一セット消えた。
「そんなこと言う人は食べなくて結構です!」
シルフィはぷくーっとほっぺを膨らませ、不満を訴えてくる。
「ちょ、ちょっと待って!冗談だから!異世界ジョークだから!」
「やっと上手くいったのに……」
シルフィが、ボソッと独り言のように呟いた。
「ん?シルフィ、今なんか言ったか?」
「いえ、なんでもありません。それよりほら、馬鹿なことしてないで、いただいちゃいましょう。料理、冷めちゃいますよ?」
「………それもそうだな。」
そうして俺とシルフィは、お互いの世界について語り合いながら、楽しい夕食を過ごした。
夕食を終え、自室に戻ってきた俺たちだが、ここである問題が発生する。
その名も―――お風呂どっちが先に入るか問題。
先に入れば、シルフィにぬるいお湯を提供することになる。すなわち好感度ダウン。後に入ったもんなら、それこそ終わりだ。残り湯を堪能する変態野郎と思われてしまう。すなわち死。
つまり、どっちに転んでもバッドエンドってわけだ。
「な、なあシルフィ、お風呂、先に入るか?」
―――なら俺は、より自分に都合のいい方を選ばせてもらおう。
「私はどっちでもいいですよ?智也さんが選んでください。」
な、なに!?これは………試されている!?
くそっ!どうする、俺………!




