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欲するものはチート能力?スローライフ?──いいえ、自堕落な生活です。(2)

あの後俺は、魔方陣を量産し始めた彼女を、必死に抑え込めた。

そして、両者が冷静を取り戻したところで、本来の目的である情報収集に移る。


「………それで、なんで俺はこんなところにいるんだ?」


「……………っ、ここは、現世から、異世界へと人々を転生させる場所です。そして、幸運にもあなたは、その転生者の()()として選ばれました。」


おいおいまじかよ。見たことある展開だぞこれ。

この後は大体、魔王討伐とかチート能力付与の流れになるはずだが………


「そしてあなたには、魔王を倒してもらう───」


そうこなくっちゃ。仲間と協力して魔王を討伐する、男にとってこれほどまでにワクワクするものがあるのだろうか。


「───わけでもなく」


ん………?


「桁外れなチート能力で無双してもらう───」


そ、そうだよな。やっぱり異世界はチート能力で無双してこそだよな。

美少女がモンスターに囲まれているところに颯爽と駆け付け、敵を一掃する、色んな意味で最高だ。


「───わけでもなく」


………は?


「ごく普通の能力で、特に目的もなく、ただただスローライフを送ってもらいます!農業をしたり、編み物なんかしちゃったり。」


「オーケー、帰るわ。さっき転生者の候補とか言ってたし、まだ確定したわけじゃないんだろ?それならさっさと元居たところに戻してくれ。」


意気揚々と語ってる彼女には悪いが、農業はまだしも……編み物ってなんだよ。

そんなの家庭科の授業でできるだろ。


「……………へ?───ちょ、ちょっと待ってください!誰もが羨ましがるあの異世界に転生できるんですよ!?本当にいいんですか!?」


「うん。魔王討伐が目的とか、チート能力が貰えるとかならやってもいいと思ったんだけど────いや、やっぱそれも面倒だな。俺は家でアニメとかラノベ見ながら、ダラダラしてるほうが性に合ってるのかもしれない。」


「そ、そんな………」


やめて、そんなにしょぼくれないで。

多分俺なにも悪くないのに、罪悪感芽生えてくるから。


「………わ、分かりました。それでは、少し残念ですが、あなたを元の世界に戻すことにします。すみません、突然こんなところに呼んでしまって。」


「謝んなくていいよ。色々あったけど、なんだかんだおまえとの時間すごい楽しかったし。」


「っ──────!!………きゅ、急にそういうこと言わないでください、反応にこまります!」


きゅ、急にそういう反応しないでください、好きになっちゃいます!

手で顔を覆う仕草も相まって、破壊力は抜群である。


「───そ、それじゃあ転送しますので、そこでじっとしていてくださいね。」


「りょーかい。あ、最後に名前だけ聞いてもいいか?」


彼女は、両手を俺の足元に向けて、詠唱し始める。

と共に、俺の足元に白い魔方陣が浮かび上がってきた。


先ほどの鬼の形相とは違い、今回は少しばかり悲しげにも見える。


「そういうのって最初にやることじゃないんですか?………まあいいでしょう。私の名前は、女神シルフィ───シルフィと呼んでください。───名乗ったんですから、あなたもお願いしますね?」


「俺は、川崎智也。よろしく………じゃないか。───じゃあな、シルフィ。」


「はい!さようならです、智也さん。」


そう挨拶を返すシルフィの笑顔は、まさに女神と呼ぶに相応しいものだった。

眩しくて、可愛くて、おっちょこちょいな面もあって。


俺が、シルフィとの出会いに思いふけっていると、突然明るい光に包まれ………!──────なかった。


「あ、あれれ?おかしいですね………」


「どうしたんだ?」


「そ、それが………転移魔法が上手く発動しないみたいなんです。」


………おいおい勘弁してくれよ。

せっかく感動的な別れ方で終われそうだったのに。


「え、俺もしかして帰れないの?異世界で農業と編み物して一生終えるの?そんなの嫌なんですけど。」


「だ、大丈夫ですよ………………たぶん。ちょっと確認するので、そのまま動かないでいてくださいね。」


こ、こいつ………いざという時のために、保険かけやがって。


シルフィはそのまま、魔方陣をチェックするべく、俺の方に歩み寄ってきた。

そして、魔方陣を指でなぞり始める。


「うーん………特におかしいところはないですね。」


「詠唱の仕方、どこか間違ってたんじゃないのか?」


「マニュアル通りにしましたし、合ってるはず、です………」


あ、マニュアルとかあるんだこの世界。なんか萎える。


「後半にいくにつれて、だんだん自信なさげになっていってるのが気になるが………まあいいか。もう一回そのマニュアルとやら思い返してみろ。」


「と、言われましても………………あっ──────!!」


「なんだ!?思い出したのか!?」


「はい!詠唱の最後に『ルミナ・シフト』って言わないといけないんでした!私ったら、すっかり忘れててました。」


なんだ、そうだったのか!よかったよかった!

………………ん?いや待てよ?───おいバカ!今それを言ったらどうなるか──────


「え………?」


「ばかやろおおおおおおおおおおおお!!」


俺が止める間もなく、俺とシルフィは明るい光に()()()()()()()()………



ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

次回からはいよいよ現実世界編に突入します。


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