表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

狙撃ポイント:職員室前廊下。障害物:王子の無駄口。

ターゲットの動向を探るため、昼休みの校内巡回。

それはあくまで任務――だったはずなのだが。


「おや、また巡回? まさかレイナさん、校内セキュリティでも担当してるの?」


声の主は案の定、氷堂レン。持っていたスプーンをカッププリンに刺した状態で、私の前に現れた。

どうやら昼休みにも“甘さ”への対処能力が低いらしい。脳までやられているのかもしれない。


「歩いてるだけよ。あなたのように無駄に存在感を振りまいていないだけ」


「なるほど。じゃあ僕の存在は“騒音”ってこと?」


「騒音にはまだ機能性がある。あなたは……壁紙に文字が書いてあるみたいなタイプね」


「それ、日替わりで内容変わるならちょっと面白いけど?」


「飽きる以前にまず剥がしたいわ。視界の治安が悪いから」


彼は笑って肩をすくめた。“言われ慣れてる笑顔”。

そう、そこが面倒なのだ。普通の相手なら怯む言葉も、彼はスルー力をデフォルト装備している。


(こういうタイプは、感情の揺さぶりでは削れない)


だから私は逆に、“淡々と突き放す手法”に切り替えている。


「それにしてもさ。君って、誰にでもそういう感じなの?毒舌通過率、高すぎない?」


「あなたのように“反応速度最速で脳が口を超えてるタイプ”が相手だと、抑えようがないだけ」


「じゃあ少し、間を置いてから喋ってみようかな。……(間)……どう?」


「それで知性が上がったと思うのならおめでとう」


「いやー、やっぱ好きかもしれない、この会話」


(なぜ喜ぶ)


---


休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴ると、彼はすんなり私の横に並んだ。


「一緒に戻る?」


「どうせ席が隣なのだから、分ける意味がある?」


「そう言うと思ってた! うん、なんかもう君の台詞、手のひらに書き込んで持ち歩きたい」


「“祟り神に祈願メモ”でも作るの?」


「ネーミングセンスすら地味に刺さるからやめて」


---


階段を上がる間、私はふと考えていた。

彼との会話に感情は揺れない。だから平静も保たれている。


だが。


この“無害に見せた接近”、やはり性質が悪い。

日常に紛れながら、徐々に侵食してくる。

それが、最も面倒なタイプの存在――

“削れない相手”という点において。


(排除対象としては、十分過ぎる資質)


76日後、確実に任務は果たす。

だがそれまでに、私の語彙が尽きないことを祈るばかりだ。



彼を殺すまで残り76日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ