解析と実験の日々
それから数ヶ月‥‥
善輝は、自分が落ちてきた場所の近くに簡易的なログハウスを建て、そこを拠点にしていた。 周囲の森はすでに彼の実験場と化していた。
彼は狩った魔物を解剖し、体内の魔石(エネルギー器官)を摘出。
それを顕微鏡代わりの魔法(光の屈折率操作)で観察し、自身の体内にある「神の因子」との違いを分析していた。
(魔物の魔石は、大気中に漂う未知のエネルギー粒子を取り込んで循環させる臓器の様なものらしい。対して、俺の中にある『神の因子』は……超高密度の自律発電炉と言ったところか?)
ナイフで薄く削いだ木の板(木簡)に、複雑な化学式と魔法陣の図形がびっしりと書き込まれていく。
・重力制御:引力のベクトル操作で再現可能。
・空間転移:座標指定と質量の分解・再構築が必要。まだリスクが高い。
知識が増えるたび、善輝の生存能力は飛躍的に向上していった。襲いくる魔物は、もはや食料か実験材料でしかない。
だが、孤独だった‥‥会話する相手はいない。
時折空を見上げては、ここが地球から遠く離れた場所であることを痛感させられる。
(ここに来て、もう数ヶ月が経ったか……。)
善輝は、ギリッと奥歯を噛み締めた。
地球滅亡まで、あと10年。そのカウントダウンは今も止まることなく進んでいる。
ここで足踏みをしている間に、取り返しのつかない時間が失われているのではないかという焦燥感に襲われる時がある‥‥
(あのネットカフェでの告発も……恐らく、無駄だったんだろうな)
書き込んだ瞬間に削除され、回線も切られた‥‥
誰の目にも触れず、ただの妄言として闇に葬られたに違いない。俺は何も残せず、ただ「消された」だけだ。
「……考えるな。手を動かせ」
善輝は首を振り、弱気な思考を振り払った。
たとえ誰も知らなくても、俺だけは覚えている。必ず戻って、あいつらに思い知らせてやる。
俺たちがただの「消せるゴミ」ではなかったことを。
今はただ、爪を研ぐしかない‥‥。




