サバイバルと解析
女神の光が消え、再び森に静寂が戻った‥‥
善輝は、自分の右手をまじまじと見つめた。
欠損していたはずの腕がある。だが、皮膚の色は白磁のように突き抜けた白さに変わり、血管には赤い血ではなく、淡い金色の粒子が流れているのが透けて見えた。
「……生物学的な『ヒト』は卒業したってわけか」
善輝は地面の石を拾い上げ、握りしめた‥‥
軽く力を入れたつもりだった。だが、石はパンッという乾いた音を立てて砂利に変わった。
筋力というより、触れた物体への「干渉力」が異常に高まっている。
(あの女神は『神力』と言ったが……要はエネルギーだ。熱力学の法則が通用するか試すか)
善輝は指先を突き出し、イメージした‥‥
魔法使いのように「火よ出ろ」と念じるのではない。
空間内の酸素分子を集め、圧縮し、摩擦熱で発火点を超えるプロセスを構築する。
「酸素濃度上昇、圧縮、点火」
パヂィッ!!
指先から放たれたのは、焚き火のような優しい炎ではなかった‥‥
青白く輝く、数千度のプラズマの槍。
それが一直線に伸び、目の前の巨木を幹ごと貫通して炭化させた。
「……出力係数がバグってやがる。だが、理論(ロジック)は通る」
善輝の口元に凶暴な笑みが浮かんだ。これならいける‥‥
この世界の「魔力」という未知の変数を、地球の「物理法則」という数式に代入すれば、俺は誰よりも効率的にこの力を支配できる。
あいつらの計画では、移住船の出発は5年後だ。
この世界の時間の流れが地球と同じかどうかは分からない、もっと早いかもしれないし、遅いかもしれない。
「だが、どれだけ時間があろうと関係ない。1分1秒も無駄にはできない」
この力を解析し、あいつらを殺すための「断頭台」を作り上げる。たとえ明日あいつらが来たとしても、必ず殺せるように。
「やってやるよ。まずは衣食住の確保からだ」
元科学者の、狂気じみたサバイバル生活が始まった。




