星を直す者たち
太陽系、地球近傍宙域‥‥そこには、口を開けた絶望――太陽の30倍の質量を持つ超巨大ブラックホールが迫っていた。
重力波の影響で地球の地軸は歪み、地表では天変地異が頻発している‥‥もはや、地球をどこかへ「転移」させたところで、太陽系そのもののバランスが崩壊している以上、滅びは免れない。
そこに、二つの光が舞い降りた。
「……ひどい有様だな」
「でも、まだ間に合います」
光の姿となった善輝と結衣は、絶望の淵にある青い星を見下ろした‥‥ブラックホールを消すだけでは足りない、狂ってしまった惑星の軌道、太陽の活動サイクル、それら全てを「正常」な状態に書き換える必要がある。
「やるぞ、結衣、俺たちの全ての『存在』をエネルギーに変換して、この宇宙の理を修理する」
「はい。……怖くはありません。あなたと一緒なら」
善輝と結衣は手を取り合った‥‥二人の魂が共鳴し、無限の魔力が溢れ出す。
「因果再構築!!」
瞬間、宇宙が白一色に染まった‥‥それは破壊の光ではない。再生の光だ。
光はブラックホールを飲み込み、その強大なエネルギーを逆変換して、太陽系全体へと還元していく。ズレた軌道が修正され、荒れ狂う太陽が鎮まり、地球の大気が浄化されていく。
その代償として‥‥善輝と結衣の体は、指先から徐々に透明になっていった。 神の力だけでなく、魂そのものを燃やし尽くす、それは「消滅」を意味していた。
「善輝さん……」
「ああ……。綺麗だな」
二人は、正常な姿を取り戻していく地球を見つめ、微笑み合った‥‥もう、言葉はいらなかった。
最期の瞬間、二人は強く抱き合い、そして一つの光となって弾けた‥‥。
宇宙から、ブラックホールが消えた‥‥地球には、穏やかな朝日が昇り始めていた。
だが、誰も知らない‥‥たった二人で、世界を救って消えた恋人たちのことを。




