真神覚醒
宇宙空間が、黄金色に染まり‥‥時間が停止した――いや、善輝の意思によって「止められた」。
光の中から現れたのは、もはや人間ではなかった‥‥全身が純粋なエネルギー体となり、背には銀河を模した翼を広げた存在‥‥「真の神」‥‥への覚醒。
善輝は、静止した時間の中を歩き、崩壊寸前の結衣を抱き留めた。
「……よく頑張ったな」
善輝が指先で彼女の頬に触れる‥‥それだけで、ひび割れた肌が修復され、抜け落ちた髪に色が戻り、砕け散ろうとしていた命が逆再生されるように蘇っていく。事象の改変、因果律の逆転。
意識を取り戻した結衣が、目を見開いて善輝を見る。
「神代……さん? その姿……」
「待たせたな。……」
善輝は目の前で静止している漆黒の球体に視線を向けた‥‥
かつて自分を飲み込み、今また愛する人を奪おうとした絶望の象徴。
だが、今の彼にとって、それは恐怖の対象ですらなかった。
「消えろ(デリート)」
善輝がそう呟き、軽く手を払った‥‥轟音も、爆発もなかった。
ただ、物理法則が書き換えられ、ブラックホールという現象そのものが、宇宙から「無かったこと」になった。
さらに善輝は、遠くに浮かぶ地球軍の残存艦艇を見渡した。
「お前たちもだ。俺の庭に、害虫は要らない」
視線を向ける‥‥それだけで、数隻の宇宙戦艦が塵になることすら許されず、存在ごと消滅した。圧倒的で、絶対的な力の行使。
宇宙に静寂が戻った‥‥善輝は元の姿――しかし、その瞳には人智を超えた光を宿したまま――に戻り、結衣を強く抱きしめた。
「……もう二度と、君を離さない」
「はい……。はいっ……!」
結衣は善輝の腕の中で、安堵の涙を流した‥‥
完全なる勝利‥‥だが、彼らにはまだ、最後の仕事が残されていた。
彼方の宇宙で、黒い太陽が‥‥今も地球を飲み込もうと口を開けていたからだ‥‥。




