絶望の再来
ゴォォォォォォン……!
空間が悲鳴を上げた‥‥文本の体が、ねじれるように空間ごと引き裂かれ、瞬時に飲み込まれた。
だが、それは始まりに過ぎなかった‥‥
ブリッジの中央に、漆黒の球体――ブラックホールが出現した‥‥それは猛烈な勢いで周囲の物質を飲み込み、急速に拡大していく。
「馬鹿な……! ここでブラックホールだと!?」
善輝は床に踏ん張ったが、強烈な潮汐力に体が浮き上がる‥‥まずい。
この距離では、魔導障壁を展開する前に飲み込まれる‥‥いや、それだけではない、このまま成長すれば、直下にある首都「ネオ」も、この惑星自体も飲み込まれてしまう!
「くそっ……!」
善輝が全魔力を解放しようとした、その時だった。
「させないっ!!」
結衣が飛び出した‥‥彼女は善輝を背にかばい、ブラックホールの目の前に立ちはだかった。
「立花!? やめろ! 戻れ!」
「守ってみせます! ここは、私たちの『家』だから!」
結衣は背中から光の翼を展開し、全身の魔力を前方のシールドに集中させる。
「戦乙女の封印!!」
彼女は、発生したブラックホールを自分の魔力障壁で「包み込んだ」のだ‥‥外へ広がる重力を、内側へ押し返す。それは、発生し続ける無限のエネルギーを生身で抑え込む自殺行為だった。
「ぐ、うぅぅぅぅ……ッ!!」
結衣の口から血が噴き出す‥‥ミシミシ、と全身の骨が軋む音が響く。
重力の乱流が彼女の体を蝕み、銀色の髪が白く抜け落ち、肌が陶器のようにひび割れていく。
「やめろ立花! お前の出力じゃ耐えきれない! 離れろ!」
結衣は崩れゆく体で、必死に微笑んだ。
「神代さんが作ったこの国を……私の両親が生きた証を……絶対に、守るって……」
パリン。 シールドに亀裂が入った‥‥抑えきれない漆黒の闇が、結衣を飲み込もうと牙をむく。
「神代さん……大好き……でした……」
彼女の姿が、光の粒子となって砕け散りそうになる。
「いやだ……。嫌だ嫌だ嫌だ!!」
善輝は絶叫した‥‥またか。また俺は、大切なものを「ブラックホール」に奪われるのか。
あの時と同じ、理不尽な暴力に、ただ屈するしかないのか‥‥復讐を果たしても、神の力を手に入れても、結局俺は何も守れないのか。
(ふざけるな……!)
(理不尽なんてクソ食らえだ。運命が彼女を殺すというなら……!)
善輝の中で、何かが弾けた‥‥女神から与えられた「借り物の因子」ではない。彼自身の魂の奥底から、原初の光が噴き出した。
(俺が、その運命を書き換えてやる!!)




