断罪の時
宇宙空間‥‥旗艦『ノア』のブリッジ。
轟音と共に、厚さ50センチの隔壁が紙のように切り裂かれた‥‥。
「な、なんだ!? 何が入ってきた!?」
文本が腰を抜かして後ずさる‥‥
煙の中から現れたのは、転移魔法で直接乗り込んできた善輝と結衣だった。
「よお、文本‥‥直接会うのは久しぶりだな」
「く、神代‥‥!?」
「それに立花結衣もいるぞ‥‥お前たちがテロリスト扱いして殺そうとした、ただの女子大生だ」
結衣が銀色の髪をなびかせ、氷のような瞳で文本を見据える‥‥その手には、白銀の剣が握られていた。
「ひ、ヒィッ……! 待て、待ってくれ神代君! 話せば分かる!」
文本は這いつくばり、善輝の足元にすがった。
「わ、我々は人類の種を残すために苦渋の決断をしたんだ! 決して私利私欲では……!」
「苦渋の決断、ね」
善輝は冷ややかに見下ろした。
「なら、なぜその船にはキャバクラ嬢や高級ワイン、ゴルフセットが満載されているんだ? 種の保存に必要なのか?」
「そ、それは……文化の継承というか……」
「嘘をつくな!!」
結衣の怒号が響いた‥‥彼女は剣を突きつけ、涙を浮かべて叫んだ。
「私の両親はあなたたちに殺されたのよ! ……文化? 種の保存? ふざけるな! あなたたちはただ、自分たちが贅沢をするために70億人を殺そうとしただけじゃない!」
「わ、 私を殺せば、地球を救う手立てがなくなるぞ! 我々の科学力があれば……」
「ハッ、まだそんなことを言っているのか」
善輝は憐れむように笑った。
「お前たちの科学力? ……おい、窓の外を見てみろ」
「え……?」
文本が恐る恐る窓を見る……そこには、信じられない光景が広がっていた。
破壊された地球艦隊の残骸を、魔導国の作業用ゴーレムたちが、まるで「粗大ゴミ」でも回収するかのように鷲掴みにし、解体しているのだ。
「お前たちの最新鋭艦は、我が国では『資源ゴミ』扱いだ。中のレアメタルくらいは再利用してやるよ」
「そ、そんな……。我々の5年が……人類の叡智が……ゴミだと……?」
「ああ。お前たちが5年寝ている間に、俺たちは50年進んだ。……お前たちに利用価値はない」
それが、決定的な死刑宣告だった……プライドも、地位も、科学力も、全てを否定され、文本は絶望に顔を歪めた。
「終わりだ、文本‥‥地獄で詫び続けろ」
善輝が右手をかざす‥‥死刑宣告。
だが、その瞬間‥‥這いつくばっていた文本が、狂ったような笑い声を上げた。
「……ク、ククク。終わり? 誰が? 私が?」
文本の目が、狂気で見開かれた‥‥彼の手には、赤いボタンがついた起爆装置が握られていた。
「終わりにするのは私だ! 貴様らも! この星も! 全て道連れだ!!」
「まさか……!?」
「我々が手に入らない星なら、誰にも渡さん! 味わえ! 地球を飲み込もうとしている絶望と同じ味をなぁ!!」
文本がボタンを押した‥‥瞬間、ブリッジ中央の「縮退炉」が暴走した。
自爆ではない‥‥エネルギーを一点に凝縮し、人工的な特異点を生成する禁断の兵器‥‥「ブラックホール・ジェネレーター」の起動だった。




