歓迎の挨拶
地表‥‥神聖魔導帝国、首都『ネオ』。
上空を覆う巨大な影に、国民たちは動じることなく、ただ静かに空を見上げていた。
彼らは知っていたからだ‥‥自分たちの皇帝陛下が、この日のために牙を研ぎ続けてきたことを。
「主。敵艦隊、完全に油断しています。こちらの『認識阻害結界』に気づいた様子はありません」
「だろうな。あいつらは人を見下す天才だからな」
善輝はこの50年、ただ都市を作っていたわけではない‥‥いつ敵が来てもいいように、都市全体を覆う巨大なカモフラージュを展開し、「未開の惑星」を演じ続けていたのだ。
「そろそろいいだろう。……偽装解除。本当の姿を見せてやれ」
善輝が指を鳴らす‥‥瞬間、世界が震えた。
上空から見下ろしていた文本たちは、我が目を疑った‥‥
眼下の森が、突如としてノイズのように揺らぎ、霧散したのだ。そして現れたのは‥‥。
『な、なんだこれは!?』
森だと思っていた場所には、天を摩する摩天楼が林立していた‥‥
小屋だと思っていたものは、巨大な魔導砲台だった。
夜の闇を払うように、都市全体が青白いマナの光で輝き出し、その文明レベルが地球のそれを遥かに凌駕していることを無言で物語っていた。
『け、計測班! なにが起きている! 中世レベルではなかったのか!?』
『わ、分かりません! 突然、巨大都市が出現しました! エネルギー反応、測定不能! こ、こんなバカな……!』
パニックに陥る艦橋‥‥その混乱を切り裂くように、全てのモニターに善輝の顔が割り込んだ。
「――ようこそ、お客様。随分と時代遅れな船に乗っているな」
『!? な、なんだ貴様は! 回線に割り込んで……!』
艦橋の文本たちが狼狽する様子が、モニターに映し出される。善輝は薄く笑い、カメラに向かって手を振った。
「久しぶりだな、文本。5年ぶりか? ……ああ、俺にとっては50年ぶりだが」
『その声……まさか、神代か!? バカな、貴様はブラックホールに落ちて死んだはずだ!』
文本の顔が驚愕に歪む。その反応を見て、善輝の瞳が冷徹な「魔王」の色に染まった。
「地獄の底から這い戻ってきたんだよ。お前たちを裁くためにな」
『裁くだと? たかが一人の研究員崩れが、我々軍隊に勝てるとでも……!』
「軍隊? ……ああ、そのブリキのおもちゃのことか?」
善輝の言葉に文本は震える声で吠えた‥‥
認めるわけにはいかなかった。自分たちが「猿」と見下していた相手が、自分たちより優れているなどと。
『攻撃だ! 全艦、攻撃開始! 地上の都市を焼き払え! ハッタリごと消し炭にしてやる!』
善輝が冷ややかに鼻を鳴らす。
「ハッタリかどうか、その身で確かめるといい。……立花、やってやれ」
善輝の命を受け、結衣が一歩前へ出る‥‥彼女はマイクに向かい、かつて泣き崩れた少女とは思えない、凛とした声で宣告した。
「魔導航空艦隊、発進!。……私の両親を殺した罪、その命で償ってもらいます」




