国家の陰謀
※登場する人物、地名、団体名等はすべて架空のものです。実在のものとは関係ありません。
また、作者は専門的な知識は無く、インターネット等で調べた程度です。その為、矛盾等があるかもしれませんが、ご理解ください。
教授がスマートフォンの通話ボタンを押そうとした、その時だった‥‥
背後の重厚な電子ロック扉が、許可証の認証音もなく、無音でスライドした。
振り返った善輝の視界に入ってきたのは、漆黒のスーツに身を包んだ男達だった‥‥
胸元には、見慣れない政府機関のバッジが鈍く光っている。
「な、何だ君たちは! ここは国立の――」
『神代善輝、および佐久間教授ですね』
先頭に立つ男が、感情のない声で告げた‥‥
男の後ろからさらに数人の武装した男達が雪崩れ込んでくる‥‥彼らの手には、明らかに暴動鎮圧用のスタンロッドが握られていた。
『ただ今をもって、当センターは「国家特別危機管理室」の直轄下に置かれました。外部への通信は全て遮断。回線も、個人の端末も、全てです』
「ちょ、直轄下だと!? 馬鹿な、そんな命令聞いていないぞ!」
教授が立ち上がろうとするが、男達にあっさり肩を押さえ込まれ、椅子に縫い付けられる。
『極秘事項です。……佐久間教授、貴方の懸念通り、事態は切迫している。だが、パニックは困るのですよ。愚民が騒げば、我々の「計画」に支障が出る』
男は、教授の手からスマートフォンを取り上げ、無造作に床へ叩きつけて靴底で踏み砕いた‥‥パキリ、という乾いた破壊音が室内に響く。
(計画……? こいつら、知っていたのか? あのブラックホールのことを?)
善輝は背中に冷や汗が伝うのを感じながら、とっさに手元のタブレット端末をデスクの下へ隠した。画面にはまだ、あの絶望的な観測データと、教授が弾き出した「残り10年」の計算式が表示されたままだ。
『連行しろ。彼らの知識は役に立つ。特に教授、貴方は「彼」……文本博士と共に、これからの研究の主軸を担ってもらう』
「文本……お前たちはいったい……何を知っているんだ!?」
教授が両脇を抱えられ、連れ出されていく‥‥善輝も男達に腕を掴まれそうになった、その瞬間だった。
ブウンッ――!!
地下施設全体を揺るがすような重低音と共に、室内の照明が赤色灯に切り替わった‥‥
善輝がデスクの下でサーバーの緊急冷却システムを手動で停止させたのだ。
熱暴走の警告アラートが鳴り響く。
『なっ、何だ!?』
「冷却システムの暴走だ! 爆発するぞ!!」
善輝の嘘の叫びに、男達が一瞬怯み体勢を崩した‥‥
その隙を見逃さず、善輝はタブレットを白衣の懐にねじ込むと、全速力で非常口へと駆け出した。
『逃がすな! データを持っているぞ!』
背後で男の怒号が飛び交う‥‥重い鉄扉を蹴破り、迷路のような地下通路を駆ける。
心臓が早鐘を打つ‥‥これは夢ではない、現実だ。
世界が終わろうとしているその時に、国は国民を救うどころか、何かを隠そうとしている。
(必ず逃げ切ってやる……このタブレットの中身が、奴らの隠したい「真実」なら!)
これが、善輝が「ただの解析員」から「反逆者」へと転落し、そして長い復讐の旅路へと足を踏み入れた瞬間だった‥‥




