慈悲
結衣との再会から、10年の月日が流れた‥‥
かつて森の中にあった小さな砦は、今や黒鉄と強化コンクリート、そして青白く輝く魔導回路によって構成された近未来都市へと変貌していた。
だが、その発展は平和的なものではなかった、隣接する「西の帝国」が、急速に力をつけた善輝の国を脅威と見なし、度重なる侵攻を仕掛けてきていたからだ。
「主、帝国の先遣隊、約3000が国境を突破しました」
「……またか」
管制室で報告を受けた善輝は、うんざりしたように溜息をついた。
「迎撃する。ただし、殺すなよ」
「主、お言葉ですが、あちらは侵略者ですよ? 徹底的に叩き潰すべきです」
「彼らもまた、帝国の上層部に使われているだけの駒だ。労働力としても貴重だし、何より……」
善輝はモニターに映る、粗末な鎧を着た帝国の一般兵たちを見た。
「彼らは理不尽な命令に従わされているだけの弱者だ。無益な殺生は避ける」
善輝の指示通り、この10年間、魔導国は専守防衛を貫いていた。
重力魔法による足止め、催眠ガスによる無力化、圧倒的な技術格差がありながら、死者を出さない「綺麗な戦争」を行っていたのだ。
だが、その甘さが最悪の悲劇を招くことになる‥‥。




